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国政報告 / 質問主意書・答弁書

全国の軍用基地に関する質問主意書

平成二十九年二月二十七日提出 質問第四一号

全国の軍用基地に関する質問主意書

提出者:伊波洋一

参議院議長 伊 達 忠 一 殿

全国の軍用基地に関する質問主意書

一 全国の軍用基地に関して

1 全国にある自衛隊及び在日米軍の基地(以下「軍用基地」という。)の使用について、日米合同委員会合意や、日本政府が関わった航空機についての飛行高度制限、飛行時刻制限及び飛行地域制限等に関する協定及び確認事項が守られているかを調査・検証したことがあるか。調査・検証したことがあれば、その内容を明らかにされたい。

2 軍用基地に係る航空機騒音コンターについて、航空機騒音に係る環境基準には住居専用地域はLden五十七デシベル(七十WECPNL)の線引きと定められているにもかかわらず、Lden六十二デシベル(七十五WECPNL)の線引きのまま数十年間放置している理由を明らかにされたい。

3 日米地位協定によれば、軍用機による騒音被害に対する損害賠償金について、米国のみが責任を有する場合には、損害賠償金の四分の三は米国が分担することになっている。日本政府は、米国政府に対し、軍用機による騒音被害に係る訴訟で確定した損害賠償金の支払いを求めたことが何回あるか。それは、いつ、どのような形で行われたのか。また、米国が分担するべき損害賠償金の累計額はいくらになっているのか。さらに、日本が米国に対して行う、米国が分担するべき損害賠償金の請求に時効は存在するのか。

二 横田基地に関して

米軍横田基地内を目標として行われている米軍の人員降下訓練、物資投下訓練の全てについて、米軍側から日本政府に対し、これらの訓練を行う旨の通告がなされているのか。また、これらの訓練を行うことができる根拠は何か、明らかにされたい。
なお、沖縄ではSACO最終報告に基づき「パラシュート降下訓練を伊江島補助飛行場に移転する」ことを日米合同委員会で合意し、この合意により訓練を実施している。

三 嘉手納アライバルに関して

二〇一〇年に日本側に管制業務が移行されたことになっている嘉手納ラプコンだが、沖縄本島周辺の空域は未だに米軍機優先の空域になっている。これは、那覇空港を利用する民間機が、米軍嘉手納基地が管理する嘉手納アライバルを避けて飛ばざるを得ないからである。現在、那覇空港を離着陸する民間機は、高度三百メートルの低空で約三十キロメートルの距離を飛ぶという、機体に異常が生じた際に安全に着陸できない危険飛行を強いられている。これらの事実を日本政府は承知しているのか。また、日本政府は、このような危険飛行を強いられている状態を解決するためどのような努力をしているのか。

四 小松基地に関して

1 航空自衛隊小松基地は、地元自治体等との間に、他の軍用基地にはない協定(「小松基地周辺の騒音対策に関する基本協定書」、いわゆる十・四協定:一九七五年十月四日締結)を持っている。その第一項に「「航空機騒音に係る環境基準について」に従って公共用飛行場の区分第2種Bについて定められている期間内に速やかに環境基準の達成を期する。」とある。
しかしながら、これまでの数次にわたる小松基地の騒音被害に係る訴訟において、「受忍限度を超えている」との司法判断が示されている。いわゆる十・四協定がありながら、未だ環境基準の達成がなされていないのはなぜか。

2 小松基地は、自衛隊及び在日米軍の再編に伴う軍用機の増強や機種変更、飛行回数の増加等の変化があるにもかかわらず、一九八四年十二月以降、一度も航空機騒音コンターの見直しがなされていない。航空機騒音コンターの見直し計画があるのか明らかにされたい。計画があれば、見直しの時期や方法等について明らかにされたい。

3 小松基地周辺の住宅防音工事の施工によって、航空機騒音に係る環境基準で定められている住居専用地域指定のLden五十七デシベル(七十WECPNL)以下を達成していると日本政府が説明している根拠は何か明らかにされたい。

4 二〇一六年六月の航空自衛隊新田原基地からのアグレッサー部隊移駐により、小松基地所属の自衛隊機は十機増えた。これにより「騒音が従来より二割程度増加する」と、小松基地の防衛省担当者も小松市も認めているが、その騒音対策について日本政府は何ら示していない。航空機騒音による身体的・精神的健康被害も認められつつある今日において、新たな騒音を生じさせている現状について、どのような対策を講じるのか示されたい。

