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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2018年6月19日)

2018.1.22~7.22 第196回常会

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伊波洋一君

沖縄の風の伊波洋一です。昨日の大阪北部地震で被災された皆様にお見舞いを申し上げます。学校ブロック塀の倒壊で亡くなった女児小学生を含め、亡くなられた方々の御冥福をお祈りいたします。

前回に引き続き、辺野古新基地建設事業における海草藻場の移植についてお聞きします。六月十二日の委員会では、私が辺野古沿岸最大の海草藻場である辺野古地先の海草藻場について移植の必要性を繰り返し指摘したのに対し、防衛省は、保全図書には、施設等の存在に伴う海草藻場の消失に対してはあくまでも施設等の存在を念頭に置いて保全措置を講じることが記述されているので、現状は工事の実施の段階であり、施設等の存在段階ではないから、土砂投入前に移植する必要はないとしました。

一方、保全図書の工事の実施の段階の記載で、工事の実施において周辺海域の海草藻場の生育分布状況が明らかに低下した場合には、必要に応じて、専門家等の指導、助言を得て、海草類の移植や生育基盤の環境改善による生育範囲拡大に関する方法等を検討し、可能な限り実施します、となっているとの私の指摘に対しては、周辺海域というのは代替施設の周辺海域のことを指すものと整理しており、埋立区域は代替施設が建設される区域であるから、周辺海域には該当しない、したがって、ジュゴンやウミガメの餌場である重要な辺野古地先の埋立予定区域内の海草藻場は、埋立てにより失われてから、飛行場が完成し米軍が供用を始めるまで、五年以上にわたり回復されないが、保全図書の記載によれば問題ないとして、埋立工事前、土砂投入前の海草藻場の移植を実施する必要はないとする防衛省の答弁は、沖縄県にも周知されておらず、環境監視等委員会にも明示的には説明されていません。

同日六月十二日に、防衛局は、八月十七日から土砂投入をすると沖縄県に通知をしました。辺野古最大の海草藻場に対し、何の保全策も講じないで、沖縄県民の大切なちゅら海を埋め殺すという通知をしたことに満身の怒りを込めて抗議します。このような日本政府の暴挙は、県民の怒りだけでなく、世界中から大きな批判を受けるでしょう。そのままの土砂投入は、決してあってはなりません。

質問をします。周辺海域とは代替施設周辺海域であるとの防衛省の定義は、保全図書のうち、どの部分にどのように記載されていますか。

政府参考人(防衛省 西田安範君)

お答えを申し上げます。環境保全図書、いわゆる環境保全図書におきましては、埋立工事により埋立区域内の海草類が消失することを前提として、埋立区域外の周辺海域の海草藻場の保全措置について記載がなされております。

その中で、工事実施中の周辺海域の海草藻場の保全に関しましては、委員が御指摘になりましたように、「工事の実施において周辺海域の海草藻場の生育分布状況が明らかに低下してきた場合には、必要に応じて、専門家等の指導・助言を得て、海草類の移植(種苗など)や生育基盤の環境改善による生育範囲拡大に関する方法等を検討し、可能な限り実施」と記載をされているところでございます。これは、工事の実施の影響によりまして、当初想定をされなかった周辺海域の海草藻場の生育分布状況が明らかに低下してきた場合に海草藻場の生育範囲拡大に関する方法等を検討するという旨を記載したものでございます。

したがって、御指摘の周辺海域については代替施設の周辺海域のことを指すものと整理しており、埋立区域については代替施設が建設される区域であることから、この場合の周辺海域には該当しないものと考えております。

また、環境保全図書においては、海藻草類に関する工事中及びそれに引き続き施設等の存在、供用後に実施する事後調査として、代替施設周辺海域に残存する海藻草類の生育状況等について調査をすることとされており、こうしたことからも、御指摘の周辺海域については代替施設の周辺海域のことを指すものと整理をしてございます。

