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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2017年12月5日)

2017.11.1~12.9 第195回特別会

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伊波洋一君

沖縄の風の伊波洋一です。沖縄を二度と戦場にさせないことが私の活動の原点です。そのためにも、日本を戦場にしない安全保障を求めて質問をいたします。

沖縄は、七十二年前の沖縄戦以来、いまだに新たな基地建設を含めて、各地で戦争のために米軍基地が存在し、住民生活を圧迫しております。緊迫する朝鮮半島情勢で、沖縄の米軍は臨戦態勢にあると思われます。

さて、日本の外交防衛には、配付した資料、「外交防衛政策の進むべき道」に示した四つの選択肢があると思いますが、私は、現在、安倍政権が進める日米同盟強化一辺倒の道は日本を戦場にする道だということを言い続けてまいりました。背景には中国の台頭があります。資料で米国が経済力三位になっていますが、二位はEUで、四位はインドです。米国情報機関CIAのザ・ワールド・ファクトブックでのGDP購買力平価の国際比較です。ちなみに、中国二十一兆ドル、EU二十兆ドル、米国十八・五兆ドル、インド八・七兆ドル、日本五兆ドルです。

私は、中国の台頭の中でこそ、戦後日本の外交防衛政策を五十五年にわたり規定してきた、自衛のために必要な限度において防衛力を整備するとしてきた専守防衛の「国防の基本方針」等、自主外交に立ち返ることが必要だと考えます。そして、二大国のはざまにある中規模国家として、憲法理念に立脚し、専守防衛を堅持する必要最小限の抑止力を保有するミドルパワーの安全保障を目指すことが求められていると思います。

そのために必要なのが日中関係の改善です。中国の大国化がどこまで行くのか、誰も分からないと思います。中国の軍事力が日本に敵対する軍事的脅威になるかどうかは日中関係の今後に懸かっていると考えます。

今年は日中国交回復四十五周年でした。節目の年でしたが、日中関係に大きな動きはありませんでした。唯一、九月二十八日の中国大使館主催の中日国交正常化四十五周年祝賀レセプションに安倍首相と河野外務大臣が出席されたことは、来年に向けたメッセージとなりました。来年は日中平和友好条約締結四十周年の節目の年です。

私は、日本の安全保障にとって、日中平和友好条約を再確認して、互いに戦争をしないことを確かめ合うことが何よりも重要であると考えています。そのために、今回と次回の委員会で質疑を行います。

今回の代表質問でも、我が国の敵基地攻撃能力の保有についてのやり取りがありました。今年一月二十六日の衆院予算委員会では、委員として小野寺大臣も敵基地攻撃能力に言及しました。「この弾道ミサイルはアメリカには絶対撃ちませんから、日本だけですからといって、ある国が攻撃をしてきた。アメリカとしては、日米同盟だからこれは守るというスタンスを維持してくれることを私どもは信じていますが、もし仮にそうじゃない大統領の発言があった場合、このとき日本は、自分たちは自分たちで守れないという問題に直面することになります。」と発言しました。その後、自民党弾道ミサイル防衛に関する検討チームの座長として、三月に敵基地攻撃能力を政府は保有すべきだとする提言を取りまとめました。

防衛大臣にお伺いします。小野寺大臣の予算委員当時の質問の背景にあった安全保障環境についての認識はどのようなものだったんでしょうか。

防衛大臣(小野寺五典君)

まず、委員が冒頭お話ありました中国大使館のレセプションに私も出席をしておりました。今委員から御指摘がございましたが、どの国も一国のみでは自国の安全を守ることはできない事態となっている中、日米同盟の強化は重要であります。他方、自らの手で自らを守る気概なき国を誰も守ってくれるはずはありません。安全保障政策の根幹は我が国自らの努力であることを忘れてはならないと思います。

御指摘の私の発言は、我が国自身の防衛力を強化するため、あらゆる事態を想定し議論を尽くすことが重要である旨の趣旨について述べたものであります。なお、トランプ政権との間では、安倍総理とトランプ大統領の間においても、また私とマティス国防長官の間においても、累次の機会を捉え直接の会談や電話会談を行うなど、日米間のあらゆるレベルにおいて意思疎通ができるよう、より強い信頼関係をつくっていきたいと思っております。

