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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2018年5月17日)

2018.1.22~7.22 第196回常会

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伊波洋一君

沖縄の風の伊波洋一です。議題のBEPS防止条約等は、公正な国際課税ルールを整備するために必要な措置であると考えます。

去る五月三日、世界自然遺産登録を目指していた奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島について、国連教育科学文化機関、ユネスコの諮問機関である国際自然保護連合、IUCNから登録延期勧告が出され、五月十四日にレポート全文が公表されました。沖縄県や地元自治体では世界自然遺産登録への期待も高かっただけに、県民としては複雑な思いもあります。

一方で、この間、米軍北部訓練場のヘリパッド建設や、その後のオスプレイ低空飛行訓練などによる生態系、生物多様性への悪影響がIUCNの勧告の背景にあるのではないかとも考えます。米軍基地の問題でもありますので、本委員会で取り上げます。

環境省に伺いますが、このIUCN勧告、また推薦書提出以降のIUCNとのやり取りの概要について伺います。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

今般、我が国から推薦を行っております奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島につきまして、IUCNの評価がユネスコから通知され、延期の勧告を受けました。

IUCNの評価書では、延期の理由として、今回の推薦区域の設定には主に次の二点で課題があるとされています。すなわち、推薦地は連続性に欠け、遺産の価値の証明に不必要な分断された小規模な区域が複数含まれていること、二つ目に、推薦地の連続性の観点で、沖縄の北部訓練場返還地が重要な位置付けにあるが、現段階では推薦地に含まれていないことであります。

一方で、絶滅危惧種や固有種の生息地であるという点で四島が世界遺産としての可能性を有していること、推薦地の保護管理の状況は世界遺産としての要件を満たしていることなどが評価をされています。このため、延期と勧告されたものの、世界遺産の登録の可能性が十分にある候補地として一定の評価は得られたものと考えております。

もう一点、御質問がありました推薦書提出以降IUCNとのやり取りをどのようなことを行ってきたかということでございますが、環境省といたしましては、昨年十月に実施されたIUCNによる現地調査において、派遣された専門家とともに推薦した四島を回り、推薦地の顕著な普遍的価値や保全の取組について説明を行いました。その後、現地調査後の追加的な情報の提出を経て、昨年十二月にIUCNにおいて世界遺産の推薦案件に関する審査委員会が開かれたと聞いております。

この会議での審議を踏まえて、昨年十二月末にIUCNより推薦地の境界の説明や将来的な拡張の可能性、ノネコ問題などに関する追加的な情報照会を受けました。これに対して、環境省では本年二月末に必要な情報をIUCNに提出し、三月にIUCNを訪問して提出した追加情報に関する説明を行ったところでございます。

伊波洋一君

北部訓練場返還地の追加と世界遺産推薦の見通しはどのようなものでしょうか。また、返還地について、防衛省が支障除去措置を行っていますが、地元紙は取り残された米軍ごみ等についても報じています。環境省の責任において、独自に汚染状況や自然環境の調査を行うべきではないでしょうか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

まず、世界遺産推薦の今後の見通しについてでございますが、世界自然遺産に関しては、今後も早期の世界遺産登録を目指すということに変わりはなく、関係機関や自治体、専門家とも協議の上、速やかに今後の対応を決断したいと考えております。

北部訓練場の返還地については、地元の国頭村や東村からの要望も受けて、将来的な世界自然遺産への追加推薦を見据え、まずはやんばる国立公園への指定に向けた手続を進めており、七月までに指定を完了する予定でございます。まずはこの手続を確実に進め、IUCNが求めるように、推薦地に追加していきたいと考えております。

それから、環境省の責任において独自に調査を行うべきではないかという御指摘につきましては、沖縄県における米軍施設・区域の返還に当たっては、防衛省において、返還地の有効かつ適切な利用が図られるよう返還地を土地所有者等に引き渡す前に支障除去措置を講じられているものと承知しております。

北部訓練場の返還地においても、返還地全域を対象とした資料等調査を行った上、土壌汚染調査や廃棄物処理等を行い、必要な支障除去措置を講じたと防衛省より報告を受けております。仮に、新たに廃棄物などが発見された場合にも、防衛省において土地所有者や関係機関と調整した上で適切に対応されるものと認識をしています。このため、環境省として独自の調査を行う必要はないと認識をしております。

伊波洋一君

防衛大臣、今の答弁では、環境省としては防衛省がしっかりやっているものというふうに理解をしておりますが、そのことを担保する責任は防衛省にあるということでよろしいでしょうか。

防衛大臣(小野寺五典君)

世界遺産登録の問題のことでございますので、これは環境省が対応すべきものと承知をしておりますが、防衛省としても、環境省から要望があれば必要に応じて対応していきたいと思っております。

伊波洋一君

私が今お聞きしたのは、返還された北部訓練場のことです、四千ヘクタールのですね。その中における汚染やあるいは支障除去を、もし不十分な面があれば当然防衛省としてやるということでよろしいでしょうか。

