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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2018年11月29日)

2018.10.24~12.10 第197回臨時会

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伊波洋一君

沖縄の風の伊波洋一です。日中社会保障協定は、先月の安倍総理の訪中において早期発効を約束しており、私どもも賛成です。

日中首脳会談において、競争から協調へ、隣国としてお互いに脅威にならない、自由で公正な貿易を発展させていくとの三つの原則を確認しました。 しかし、沖縄においては、日本政府の強権によって、日中が互いに脅威にならないという原則に逆行する軍備の強化が進められています。その一つが辺野古新基地建設です。これまで二十二年にわたって県民の反対が続いています。二〇一四年に当選した翁長雄志知事は、県民の先頭に立って辺野古埋立承認の取消し及び撤回を取り組みました。残念なことに翁長知事は八月八日に御逝去されましたが、玉城デニー知事が県知事選でのこれまでの最多の得票を得て当選をし、翁長知事の遺志を継いで、県民の先頭に立って辺野古新基地建設に反対をしています。

今回、防衛省沖縄防衛局が一般私人に成り済まして沖縄県の埋立承認撤回に対して行政不服審査請求をするという前例のない請求を行い、それに対し、審査庁である国土交通相が執行停止の決定をするという極めて異常な状況が生じています。沖縄県民が県知事選挙で明確に示した民意を無視するものであり、本日報じられているように来月半ばから土砂が投入されるようなことがあれば、政府と沖縄の亀裂が決定的になることになり、このまま土砂投入をすることがないよう強く抗議し、求めます。

二〇一六年一月二十九日に翁長知事の取消しに対し福岡高裁那覇支部が出した代執行訴訟和解勧告文では、「仮に本件訴訟で国が勝ったとしても、さらに今後、埋立承認の撤回がされたり、設計変更に伴う変更承認が必要となったりすることが予想され、延々と法廷闘争が続く可能性があり、それらでも勝ち続ける保証はない。むしろ、後者については、知事の広範な裁量が認められて敗訴するリスクは高い。」としています。このように、このままでは飛行場は完成することなく、結局は環境だけが破壊をされるということになりかねません。

さて、行政不服審査法は、国民の権利利益の救済を目的としており、第七条二項で、国の機関等、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方になるものについてはこの法律は適用しないと、適用除外を定めています。

総務省行政管理局の逐条解説行政不服審査法、平成二十八年四月によれば、配付資料の一枚目のように、第七条二項の固有の資格とは、「一般私人が立ちえないような立場にある状態」を指しますが、これを判断するに当たっての実務上のメルクマール、指標は、一、「相手方」、二、「事務・事業の性格」であり、特に「事務・事業の性格」については、「処分の相手方が、国の機関等に限られていない場合であっても、当該法令上、当該処分の相手方に係る事務・事業について、国の機関等が自らの責務として処理すべきこととされている又は原則的な担い手として予定されているケースについては、当該法令に定める制度において国の機関等は、その行政主体たる地位が特に着目されているものと考えることができ、一般私人が行う場合が排除されていないといっても、一般私人が任意に行う場合とは事務・事業を実施する背景が異なることから、一般には「固有の資格」に当たるものと考えられる。」と明記しています。

本年六月二十七日から二十九日に実施された公益社団法人日本港湾協会の第三十回港湾行政実務研修資料、港湾行政の概要、平成三十年度において、配付資料の二枚目のように、国交省は、公有水面埋立法第四十二条第一項の法意は、都道府県知事の承認は埋立ての免許と異なり、承認によって埋立てをなす権利が設定されるものではない。国は、本来公有水面に対する支配権、公有水面を直接排他的に支配し管理する機能を有しており、この支配権に基づいて公有水面の一部について適法に埋立てをなし得るのであり、国以外の者がなす埋立ての場合と異なって、埋立てを行うために特に埋立てをなす権利を取得することを必要としないと解されている。昭和二十八年十二月五日法制局一発第一〇八号法制局第一部長からの港湾局長宛て。したがって、国が埋立ての承認を受けた場合においては、埋立てをなす権利がこれによって生ずるのではない、埋立てに関する工事が竣功した場合においては、都道府県の竣功認可を要せず、単に都道府県知事に竣功の通知をすれば足りると明記しています。

そこで、国交省に伺います。公有水面埋立法上、埋立てという事務・事業については国の機関が自らの責務として処理すべきとされている、又は原則的な担い手として予定されていると考えますが、いかがでしょうか。