また、日中関係についても、日中の連絡メカニズム、海空の連絡メカニズムについては早期の締結が必要だということで、これは首脳間でも、そして私と常万全国防大臣との間でも、先般フィリピンでの会談の中で言及をしたところであります。いずれにしても、この国の平和を守っていくために、防衛省・自衛隊としては外務省とともに懸命に努力をしてまいりたいと思っております。

伊波洋一君

五月十一日の外交防衛委員会でも指摘した中澤剛一等陸佐の「米国のアジア太平洋戦略と我が国防衛」、「陸戦研究」二十六年二月号ですが、は、米国オフショアコントロール戦略を紹介した上で、中国は、「南西諸島に展開する地対艦ミサイル・対空ミサイル及び九州から南西諸島の航空自衛隊基地や民間空港に展開する航空自衛隊や米空軍部隊に対し、弾道ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃を繰り返すであろう。中国の攻撃に対し中国本土のミサイル基地や航空基地を米軍が打撃しないとするのは、従来、日米同盟の役割分担を「盾」と「矛」になぞらえてきたことにも矛盾し、日米同盟の信頼性を揺るがすことになりかねない。」、「例えば、自民党が議論の俎上に上げている独自の反撃能力(敵基地攻撃能力)を保持することも重要な選択肢の一つであろう。」と書いています。

この中澤論文の背景にあった安全保障環境についての認識について、防衛大臣にお伺いいたします。

防衛大臣(小野寺五典君)

陸上自衛隊研究本部においては、平素よりその所掌事務の一環として様々な調査研究を行っております。その上で、御指摘の文章については、あくまで研究員個人の見解を述べたものであって、政府や防衛省の見解を示すものではないことから、その内容の逐一にコメントすることは差し控えさせていただきます。

その上で、オフショアコントロール論とは、事態が紛争に発展した場合、物理的には侵入せず、海上貿易を阻止することによって経済を疲弊させ、行き詰まりの状況をつくることで軍事衝突を終結させ、紛争前の原状を回復させる考えであることは承知をしておりますが、これは米国においてこれまで議論されてきたアジア太平洋戦略に関する数あるオプションの一つにすぎず、必ずしも現在の米国政府の政策方針とは認識をしておりません。

いずれにしても、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、日米同盟は我が国の安全保障政策の基軸であり、防衛協力の強化を通じて、日米間の適切な役割分担に基づいて同盟全体の抑止力及び対処力を強化していく考えであります。

伊波洋一君

九月には岩田清文元陸幕長が、米国スティムソン・センターでのディスカッションで安全保障環境の変化についてこう答えています。

我が同盟国アメリカの戦略の変化の兆しがあるということであります。第三のオフセット戦略、エアシーバトルの中のJOACという考え方の中で、この対A2ADというものにアメリカは、一説には、当初の間は第一列島線から米軍をグアム以東に下げて、その第一列島線の防衛を当初、同盟国に任せ、その後、経済封鎖あるいは長距離作戦によって中国を封じ込めるという戦略を検討しているというふうに聞いております。これが現実のものだとなれば、先ほど武居さんが言ったように、我々としても、同盟国として第一列島線をいかに強く守るかというチャレンジもこの四年間の変化で我々は読み取れますと。

このことは報道されました。これは、アメリカが引いて、日本が第一列島線を守るということであります。つまり、防衛の変化があるということです。

そこで質問ですが、防衛省・自衛隊内部で、米軍の戦略、当初の間は第一列島線から米軍をグアム以東に下げて、そして第一列島線の防衛は当初、同盟国に任せ、その後、経済封鎖あるいは長距離作戦によって中国を封じ込めるという戦略について検討がなされていますか。あるいは、どのような具体的な兆しがあったんでしょうか。

防衛大臣(小野寺五典君)

御指摘の自衛隊OBの発言については承知をしておりますが、あくまで個人の見解を述べたものであって、日本政府や防衛省の見解を示すものではないことから、その内容の逐一についてコメントを差し控えさせていただきますが、なお、日米同盟の下で両国の防衛協力の前提として、我が国の防衛は我が国自身がその一義的責任を持って主体的に対応し、米国がこれを支援するという基本的な役割分担になっています。したがって、例えば島嶼防衛について、自衛隊が独力で対応するといった考えになっているわけではありません。