5 航空機騒音が人体に及ぼす医学的影響について、睡眠障害の程度が相当深刻であることや高血圧症発症リスクが増大することなどが被害者団体の調査において明らかとなっている。日本政府が、小松基地周辺の住民に与える騒音被害の実態調査をしているのであれば、その結果を明らかにされたい。また、小松基地周辺の騒音被害の実態調査を行う計画があれば、その具体案を示されたい。

右質問する。

参議院議員伊波洋一君提出全国の軍用基地に関する質問に対する答弁書

平成二十九年三月七日受領 答弁書第四一号

内閣参質一九三第四一号平成二十九年三月七日

内閣総理大臣 安倍晋三

参議院議長 伊 達 忠 一 殿

伊波洋一君提出全国の軍用基地に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議員伊波洋一君提出全国の軍用基地に関する質問に対する答弁書

一の1について

お尋ねの「調査・検証」の意味するところが必ずしも明らかではないが、自衛隊が使用する施設については、関係地方公共団体等との間において当該施設に係る航空機の飛行高度、飛行時間、場周経路等に係る協定等を結んでいる場合、当該協定等に従って施設の使用や航空機の運用を行っている。また、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)第二条1(a)の規定に基づき我が国に駐留する米軍の使用に供している施設及び区域(以下「在日米軍施設・区域」という。)については、日米地位協定第二十五条1の規定に基づいて設置された合同委員会において、航空機の飛行高度、飛行時間、場周経路等について定めた航空機騒音規制措置に関する合意等がなされている場合、当該合意等に従って在日米軍施設・区域の使用や航空機の運用が行われていると認識している。

一の2及び四の3について

四の3で御指摘のような説明をしているとの事実はないが、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第十六条第一項の規定に基づく航空機騒音に係る環境基準について(昭和四十八年環境庁告示第百五十四号。以下「環境庁告示」という。)では、生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持することが望ましい航空機騒音に係る基準(以下「環境基準」という。)について、「第一 環境基準」において、専ら住居の用に供される地域においては、屋外でLden(時間帯補正等価騒音レベルをいう。以下同じ。)五十七デシベル以下とすることが規定されている。また、「第二 達成期間等」の一において、公共用飛行場等の周辺地域については、飛行場の区分ごとに環境基準の達成期間及び中間的な改善目標が定められており、例えば、第一種空港(成田国際空港を除く。以下同じ。)及び福岡空港については、環境基準の達成期間を「十年をこえる期間内に可及的速やかに」とするとともに、中間的な改善目標として「十年以内に、六十二デシベル未満とすること又は六十二デシベル以上の地域において屋内で四十七デシベル以下とすること」等が示されている。さらに、「第二 達成期間等」の三においては、「航空機騒音の防止のための施策を総合的に講じても、一の達成期間で環境基準を達成することが困難と考えられる地域においては、当該地域に引き続き居住を希望する者に対し家屋の防音工事等を行うことにより環境基準が達成された場合と同等の屋内環境が保持されるようにするとともに、極力環境基準の速やかな達成を期するものとする」とされている。
他方、自衛隊等が使用する飛行場の周辺地域については、環境庁告示の「第二 達成期間等」の二において、「平均的な離着陸回数及び機種並びに人家の密集度を勘案し、当該飛行場と類似の条件にある前項の表の飛行場の区分に準じて環境基準が達成され、又は維持されるように努めるものとする」とされている。防衛省としては、このような環境庁告示の趣旨を踏まえ、住宅防音工事の対象区域を定めるに当たっては、屋外でLden五十七デシベルを上回っている区域の中でもLden六十二デシベルを下回っている区域については、住宅防音工事を行わなくても一般的に住宅が有する防音性能により、先に述べた公共用飛行場等のうち第一種空港及び福岡空港の中間的な改善目標である屋内でLden四十七デシベル以下の騒音レベルになると考えられることから、当該区域は防音工事の対象区域とせず、屋外でLden六十二デシベル以上の区域を対象区域とすることとしているところである。
なお、平成十九年環境省告示第百十四号による改正前の環境庁告示では、現行の環境庁告示におけるLden六十二デシベルは七十五WECPNL(加重等価継続感覚騒音レベルをいう。以下同じ。)と、Lden五十七デシベルは七十WECPNLと、Lden四十七デシベルは六十WECPNLと定められていたものである。