政府参考人(国土交通省 林俊行君)

お答えいたします。委員御指摘の逐条解説に固有の資格に当たるかどうかの判断に当たっての実務上のおおむねのメルクマールが掲げられていることは承知をしております。また一方で、御指摘の逐条解説におきましては、どの処分について固有の資格を認めることができるかどうかの判断は必ずしも明確になっていない場合が多いともされていると承知しております。

公有水面埋立法に関しましては、このような中、平成二十八年十二月二十日にこの辺野古の埋立承認の取消しに関します最高裁判決が示されておりまして、この中で、公有水面の埋立ての取消しについて、この承認の取消しが行政不服審査法第二条の処分であることを踏まえた判断を行っております。

今回、埋立承認の撤回、これについて執行停止の決定を判断するに当たりましては、この平成二十八年十二月二十日の最高裁判決を踏まえ、行政不服審査法の趣旨を踏まえた上で、沖縄防衛局について埋立承認の撤回がなされることによって適法に公有水面の埋立てをなし得る法的地位を失わせる点におきまして、この二十八年の最高裁判決で判断された承認の取消しと何ら効果において変わることがないことなどから、沖縄防衛局は行政不服審査法第二条の処分を受けたものと言うことができると判断をいたしました。

したがいまして、沖縄防衛局につきましては、一般私人と同様に今回の承認の撤回について審査請求ができると判断したものであります。

伊波洋一君

事務・事業の性格から見て、国の機関である沖縄防衛局による公有水面埋立ては明らかに行政不服審査法七条二項の固有の資格に当たります。国と一般私人による埋立承認と免許の法的性格の相違を反映して、免許の場合のみ多くの手続が存在します。特に、免許の場合のみ、法二十二条に基づく都道府県知事の竣功認可と告示により、初めて埋立地の所有権が発生するという違いがあります。

国交省に伺います。国の機関である沖縄防衛局に対する埋立承認の撤回のうち、撤回が処分であるとしても、当該処分の相手方に係る事務・事業はあくまでも国による公有水面の埋立承認であり、免許と承認は異なる以上、防衛局による審査請求は行政不服審査法七条二項の固有の資格に当たるのではありませんか。

政府参考人(国土交通省 林俊行君)

お答えいたします。審査請求をすることができるかどうか、このことにつきましては行政不服審査の手続に関わる課題でございますので、行政不服審査法の規定により判断をすべきものと考えております。

行政不服審査法第二条におきましては、審査請求をすることができる者について「行政庁の処分に不服がある者」と規定をしておりまして、沖縄防衛局のような国の機関でありましても、ここで言う処分を受けたものと言える場合には一般私人と同様の立場で処分を受けたものであって、固有の資格、すなわち一般私人が立ち得ないような立場で撤回を受けたものではないと認められることから、審査請求をすることができると解釈ができます。

この点、前回の承認取消しの違法性が判断された平成二十八年の最高裁判決におきましても、承認の取消しが処分であることを踏まえた判断を行っておりまして、今回の承認の撤回も埋立てをなし得る法的地位を失わせると、この点におきまして承認の取消しと変わらないことなどから、沖縄防衛局は行政不服審査法第二条の処分を受けたものと言うことができると考えまして、今回の承認の撤回についても審査請求ができるものと判断をいたしました。

伊波洋一君

審査請求ができる云々の話じゃなくて、固有の資格については、これは公有水面埋立法を所管している国土交通省が判断しなきゃいけないわけですよ。ですから、従来の解釈では、公有水面埋立てにおける国に対する承認と一般私人に対する免許では法的性格は全く異なっており、撤回を介すれば承認も免許も同列に置かれるというような防衛省と国交省の解釈の論理破綻は明らかです。

歓迎はしませんが、仮に国として県の承認撤回を是正する、しようと考えるのならば、地方自治法の是正措置をするのが筋のはずです。防衛省による行政不服審査請求の悪用は、法律による行政の原則、法治主義を著しく傷つける暴挙であり、将来に禍根を残します。こんなことが認められていたら、沖縄だけでなく、日本の地方自治、民主主義が壊れますよ。

次の質問に移りますが、本年六月の当委員会での私の質疑に明らかになったとおり、防衛省は環境省の環境影響評価法に関する解釈をねじ曲げて辺野古の工事を強行しています。防衛省沖縄防衛局は、工事の実施と施設の存在・供用があたかも環境保全措置の実施時期であるかのような曲解をした上で、現在は工事の実施期間であるから海草の移植は必要ない、したがって、一旦埋め立て、埋め殺して海草藻場が消失したとしても、環境保全図書に記載されているとおり、沿っていると、配付資料の五枚目の十月十六日審査請求書において強弁をしています。

