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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2018年6月28日)

2018.1.22~7.22 第196回常会

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伊波洋一君

沖縄の風の伊波洋一です。モントリオール議定書については、地球温暖化対策であり、賛成いたします。

辺野古新基地建設工事について伺います。六月十二日の歴史的な米朝首脳会談という朝鮮半島緊張緩和へのニュースの中、沖縄防衛局は沖縄県に、辺野古新基地建設に向け八月十七日から土砂を投入すると通知しました。海草藻場の移植を実施しないまま辺野古地先の海草藻場を土砂で埋め殺しにすることは、公有水面埋立承認願書に添付された環境保全図書に反し、許されません。

そこで、環境省に伺います。一般論として、環境アセスメントの考え方は、最大限ベストを尽くして環境への影響をできる限り少なくしていくというものだと理解しているのですが、環境省の見解はいかがでしょうか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

環境アセスメント制度は、事業者自らが事業が及ぼすおそれのある環境影響を調査、予測、評価し、事業者にとって実行可能な範囲で環境への影響をできる限り回避し低減することを目的とした制度でございます。

伊波洋一君

できる限り環境への影響を少なくするということだったと思いますが、環境庁告示第八十七号には、「計画段階配慮事項の範囲は、別表に掲げる環境要素の区分及び影響要因の区分に従うものとする。」と規定されており、配付資料のように、別表では、工事と存在・供用が影響要因の区分とされています。

この工事と存在・供用というのはあくまでも影響要因の区分であって、工事、存在・供用の時系列に沿ってそれぞれのタイミングで環境保全対策を取りなさいという趣旨の区分ではないと理解しているのですが、どうですか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

環境影響評価法に基づく環境影響評価においては、対象事業を実施する事業者が事業に係る工事の実施及び当該工事が完了した後の土地又は工作物の存在・供用という影響要因の区分に従い、環境影響の調査、予測及び評価を行うことを求めております。

こうした環境影響の調査、予測及び評価を踏まえて、事業者は、環境の保全のための措置を検討し、当該措置が講じられた場合における環境影響を総合的に評価することとされております。環境保全措置の実施時期につきましては、環境影響の回避、低減を図る観点から、影響を及ぼすおそれのある環境要素や環境保全措置の効果を踏まえ、環境要因の区分を問わず事業者が適切に判断することとされているところでございます。

伊波洋一君

ありがとうございます。環境影響評価書において、特定の環境要素の保全対策が工事の実施、存在・供用という項目で整理されている場合でも、ただいまの答弁のように、環境保全に万全を期すという観点から、存在・供用に書いてある保全対策を工事の実施中に実施することもあり得るのではないかと考えますが、いかがですか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

先ほどお答え申し上げたとおり、環境保全措置の実施時期については、環境影響の回避、低減を図る観点から、影響を及ぼすおそれのある環境要素や環境保全措置の効果を踏まえ、影響要因の区分を問わず、事業者が適切に判断し、環境影響評価書に記載するとともに、当該評価書に基づき適切に環境保全措置を講ずることとされているところでございます。

伊波洋一君

環境省の答弁のように、あくまでも影響要因の区分は保全対策の実施時期のタイミングを規定したものではないということです。そこで、防衛省にお聞きします。辺野古地先の埋立予定地内の海草藻場を土砂投入に先立って移植すべきではないかと考えますが、いかがですか。

防衛大臣(小野寺五典君)

環境保全図書における海草藻場の拡大を図る保全措置については、施設等の存在に伴い消失する海草藻場に関する措置として、改変区域周辺の海草藻場の被度が低い状態の箇所や代替措置の設置により形成される静穏域を主に対象とし、専門家等の指導、助言を得て、海草類の移植や生息基盤の改善による生育範囲拡大に関する方法等やその事後調査を行うことについて検討し、可能な限り実施をしますとされております。

このように、環境保全図書においては、施設等の存在の段階を念頭に置いて保全措置を講ずることとされており、現在具体的な対策を検討しているところであり、引き続き海草藻場の生育範囲拡大の実現に向けて更なる検討を進めてまいりたいと考えております。