伊波洋一君

全く納得できません。結局、周辺海域の定義については特に手掛かりになるような記載は保全図書にはないというのが事実です。周辺海域は代替施設周辺海域とは書き分けられていることも分かるように、両者は別の概念ではないですか。

防衛省によれば、保全図書には数百か所の周辺海域という言葉が使用されているようです。例えば、水の濁りについての保全図書六の七の二百三十七では、事業実施区域周辺海域や施工区域周辺海域という用語が使われています。同様に、六の九の五十六や六の九の六十二でも周辺海域という用語が出てきますが、施工区域周辺海域、事業実施区域周辺海域、代替施設周辺海域など、文脈によって、何の周辺なのか限定する言葉が付いています。何々周辺海域と限定する言葉が付いていない単なる周辺海域という工事の実施中の海草藻場の移植における用法は、むしろ何の周辺海域かを明示してある他の用法とは異なる一般的な周辺海域の意味だと読み取るべきです。

ここで、周辺海域の定義は文脈に依存すること、限定するときは何々周辺海域と明示されており、ただの周辺海域は一般的な意味と理解するべきことを指摘したいと思います。

これまでにも沖縄県では海草藻場の移植が行われたことがありました。国交省にお聞きします。中城湾港泡瀬地区公有水面埋立事業における海草藻場の移植はどのような経緯で行われ、どのような結果でしたか。

政府参考人(国交省 浅輪宇充君)

お答えいたします。中城湾港泡瀬地区の公有水面埋立事業の実施に際しては、環境影響評価書において、埋立てにより消失する藻場のうち、主要なものをできる限り移植し、藻場生態系の保全に努めることとしております。そこで、同評価書に従い、平成十四年十二月から平成十五年一月までに環境保全措置として手植え法で藻場の移植を実施した上で、平成十八年十月より埋立事業の土砂投入を開始しています。

移植後、内閣府沖縄総合事務局が行った七年間のモニタリング調査では、移植藻場は中城湾の自然藻場と比較して、同程度の生物の種類数、個体数が確認されており、藻場の被度の推移も同様の変動を示しており、自然藻場と同程度の機能を有していると評価されております。

伊波洋一君

皆様のお手元に、中城湾港の手植え移植の藻場の評価が入っております。その一ページと最終ページにただいまのような評価がございます。泡瀬干潟の埋立てについては、少なくとも、埋立工事前、土砂投入の前に埋立予定地の海草藻場を移植する、移し植え替える保全措置が取り組まれました。ジュゴンやウミガメの餌場であり、そして多くの稚魚の育つ辺野古地先の海草藻場ならなおさら移植が必要です。

ところが、補正前の海草藻場についての防衛省の環境影響評価書には、移植という保全措置は書かれていませんでした。有識者研究会の提案で、現在、追加されたんです。防衛省が設置をした普天間飛行場代替建設事業に係る環境影響評価に関する有識者研究会の最終報告・評価書の補正に係る提言は、海草類について以下のように述べております。皆さんのお手元にも資料として提出をしてございます。

そして、「特に海草藻場は、ジュゴンやウミガメ類の餌場にもなるなど、重要な役割を持つ中で、被度五〇%以上の高被度域を含む海草藻場の消失を伴うことから、評価を丁寧に行う必要がある。」「評価書においては、海草藻場の消失に伴う環境保全措置として、移植や新たな海草藻場造成などの積極的な保全策等が提案されていない。」「基本的には、その消失面積に相当する海草藻場を移植等によって代償されることが望ましく、具体的には、移植等による現状の生育区域周辺への海草藻場の拡大等のほか、海草藻場の新たな造成及び移植についても検討することが望ましい。」。

もう一度読みます。「その消失面積に相当する海草藻場を移植等によって代償されることが望ましく、具体的には、移植等による現状の生育区域周辺への海草藻場の拡大等のほか、海草藻場の新たな造成及び移植についても検討することが望ましい。」としています。

この有識者研究会の提言を受けて、補正後の評価書の工事の実施、施設等の存在の記載に保全措置としての海草藻場の移植が新たに加えられたと理解していますが、間違いありませんか。