六月二十八日の当委員会において、環境庁告示八十七号の解釈に関し、環境省米谷審議官は、配付資料にありますけれども、「環境保全措置の実施時期については、環境影響の回避、低減を図る観点から、影響を及ぼすおそれのある環境要素や環境保全措置の効果を踏まえ、影響要因の区分を問わず、事業者が適切に判断し、環境影響評価書に記載するとともに、当該評価書に基づき適切に環境保全措置を講ずることとされている」と答弁しています。環境要因の区分を問わず、あくまで影響要因の区分は環境保全措置の実施のタイミングを規定したものではないということを答弁しています。

環境アセスを所管する環境省の環境告示第八十七号では、環境保全措置の実施は、影響要因の区分を問わず事業者が環境保全のための実施時期について適切に判断せよと言っているわけです。つまり、海草藻場の移植を実施しますと保全図書で約束した以上、消失させる前に代償措置である海草藻場の移植を行うことが当然求められているわけです。

この六月二十八日の環境省答弁によって、防衛省のアセスについての解釈は間違っていることが明らかになったのに、なぜ審査請求に反映されないのでしょうか。

政府参考人(防衛省 西田安範君)

お答えを申し上げます。御指摘の本年六月二十八日の参議院外交防衛委員会におきます環境省米谷総括審議官からの答弁は、環境保全措置の実施時期については、環境影響の回避、低減を図る観点から、影響を及ぼすおそれのある環境要素や環境保全措置の効果を踏まえ、事業者が適切に判断し、環境影響評価書に記載するとともに、当該評価書に基づき適切に環境保全措置を講ずることとされているといった旨を答弁されたものと承知をしてございます。

本事業に係ります環境保全図書におきましては、事業が海藻草類に及ぼす影響を予測した上で、埋立予定区域内であります辺野古前面海域及び大浦湾の西側海域におけます海草藻場の一部が消失することを前提に、その消失が生物に及ぼす影響や消失に対する環境保全措置などを記載しているところでございます。

具体的には、海草藻場の消失がジュゴンに及ぼす影響については、将来ジュゴンが埋立予定区域を含む辺野古地区前面の海草藻場を利用する可能性についても予測した上で、ジュゴンの個体群維持に及ぼす影響は小さいなどと予測をしております。また、他の海域生物に及ぼす影響につきましても、海草藻場の一部が消失をしても周辺海域における海域生物の群集や共存の状況に大きな変化は生じないといった予測をしております。

このように、本事業により海草藻場が消失することを前提とし、こうした影響についての予測も踏まえまして、サンゴ類等のような避難措置としての移植を実施することとはせず、環境保全図書におきましては、改変区域周辺の海草藻場の被度が低い状態の箇所や代替施設の設置により形成をされる静穏域を主な対象として海草類の移植や生育基盤の改善による生育範囲拡大に関する方法等について検討し、可能な限り実施をするといったこととされてございます。防衛省といたしましては……

委員長(渡邉美樹君)

答弁は簡潔に願います。

政府参考人(防衛省 西田安範君)

はい。こういったことを踏まえまして、海草藻場の生育範囲拡大に向けまして、専門家の指導、助言を得て、人工種苗の育成等の具体的な取組を開始しているところであり、審査請求書においてもその旨を記載しております。なお、昨日開催されました環境監視等委員会におきまして、ヘチマポットを利用した人工種苗の現地実証試験等について説明をしたところであります。

委員長(渡邉美樹君)

質疑をおまとめください。

伊波洋一君

長々とした答弁、何の意味もありません。環境省の解釈と相違する防衛省の見解をなぜ維持できるのか、訂正しないのかについて説明を求めます。これは前例のない、今審議中の、審議手続中の行政不服審査請求、あるいは既に国交大臣による決定がなされた執行停止においても中心的な論点です。早急に防衛省として当該環境省答弁に関する……

委員長(渡邉美樹君)

時間が過ぎております。質疑をおまとめください。

伊波洋一君

見解を整理して、明らかにしていただきたい。委員長、理事会においてお取り計らいをお願いしたいと思います。

委員長(渡邉美樹君)

後刻理事会において協議いたします。