いずれにしても、日米間の調整の細部についてのお答えは差し控えますが、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化し、国民の生命と平和な暮らしをしっかり守っていくためにも、引き続き米国との間でしっかりと政策のすり合わせを行い、緊密に連携していきたいと思っております。

伊波洋一君

皆さんに提出してある資料に「統合エア・シー・バトル構想の背景と目的」という論文がございます。

この二ページを読みますと、かつて、一九九七年に米連邦議会の国防委員会が出した提言がありまして、前方展開基地に対する脅威は今後ほぼ確実に増大し、二〇一〇年から二〇二〇年の間、まさに今ですけど、現実のものになるであろう。まあ、なっているわけですね、現実に。そして、次のページの下の方にありますけれども、赤線で引いた部分。新たに出現した中国のアクセス阻止の環境下においては、在日及び在韓米軍の基地を利用することは危険であると、こういうふうに書かれ、そして、その次の最後のページですけれども、下の方を読みますと、中国のミサイル攻撃圏外に位置する新たな展開基地の確保が不可欠である。こういう認識が今日のアメリカの基本的な視点ではないかというふうに考えております。

そういう中からこそ、アメリカが日本のためにミサイルを攻撃しないのならば、自ら敵基地攻撃能力を持つということが自衛隊の中で生まれ、そして今、自民党の中であるのであろうと、こういうふうに理解をしております。

先ほどの岩田元陸幕長の発言、オフショアコントロールそのものでありますけれども、私たちはそういう中でいろんな課題が多くあるということをやはり問わなきゃいけないだろうと、このように思います。

エアシーバトル構想とかあるいはオフショアコントロールの戦略については、防衛省も私たちにいろいろな資料を提供しています。それから、自衛隊の様々な論文の中にも書かれています。そういうことの中で、在日米軍がグアム以東に移り、そして日本が自分たちで守らなきゃならない、そういう戦略環境の中に入ってくる。そういうことを考えるときに、そういう意味で、自ら敵基地攻撃能力を持つこと自体の意味というものが本当にいかに危険であるかということを私は感じるわけです。

そういう意味では、やはり今の米軍戦略というのは、まず一番のポイントは、アメリカが中国はもう攻撃しないんだという前提で動いている。そういう中で私たち日本が取るべき安全保障政策というものをやはり問わなきゃいけないだろうと、こういうふうに思います。そういう意味で、やはり日本の国土を戦場にすることが前提になったアメリカの戦争戦略というものが、本当にこれが日本を覆っているという意味で問題の指摘を強くしておきたいと、このように思います。

オフショアコントロールというものや、あるいはエアシーバトルについて、私は五月二十五日の外交防衛委員会で、それに対する稲田防衛大臣の答えとして、防衛計画の大綱及び中期防に基づく南西諸島の防衛態勢強化を含む各種の施策は、結果として、エアシーバトル構想、オフショアコントロールで想定されるミサイル攻撃に対応することが可能であるという趣旨の答弁をされました。小野寺防衛大臣も同じような認識なのでしょうか。

防衛大臣(小野寺五典君)

御指摘のエアシーバトル構想は特定の地域や敵対者を想定した計画や戦略ではなく、またオフショアコントロール論についても、米国においてこれまで議論されてきたアジア太平洋戦略に関する数あるオプションのうちの一つにすぎず、現在の米国政府の計画や戦略そのものではないと認識をしております。

我が国としては、島嶼部に対する巡航ミサイル攻撃に対しては、陸自、空自の防空ミサイル、短SAMや中SAM、ペトリオットシステムなどにより迎撃することとしており、これらのアセットを平素から配備しておくことが重要であります。そのため、例えば宮古島、石垣島及び奄美大島に中SAMを運用する陸自部隊を配備する計画であり、現在、必要な調整を進めているところです。また、弾道ミサイル攻撃に対しては、海自のイージス艦を機動的に展開させるとともに、空自のPAC3部隊を南西地域に展開することにより迎撃することとしております。