伊波洋一君

大臣、前回委員会でも同じような答弁をしております。でも、言っていることが具体的には分からないんですね。皆さんは、八月十七日に土砂を投入することを県に通知をいたしました。ただいまの答弁は、この土砂投入は移植なしに行うということの答弁としていいんですか、そうじゃないんですか。

政府参考人(防衛省 西田安範君)

お答えを申し上げます。大臣申し上げましたように、環境保全図書においては、施設等の存在の段階を念頭に置いて保全措置を講じることとされておりまして、現在具体的な対策を検討しているところでございます。これまで海草類の生育地につきまして現地踏査を行い、候補地の選定あるいは生育範囲拡大の方法について検討を行い、環境監視委員会の指導、助言等も得ながら議論、検討を進めているところでございます。この検討をしっかりと進めていくということでございます。

伊波洋一君

大臣、聞きたいのは、皆さんが八月十七日から土砂投入を行うという前に、そこの埋められるエリアを、今、藻場なんですね、そこを移植するのかどうか、そのことをお聞きしています。土砂を投入する前に移植をするのかどうか、そのことだけお答えください。

防衛大臣(小野寺五典君)

ただいま局長が答弁したとおりであります。

伊波洋一君

今の答弁では答えになっていません。あの答えは結局何を言っているか分からないんですよ、検討しますと。でも、刻々と時間は来ます、もう準備もしています、発注もしています。しかし、実際のことは言っていないんですね。ちゃんと言ってくださいよ。

政府参考人(防衛省 西田安範君)

環境保全図書等の記述におきまして、必ずしも委員がおっしゃいますような現在存在している埋立予定地にあります海草を移植するということが、求める保全図書にはなっていないということでございます。

環境保全図書については、施設等の存在の段階を念頭に置いて保全措置を講じるということでございますので、これに向けしっかりと検討を進めているというところでございます。

伊波洋一君

先ほど環境省の答弁もありました。環境保全図書の在り方というのは皆さんのが理解はできないんですね。

ですから、ここで聞きたいのは、八月十七日から土砂を投入するということを通知しているけれども、その前にそこは移植するんですかどうかということを聞いているわけです。ですから、するならする、しないならしない、そのまま土砂を投入する、大臣、責任を持って答えてください。

政府参考人(防衛省 西田安範君)

お答え申し上げます。環境保全図書におきましては、施設等の存在によりまして海草の藻場の一部が消失するというふうに記載をされてございます。また、代替施設本体の存在によって海草藻場の一部が消失をしても、周辺海域における海域生物の群集や共存の状況に大きな変化は生じないと予測されますといった記載もなされているということでございます。

また、そうしたことも踏まえまして、環境保全図書における海草藻場の拡大を図る保全措置につきましては、先ほど申し上げたように、施設等の存在に伴い消失する海草藻場に関する措置としてといった格好で、施設等の存在の段階を念頭に置いて保全措置を講ずることとされているということでございますので、こうしたことに沿って検討を進めているということでございます。

伊波洋一君

もう一度聞きますが、有識者研究会は平成二十四年十二月十一日の最終報告で、補正後の評価書の「工事の実施」と「施設等の存在及び供用」の項目に海草藻場の移植を書き加えています。特に、「施設等の存在及び供用」の項目には、中城湾港では、機械化移植による試験施工の移植後の海草類の保全対策として潜堤築造による波浪防止の砂地盤の安定による保全試験が実施され、台風の襲来を受けても藻場が保全されています、「このように成果を上げている他事業の取り組みを参考として、」と、埋立工事、土砂投入より前に海草藻場の移植を実施した中城湾港を参考に海草藻場の移植を提起しています。

もし防衛省が主張するように海草藻場の移植なしに埋め立てることができるというアセスの規定ならば、なぜ有識者研究会は土砂投入、埋立て前に海草藻場の移植を実施した中城湾港の例を参考にするように書き加えたのですか。

政府参考人(防衛省 西田安範君)

お答えを申し上げます。有識者研究会の最終報告におきましては、中城湾港の例につきまして、海草藻場の生育範囲の拡大に関する一つの参考例として記述をされているところでございます。