防衛大臣(小野寺五典君)

沖縄県における米軍施設・区域の返還に当たっては、防衛省において、跡地利用特措法八条七項に基づき、返還地の有効かつ適切な利用が図れるよう、返還地を土地所有者等に引き渡す前に土壌汚染調査等の支障除去措置を講じております。

防衛省としては、北部訓練場の返還地においても、返還地全域を対象とした資料等調査を行った上、土壌汚染調査や廃棄物処理等を行ったところであり、必要な支障除去措置を講じたものと考えておりますが、新たに廃棄物などが発見された場合には、土地所有者や関係機関と調整した上、適切に対応してまいります。

伊波洋一君

通告はしてありませんので、今防衛大臣が述べた支障除去措置の結果報告、これについて防衛省からの資料の提供を求めます。

委員長(三宅伸吾君)

後刻理事会にて協議させていただきます。

伊波洋一君

このやんばるの豊かな自然には、国の特別天然記念物に指定された、絶滅危惧種にも指定されておりますノグチゲラ等が生息しております。IUCNのレッドリストにおいて、絶滅の主要な脅威として米海兵隊北部訓練場の六つの新たなヘリパッドの建設が記されております。

ノグチゲラに関するIUCNレッドリストの記載について、環境省の認識、取組はどんなものでしょうか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

IUCNが作成いたしましたレッドリストのノグチゲラの項目の主要な脅威というところの項目においては、ノグチゲラの減少の第一要因として、伐採やダム建設及びそれに付随する道路建設、農地開発、ゴルフ場建設により相当な速度で続いている森林破壊が記述され、また、残されている森林地域の更なる潜在的な脅威として海兵隊北部訓練場の六か所の新たなヘリパッドの建設が記述され、さらに、病気や自然災害、持ち込まれた捕食動物なども記述されていることは承知をしております。

当該ヘリパッドの建設工事については、事業者である防衛省が自然環境に配慮しながら適切に対応されたものと認識をしております。

伊波洋一君

IUCNは、これまで、二〇〇〇年十月及び二〇〇四年十一月にIUCN総会において、やんばるの適切な環境保全対策を求めた勧告を採択しています。

特に、二〇〇四年十一月勧告では、日本政府に対して、ジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保護区を設置して、保全に関する行動計画を作成すること、米国政府に対しては、沖縄の希少な野生生物生息地におけるアメリカ合衆国軍の基地建設について、米軍の環境管理に関する基準に基づいて日本政府と環境保全、野生生物保護の観点から協議することと明記されております。

二回のIUCN勧告に対し環境省はどのような対応をしましたか。勧告事項に関する環境省の取組は十分だったとお考えでしょうか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

ジュゴンにつきましては、大きな脅威となる漁網での混獲による事故等を未然に防ぐため、漁業に関係する方々の理解を得て、網に掛かってしまったジュゴンを救出するための訓練等を行っているところでございます。

また、ノグチゲラ及びヤンバルクイナにつきましては、鳥獣保護管理法に基づき、平成二十一年十一月に国指定鳥獣保護区として安波鳥獣保護区及び安田鳥獣保護区を指定したほか、種の保存法に基づく保護増殖事業の実施に向けた十か年計画を策定し、両種の保全のための生息状況調査や交通事故対策、これらの生息を脅かすマングース等の外来種の防除等の保全対策を実施しているところでございます。

伊波洋一君

IUCNは、二〇一六年、島嶼生態系への外来種の侵入経路管理の強化を勧告しています。五月十五日には、新たに建設された北部訓練場ヘリパッドG地区においてカラスノエンドウを含む五種の外来植物が確認されたと報道されました。特に要注意外来生物に指定されている二種も含まれています。懸念された事態が現実に生じています。

北部訓練場に新たに建設されたヘリパッドに外来植物が侵入している事態について、環境省としてはどのように対処するのでしょうか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

工事の実施による環境配慮につきましては、自主的な環境影響評価の結果も踏まえて、必要に応じて事業者である防衛省において適切に行われるものと認識をしております。

伊波洋一君

防衛省はいろんなことを適切にやるかもしれないけれども、先ほどから指摘しているように、決して十分ではないという。しかし、外来生物の問題というのはそもそも環境省の問題ではありませんか。皆さんとしての対応の方針はないんですか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

本件につきましては、先ほど申しましたように、事業者である防衛省において適切に行われるものという認識をしております。

伊波洋一君

世界自然遺産登録に関するIUCNの基準では、推薦地域の周辺に緩衝地帯を設定する必要があると理解していますが、具体的に北部訓練場内での緩衝地帯の設定や土地利用規制について米軍と協議は行ってきましたか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