これらの取組は、我が国の防衛の根幹が我が国自身の努力であり、沖縄を始め我が国の平和と安全を守り抜くために必要な措置との考えの下、実施しているものであり、御指摘の米国の計画や戦略と直接関係があるものではありません。

その上で、南西地域の防衛態勢の強化については、我が国自身の努力に加え、日米防衛協力の強化を通じて日米同盟全体の抑止力及び対処力を強化していくことが重要であり、これらの取組を通じて、国民の生命、財産と領土、領海、領空を守り抜くため、万全を期す考えであります。稲田前防衛大臣もこのような趣旨で答弁されたものと認識をしております。

伊波洋一君

今防衛大臣が申し上げた様々な、日本が今南西諸島にシフトしていることはアメリカの防衛戦略と全く合致しているんですね。このような米軍戦略は、米国の太平洋における覇権を維持するという米国の国益には合致しても、自衛隊員の命を含めた日本国民の命あるいは財産を犠牲にするものであり、日本の国益に合致するわけがありません。日本政府がやはり取るべき道ではないと私はずっと指摘をしてまいりました。

沖縄、日本を戦場とし、米国の覇権の維持あるいは米国の国益のために日本の国民の生命、財産を犠牲にするエアシーバトル構想やオフショアコントロール戦略を日本が対応すべきでないと考えていますが、いかがでしょうか。

防衛大臣(小野寺五典君)

繰り返しますが、御指摘のエアシーバトル構想は特定の地域や敵対者を想定した計画や戦略ではなく、またオフショアコントロール論については、米国においてこれまで議論されてきたアジア太平洋戦略に関する数あるオプションの一つにすぎず、現在の米国政府の計画や戦略そのものではないと認識しています。そうした構想を前提とした御質問にお答えすることは差し控えます。

一方で、我が国の防衛については、安全保障政策の根幹となるのは自らの努力であるとの認識に基づき、我が国自身の防衛力を質、量の両面で強化し、自らが果たし得る役割の拡大を図る。日米同盟は我が国の安全保障政策の基軸であり、防衛協力の強化を通じて、日米間の適切な役割分担に基づいて同盟全体の抑止力及び対処力を強化していく。アジア太平洋地域や国際社会との安全保障協力を積極的に推進し、地域及びグローバルな安全保障環境の改善を図り、また、世界の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していく。これらの取組を通じ、国民の生命、財産と領土、領海、領空を守り抜くため、万全を期す考えであります。したがって、日本を戦場として米国のために日本国民の生命、財産を犠牲にするなどといった御指摘は当たらないと思います。

伊波洋一君

この資料の一番後ろにあります米中パワーバランスの東進イメージというのがありますが、冷戦前は米中の軍事均衡点というのは朝鮮半島、韓国であると。これが今日どこに行っているかというと、グアムに行っている。

つまり、その前のページをちょっと見ていただければ分かるんですけれども、中国はミサイルが相当発展しておりまして、DF21Dなどという地対艦ミサイル、弾道ミサイルはもうグアムまでの米空母などの部隊を攻撃できるようになっちゃったんですね。それでここまで入れなくなってしまっているんです。その間に日本が全部すぽっと入っているわけです。ある意味で日本は常にもう攻撃の対象としては位置付けられている。

そういう中で、私たちが今一生懸命米国と一緒に安全保障政策というのは、これはアメリカの資料の中にもちゃんとあるんですね、日本の協力なしにこのオフショアコントロールあるいはエアシーバトルという戦略はできないと。そして、日本の基地はまず最初に攻撃されることが前提になっております、あらゆるミサイルで。その次がいよいよ勝つための戦争。

私は、やはりこのことを含めて、日本が進むべき道がどこにあるのかということをいま一度考える必要があるのではないかということを是非議論、指摘をしていきたいと思いますし、今日時間ありませんから終わりますが、次回も含めて、やはりそのときに必要なのは隣の国とどういう関係をつくるか、今大国になろうとしている中国とどういう関係をつくるかということこそが大事であって、米国とともに日米同盟を深化させて世界の守り手になることが私たちの役目ではないということを指摘して、質問を終わりたいと思います。