いずれにしましても、有識者研究会の最終報告、この中でいわゆる保全図書の補正につきましても御意見をいただいているところでございますが、この最終報告におきましては、代替施設の存在に伴い消失する海草藻場に関する措置として、改変区域周辺の海草藻場の被度が低い状態の箇所や代替施設の設置により形成される静穏域を主に対象とし、専門家等の指導、助言を得て、海草類の移植や生育基盤の改善による生育範囲拡大に関する方法等やその事後調査を行うことについて検討といったことが書かれているということでございます。

また、こうした環境保全措置の検討に当たりましては、様々な保全・再生技術の中から事業実施区域周辺において適切と考えられる技術の選定を行い、生育範囲の拡大のための方法を選定をするというふうにされておりまして、様々な技術の中からその地域において適切と考えられる技術の選定を行って対応していくといった方針が書かれているところでございます。

防衛省におきましては、現在、こうしたことを踏まえまして、環境監視等委員会の指導、助言を得ながら、生育基盤の改善による生育範囲拡大に関する方法等の検討を進めているということでございます。

伊波洋一君

有識者研究会が、評価書には海草藻場などの積極的な保全策が提案されていないと指摘し、消失面積に相当する海草藻場を移植等によって代償されることが望ましいと最終報告書に書いて、海草藻場の移植を提言したんです。そして、その上で今の評価書は補正をされている。工事の実施における周辺海域に埋立予定地を含むとの周辺海域の一般的な解釈を当然採用して、工事の実施における埋立予定区域内の海草藻場の提言をしたものなんですね。

それから、工事の実施と施設の存在はあくまで影響要因の区分であって、それぞれのタイミングで環境保全対策を取りなさいという趣旨の区分ではないということは環境省の説明のとおりです。ですから、今ずっと説明している、この間、施設の存在に書いていることを理由に藻場の移植はしなくても済むというようなことは、環境庁告示八十七号の別表の本来の目的から逸脱しています。

このように、防衛省がこの間やっていることはまさに環境評価書そのものを否定することだと、こういうふうに言わざるを得ないんです。だましてきたと、こういうふうに断言せざるを得ない。

環境監視等委員会では、配付資料ございます、配付資料の議事要旨や議事録のように、平成二十六年六月二十日の第二回委員会で、委員から、ジュゴンについて「三個体しかいないという現状を考えると、事業実施区域になるべく近づかないための対策として、嘉陽地先に藻場を造成することを始めたら良いのではないか。」との提案があり、これを受けて、平成二十七年一月六日の第三回で、沖縄防衛局が提出された「前回委員会における指摘事項とその対応方針」という資料の中で、「藻場の造成について」の項目では、「評価書では消失する海草藻場に関する措置として、海草類の移植や生育基盤の改善により海草類の生育範囲の拡大を図る対策を講じることとしており、嘉陽地先も造成候補地に含めて検討する。」と書かれています。つまり、委員からジュゴンを工事区域に近づかせないために工事中の海草藻場の移植が提案され、沖縄防衛局からも検討するという回答がなされています。

このようにこの間ずっと提言されているんです。ここで皆さんに回答を求めたら同じような答えしか出ませんから、一応、後で質問をしますけれども、少なくとも、これはやはり皆さんが言っている環境保全図書のとおりの実施ではない。

沖縄県の環境基本計画では、藻場の保全を求めています。防衛省も工事の実施において県の基本計画を挙げ、「工事の実施により海藻草類に及ぼす影響は、最小限にとどめるよう十分に配慮されている」、「環境保全の基準又は目標との整合は図られている」としています。しかし、実際は、防衛省が環境保全図書にある海草藻場の移植を全く実施しないことから、県は防衛省に対し、これまで再三にわたって埋立工事実施前の海草藻場の移植を実施するよう求めてきました。