政府参考人(防衛省 西田安範君)

お答えを申し上げます。まず、保全図書におけます海草藻場の記述につきましては、有識者研究会での議論を踏まえた上で記載をされたものでございます。御指摘の有識者研究会における議論を踏まえまして、先ほども申し上げました代替施設の存在に伴い消失する海草藻場に関する措置としての検討、それから、工事の実施において周辺海域の海草藻場の生育分布状況が明らかに低下してきた場合の対応等につきまして、環境保全図書に記載をされたところでございます。

なお、有識者研究会の最終報告におきましては、委員御指摘のように、基本的には消失面積に相当する海草藻場を移植等によって代償することが望ましい等の記述はございますが、これは、海草藻場の消失に対する措置についての、代償措置についての提言でございまして、必ずしも埋立てにより消失する海草類を別の場所へ移植するということを求めるという提言ではないと認識をしてございます。

いずれにしましても、海草藻場に関する措置につきましては、環境監視委員会等に諮りまして最も適切な対応措置を検討しているところでありまして、この点につきまして、鋭意検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

伊波洋一君

今の答弁ありますのは、皆さんの資料にありますこの評価書、有識者の評価書に基づく、色が青いものが全部書き加えられています。つまり、私たち、私が議論してきているこの移植問題というのは、まさに泡瀬における実際の移植ということを踏まえて、そのことを含めてこれをやるべきだと、こういうふうに提案をされて、そして書いたものです。

同じく、有識者研究会の最終報告には、「中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業においては、これまで、海草の移植を中心として、移植に係る実験や技術的な検討が行われ、一定の成果を上げている。」、「移植等の検討に当たっては、これらを参考とする」とはっきり書かれています。中城湾港泡瀬地区公有水面埋立事業では、埋立工事前、土砂投入前に埋立区域内の海草類の移植が実施されています。

有識者研究会が評価書に書き加えた移植とは、埋立工事前、土砂投入前に埋立予定海域の海草藻場を移植することを意味するのではありませんか。

政府参考人(防衛省 西田安範君)

お答えを申し上げます。先ほどもお答えを申し上げましたように、必ずしもそういったことを意味するものではないと考えてございます。海藻草類の移植方法につきましては、御指摘の事例も含めた他事業におきまして栄養株等の移植で成果を上げた事例もございますが、いずれも比較的静穏な海域での事例であるものと承知をしております。

他方、この普天間代替施設の建設事業の周辺海域では、波浪の影響によって海草藻場に変動を与える可能性が考えられるということから、高波浪にも対応できる手法の検討が必要であると考えているところでございまして、この点につきましては、環境監視等委員会でも御説明を申し上げているところでございます。そのため、これまでに第十回あるいは第十四回の委員会におきまして、藻場の拡大造成場所の検討状況あるいは拡大造成方法の検討状況等につきまして説明をし、御議論をいただいて、また意見もいただいてきている、指導、助言もいただいているところでございます。

こうした指導、助言も踏まえまして鋭意検討を行っているところでありますので、環境保全図書の記載にのっとってしっかりと検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

伊波洋一君

今の答弁はおかしいですよ。まず、先ほどのこの提言の中には、移植というのが一つある、消失面積に相当する移植。それで、それと併せて、もう影響を与えるものへの拡大、そしてまた、新たな造成。

で、現実の場合に、先日の委員会でも示しましたように、施設ができてからできる静穏域があります。それも一つの移植場所です。造る、造成する。でも、それ以前に大きな違う場所がちゃんと二つ準備されていると。そもそも、できる状況にあるからこそこういうことが書かれているんです。そういったことを無理やりに変えていく、そのやり方は、やはり私は防衛省として取るべきではないと思います。

有識者研究会が提言をした海草藻場の移植を行う際の工事の実施中の周辺海域は、代替施設周辺の海域ではなく、言葉の一般的な用法としての工事周辺海域として理解していたと考えられますが、いかがですか。

政府参考人(防衛省 西田安範君)