一の3について

米軍機による騒音に係る訴訟に関する損害賠償金等の日米地位協定に基づく分担の在り方(以下「本件分担の在り方」という。)については、我が国政府は米国政府に対して損害賠償金等の分担を要請するとの立場で協議を重ねてきたが、本件分担の在り方についての我が国政府の立場と米国政府の立場が異なっていることから、妥結を見ていない。お尋ねの「米国が分担するべき損害賠償金の累計額」等に関する政府の考え方を含め、米国政府との具体的な協議の詳細については、これを公にすると同国政府との信頼関係が損なわれるおそれがあること等から答弁を差し控えたいが、いずれにせよ、政府としては、本件分担の在り方についての立場の相違の問題の解決に向け、今後とも努力していく所存である。

二について

お尋ねの「米軍横田基地内を目標として行われている米軍の人員降下訓練、物資投下訓練の全て」について、我が国政府に事前に通報が行われているかどうかは承知していないが、政府としては、事前に通報が行われているもの全てについて、関係地方公共団体に伝達している。
また、お尋ねの「これらの訓練を行うことができる根拠」については、政府としては、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)が、我が国の安全並びに極東の平和及び安全の維持に寄与するため、米軍の我が国への駐留を認めていることは、別段の定めがある場合を除き、米軍がかかる目的の達成のため、訓練を含め、軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことを当然の前提としているものと考えている。一方、米軍は全く自由に訓練等を行ってよいわけではなく、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであることはいうまでもなく、米軍もこの点には十分留意して、安全面の配慮を払うとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう努めているものと承知しているが、政府としては、我が国における米軍の活動について、必要な場合には、協議を行う等、適切に対応していく。

三について

御指摘の「危険飛行」の意味するところが必ずしも明らかではないが、那覇空港において離着陸する航空機のうち、南側へ離陸するものの一部並びに北側へ離陸するもの及び北側から着陸するものについては、嘉手納飛行場及び普天間飛行場において着陸する航空機との間に安全な間隔を設定するため、高度千フィートで飛行することとなる。
同空港において離着陸する航空機が千フィートの高度で飛行する方式は、航空機の性能を考慮して、技術的に十分安全な飛行方式として定められたものである。

四の1及び4について

小松飛行場周辺においては、自衛隊等の航空機の離陸、着陸等が頻繁に行われていることから環境庁告示に定める達成期間内に環境基準を達成できていない状況であるが、防衛省としては、同飛行場周辺の航空機騒音により生ずる障害の防止等のため、消音装置の設置・使用、飛行方法への配慮等に努めるとともに、住宅防音工事に関する助成措置をはじめとする各種の騒音対策を行うことにより、環境基準が達成された場合と同等の屋内環境が保持されるよう努めているところであり、今後とも、同飛行場周辺の騒音状況を把握しつつ、住宅防音工事に関する助成措置をはじめとする各種の騒音対策の推進に努めてまいりたい。

四の2について

防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)第四条に規定する第一種区域、同法第五条第一項に規定する第二種区域及び同法第六条第一項に規定する第三種区域の指定については、指定から長期間が経過し、その間に配備機種が変更されたこと等により、必ずしも現状の騒音の状況を反映したものではなくなってきていること等を踏まえ、全国的に見直しを行っているところであり、小松飛行場周辺の第一種区域等についても、今後、見直しを行っていく考えであるが、具体的な時期は未定である。

四の5について

航空機騒音が人身に及ぼす影響についての調査は、防衛施設庁(当時)において、昭和四十六年度から平成元年度までの間、小松飛行場を含む複数の飛行場の周辺で実施しており、「航空機騒音が人体に及ぼす影響を因果関係として捉えることは極めて困難といえる」との調査結果を得ている。
また、政府としては、現時点において、このような調査を改めて行うことは考えていないが、今後とも、住宅防音工事に関する助成措置をはじめとする各種の騒音対策の推進に努めてまいりたい。