平成二十九年二月二十二日付けで沖縄県は、沖縄防衛局宛ての環境保全対策についての事前協議書を提出しています。前委員会で皆さんに資料お配りいたしました。同文書では、貴局、防衛局は、「藻場の造成は、「当該工事の実施に先立ち講じる措置ではない」とするが、埋立によって海草藻場が消失するのであるから、工事の実施前に行わなければ、移植する海藻類がなくなり、移植することが出来ないことになる。また、環境保全図書では、海藻類の移植や生育基盤の環境改善による生育範囲の拡大は、「工事の実施」に係る評価・結果にも記載されている。」「それにもかかわらず、どのような海草藻場に関する環境保全措置をとるのか具体的に示していない。」と、このように質問したんですね。

これに対し防衛局は、平成二十九年二月二十七日、三月三十一日、四月十四日付けで回答しています。四月十四日付けの回答では、沖縄県が埋立工事の前に海草藻場の移植を求めることは、「貴県知事より承認を受けた願書に添付されている環境保全図書の記載内容の変更を求めていることに等しいものと思われます。」と、非常にけんか腰で回答しました。

まさに、皆さんは、自らの環境図書を否定しているわけです。土砂投入を行って、飛行場建設してから移植を検討するなどという防衛省の詭弁には全く県が同意していないことは明らかです。

今までの防衛省の一方的な定義、つまり、防衛省は、工事及び存在・供用という影響要因の区分を保全措置のタイミングを規定したものとみなしていること、施設の存在の項目に書かれた保全対策は飛行場が完成した後にやればよいという定義、周辺には埋立区域は含まず、代替施設、すなわち埋立区域外であるという定義、埋立区域の海草藻場が一旦消失する、飛行場完成まで待って数年にわたり消失したまま放置されるということはアセスの前提になっているということ。このようなことは、早く埋めてしまいたいという防衛省の一方的な願望によって一般的な言葉の意味をねじ曲げたへ理屈にすぎません。

沖縄県には、こうした防衛省の特殊な定義を説明したことがありますか。

政府参考人(防衛省 西田安範君)

防衛省といたしましては、この環境影響評価等の手続等の時点以降、沖縄県から寄せられる質問等に対しては丁寧に対応してきているところでございます。引き続き、沖縄県等からの質問に対しては丁寧に対応してまいりたいと考えております。

伊波洋一君

こんな身勝手な判断、身勝手な解釈、そして環境省の本来のアセスにももとるようなそんなやり方で、あのような一番広大な藻場を埋め立てていくというのはおかしいと思います。

現地時間六月二十八日、あしたですけれども、サンフランシスコ連邦地裁で米国ジュゴン訴訟の審理が行われます。被告の米国防総省は、二〇一四年四月十五日付けで米海兵隊推奨報告二〇一四年四月を裁判所に提出しました。このことをもって、二〇〇八年一月に連邦地裁より命令されていた米国国家歴史保存法第四百二条の遵守手続を完了したと主張しています。

この米海兵隊推奨報告が根拠としているのが、沖縄のジュゴンの人類学的調査という報告です。この中にジュゴン保全の条件として書かれているのが、ジュゴン基礎調査プログラム、アダプティブマネジメントと並んで海草藻場の移植です。この三つの実施がジュゴン保全の条件なのです。防衛省は、しかし、海草藻場の移植をしていないわけです。防衛省がやりもしないことを、米国防総省は、連邦地裁に対して、やっているから大丈夫と主張しています。国防総省はだまされているんじゃないですか。

埋立区域の海草藻場は埋立てによって消失する、海草藻場は飛行場の完成まで数年にわたって消失し、新たに造成するのは飛行場完成後であるなどとする防衛省の環境保全の考え方について、米国防総省、米軍に報告し、了解を得ていますか。

委員長(三宅伸吾君)

伊波君、時間が参りましたので、おまとめください。

伊波洋一君

報告に対してどのような判断だったんでしょうか。

委員長(三宅伸吾君)

伊波君、おまとめください。時間がもう参っています。

伊波洋一君

時間になりましたが、基本的に防衛省は大きな誤りをしています。皆さんは環境保全図書に書きながらそれを実施していない、そのまま本当にできるはずはありません。このようなことが許されていたら、環境省など存在する理由がなくなってしまいますよ。皆さん、ちゃんと約束を守ってください。以上、終わります。