お答えを申し上げます。冒頭に申し上げましたように、周辺海域につきましては、冒頭に御答弁申し上げましたように、代替施設の周辺海域ということを指すと整理しておりまして、埋立区域につきましてはこれに該当しないというふうに考えております。

伊波洋一君

最終報告には、先ほども申し上げましたけれども、埋立てにより消失する海草藻場の代償措置として云々とあって、海草類の移植や生育基盤の環境改善をできる限り実施することとし、今後、専門家の指導、助言を得つつ実施に向けた検討を行う、と。そして、移植手法の検討に当たっては、中城湾港や水産庁で実施された実績を参考とし、移植先における海草類の生育状況等のモニタリングを実施し、その結果を反映させる、と書かれています。

今からでも、護岸接続、土砂投入の前に辺野古地先の埋立予定地の海草藻場の移植について環境監視等委員会で実施に向けた検討を行うべきと考えますが、いかがですか。

防衛大臣(小野寺五典君)

環境影響評価書においては、代替施設等の存在による海面及び海浜の消失に伴う海域生態系への影響については、代替施設本体の埋立域に集中して生息している生物種や群集は見られず、多くの生物種や群集は、辺野古地先から松田地先に広がる海草藻場の広い範囲に分布しております。このことから、代替施設本体の存在において海草藻場の一部が消失しても、周辺海域における海域生物の群集や共存の状況に大きな変化は生じないと予測されております。

有識者研究会の最終報告の提言を受け、補正後の環境保全図書においては、代替施設の存在に伴い消失する海草藻場に関する措置として、改変区域周辺の海草藻場の被度が低い状態の箇所や代替施設の設置により形成される静穏域を主に対象とし、専門家等の指導、助言を得て、海草類の移植や生育基盤の改善による生育範囲拡大に関する方法等やその事後調査を行うことについて検討し、可能な限り実施することが記載をされております。

また、「工事の実施において周辺海域の海草藻場の生育分布状況が明らかに低下してきた場合には、必要に応じて、専門家等の指導・助言を得て、海草類の移植(種苗など)や生育基盤の環境改善による生育範囲拡大に関する方法等を検討し、可能な限り実施します。」と記載されているところであります。防衛省としては、補正後の環境保全図書については、有識者研究会の最終報告の内容を十分に踏まえて補正したものであり、両者は同じ考えになっております。

いずれにしましても、防衛省としては、今後とも、環境監視等委員会の指導、助言を得つつ、海草藻場の生育範囲拡大について検討を進めていく考えであります。

伊波洋一君

補正書だけではないんです。皆さんが承認を受けたときに、留意事項が付いています。その留意事項で何と書いてあるんですか。承認を受けた際には、工事中の環境保全等について詳細検討して県と協議を行うこと、そして環境監視等委員会から助言を受けること、これが付けられております。しかし、皆さんは県との協議を拒否しています。それと同時に、この件に関しては環境監視等委員会にも諮らないと、こういうふうな立場です。

おかしいじゃないですか。そもそも、環境保全については何もしないで埋め殺すんだと、こういう立場でこのようなことをしたら、あの高江のような事態になりますよ。高江も、結局JEGSも無視し、米軍基地の中で、そういう多くの希少種がいる中でそういうことをやりました。

皆さんは、当該工事の実施に先立ち講じる措置ではないと言っていますけれども、県は、埋立てによって海草藻場が消失するのであるから、工事の実施前に行わなければ、移植する海藻類がなくなり、移植することができなくなると、こういうふうにきちんと皆さんに返しました。しかし、それに対して、今防衛大臣が答弁したように、「知事より承認を受けた願書に添付されている環境保全図書の記載内容の変更を求めていることに等しい」という。それはおかしいんです。

委員長(三宅伸吾君)

伊波君、時間が参りましたので、おまとめください。

伊波洋一君

はい。是非、皆さんがそれだけ環境監視等委員会まで無視をするのならば、決してこれはこの本来の承認を受けた埋立てではない、こういうふうに断言をして、終わりたいと思います。