本件の世界自然遺産推薦に関して、米軍に対しては、北部訓練場に隣接する区域において、やんばる国立公園への指定や世界遺産への推薦を行うことを情報共有をしてきました。また、世界遺産の推薦に当たって、マングース等の外来種対策等の重要性の認識を共有するとともに、推薦地の保全管理を図るため、意見交換を行うことを文書で合意しています。

伊波洋一君

IUCNの勧告レポートでは、二〇一六年十二月七日に日米両政府が米軍北部訓練場に関し基本的な共同合意、コラボレーションアグリーメントを締結したと記載されています。具体的にどのような内容でしょうか。文書を資料で提供していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

当該文書は、今般の世界自然遺産への推薦について、日米両政府は推薦地に隣接する北部訓練場における自然環境保全に関する日米の協力について協議をした、北部訓練場を含む沖縄島北部一帯において侵略的外来種の防除等により同地域の保全へ特段の配慮をすることの重要性の認識を共有した、推薦地の保全、管理を図るために意見交換等を行うことに合意したという内容のものでございます。

当該文書につきましては、関係者の確認が取れ次第、御提供する方向で検討したいと思います。

伊波洋一君

やんばるの自然を守るという観点から、北部訓練場の区域内にきちんと日本政府の管理権を及ぼしていこうという環境省の取組は評価したいと思います。

日本政府は、これまで、北部訓練場は米軍の管理権の下にあって日本の国内法が及ばないと逃げてきました。しかし、実際は、直径四センチ以上の立ち木の伐採には許可を要するなど、林野庁が管理している国有林であり、国内法は当然及んでいます。米軍北部訓練場の区域内についても、日米両政府で協定を締結し、世界遺産の緩衝地帯に設定して実効性のある環境保全対策を講じていくべきです。

米軍には、日本環境管理基準、JEGSに基づく環境保護が義務付けられています。日本政府としても、JEGSに基づく米軍の環境保護の履行確保の義務を負っています。JEGSについては、第十三章で自然資源及び絶滅危惧種の保護が規定されています。私が提出した「在沖海兵隊施設の「自然資源・文化資源統合管理計画」の入手経緯に関する質問主意書」に対する今年四月十日の答弁書によれば、JEGS十三章に基づく統合管理計画を環境省が初めて入手したのは二〇一七年六月です。日本政府の世界遺産の推薦書には、JEGSの記載も統合管理計画の記載もありません。

環境省は、米軍との協議に当たって、北部訓練場にJEGSや統合管理計画が適用されていることを認識していたでしょうか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

本件の世界遺産推薦に関する協議にかかわらず、北部訓練場に対してJEGSや統合管理計画が適用しているということは認識をしております。

伊波洋一君

北部訓練場を緩衝地帯に設定する協定締結に向けて、改めて米軍と協議すべきではありませんか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

本件の世界遺産推薦に関するIUCNの評価書においては、北部訓練場は推薦地に対する実質的な緩衝地帯として機能し、景観の連続性や重要種の生息に貢献していると評価をされています。このため、北部訓練場に緩衝地帯を設定する必要はないというふうに考えております。

伊波洋一君

今回は北部訓練場跡地、返還地が世界自然遺産になっていくわけですから、そのときにはまさに接しているのが北部訓練場になってしまうという、こういう現実があります。ここら辺については今後とも検討願いたいと思います。

統合管理計画では、北部訓練場内の世界遺産や国指定の史跡などの存否について確認をする項目が設けられており、北部訓練場内を日本政府が公園に指定することも想定されています。この統合管理計画は五年ごとの改定が規定されており、二〇一九年に向けて見直しの作業が進められております。

環境省としても、返還地の自然遺産登録や国立公園指定に伴う北部訓練場の緩衝地帯としての環境管理について、米軍の統合計画に盛り込むよう求めるべきではありませんか。

政府参考人(環境省 米谷仁君)

本件の世界遺産推薦に関するIUCNの評価書においては、北部訓練場は推薦地に対する実質的な緩衝地帯として機能し、景観の連続性や重要種の生息に貢献していると評価をされております。米軍に対しても、この評価内容を情報共有し、北部訓練場の自然環境が引き続き適切に保全されるように求めたいと考えております。

伊波洋一君

残っている北部訓練場の区域内は、世界自然遺産に相当する豊かな自然を保っています。二〇一七年一月の世界遺産登録の推薦書の中では、登録価値証明の中で、五つのジャンルで、部類でその種が示されておりますが、陸生哺乳類と鳥類、両生類でも、北部訓練場の方が申請している北部地区よりは数が多いということが示されます。そういう意味では、やはりこれだけの価値があるわけですから、是非これもまたしっかりと保全をしていく必要があると思います。

そういう意味で、日本政府全体として、米軍北部訓練場への緩衝地帯の設定、北部訓練場への環境省による調査と環境管理を米国に対して求めるべきだと考えます。最後に、外務大臣、防衛大臣の見解をお伺いして、終わりたいと思います。