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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2019年6月18日)

2019.1.28~6.26 第198回常会

伊波洋一君

ハイサイ、沖縄の風の伊波洋一です。防衛大綱で言う普天間移設、すなわち辺野古新基地建設工事についてお聞きします。

三月に公表された平成三十一年一月付けの地盤に係る設計・施工の検討結果報告書では、軟弱地盤Avf―c層の中に新たなAvf―c2層という土層が発見され、これによりC1護岸の埋立てが可能という結論になっています。しかし、Avf―c2層が本当に実在するのか、極めて疑問です。

まず確認しますが、Avf―c2層が初めて登場したのは、この検討結果報告書で間違いありませんね。

政府参考人(防衛省 辰己昌良君)

Avf―c2層については、平成三十一年一月の地盤に係る設計・施工の検討結果報告書において、物理試験、力学試験等の結果から地盤強度等の特性が異なることが確認されたため、その報告書において、Avf―c層から区分して、Avf―c2層として説明をしているところでございます。

伊波洋一君

検討結果報告書では、配付資料二枚目の方にございますが、この土のサンプルの強度をグラフの散布図に落とし込んで、これに傾向線を引き、Avf―c層とAvf―c2層の強度が異なるという結論を導いています。二つの傾向線の近似式は傾きはほぼ一緒、同じですけれども、切片の数値が大きく異なります。つまり、Avf―c2層は強度の初期値が大きく水増しされているのです。

散布図に傾向線を引く際は、傾向線をそもそも使ってよいかどうか、つまり、傾向線がデータの変動をどの程度説明できているかを表す決定係数R2乗値を確認するのが統計学上の通常の手法です。しかし、検討結果報告書には決定係数の記載はありません。

決定係数はゼロから一の数値を取り、一に近いほど推定された傾向線がデータの変動をよく説明しており、逆にゼロに近いほど傾向線はデータの変動を説明していないと解釈されます。一般に〇・七以上が当てはまりが良い、〇・五未満は当てはまりが悪いと評価されます。

検討結果報告書に記載されたデータを私が表計算ソフトに入力して出した傾向線では、その資料の中にもありますけれども、Avf―c層の決定係数は〇・八〇で当てはまりが良いですが、Avf―c2層の傾向線の決定係数は〇・一七で当てはまりが悪いとの評価が、結果が出ました。

そこで、Avf―c2層とされるデータをAvf―c層のデータと総合して散布図を作成し、傾向線を引き、決定係数を算出すると、〇・七六の当てはまりが良い評価の傾向線の近似式が導けます。明らかに、Avf―c層とAvf―c2層を区分する科学的な根拠は極めて薄弱です。何らかの必要があって、あえてAvf―c2層がつくり出されたのではないでしょうか。

検討結果報告書にあるAvf―c層とAvf―c2層の傾向線の決定係数はそれぞれ幾つですか。防衛省は確認しましたか。

政府参考人(防衛省 辰己昌良君)

この地盤の検討に当たりましては、港湾の施設の技術上の基準・同解説、これに基づいて計算をしております。

これによりますと、こういう計測値のばらつきにつきましては変動係数を考慮して補正等を行い適切に設定する、これが基本になっておりますので、これに従ってAvf―c層とAvf―c2層、それぞれについて変動係数を出した上で我々としてはその値を採用しているところでございまして、Avf―c2層についての変動係数は〇・一七六ということでございます。これはこの基準上においては〇・六未満ということになっておりまして、地層区分の見直しをする必要はないということでございます。

伊波洋一君

決定係数R2乗値を調べないということは、全く不自然なあり得ない対応です。Avf―c層からAvf―c2層を分けるなら決定係数が高まらないといけないのに、逆に決定係数が大変低くなっています。結果として、Avf―c層の強度が水増しされているのです。

総合的判断ということで、根拠と結論が循環しています。今年一月の段階までは、防衛省にもAvf―c2層が存在するという認識がなかったはずです。しかも、この報告書には、改良可能な最大深度は七十メートル程度とするという前提があって、地盤改良ができない水面七十メートルより下はAvf―c2層だと仮定しているのです。しかし、本当にそうでしょうか。あえて、分類した推論に科学的根拠がないことを指摘しておきます。

従来の設計概要のままでは円弧すべりが生じるという認識が前提にあって、サンド・コンパクション・パイルなどの地盤改良を行えば安定性を確保できる、埋立てが可能であるというのが平成三十一年一月の検討結果報告書です。

つまり、大浦湾の軟弱地盤は設計変更をして地盤改良工事を行わないと安定性を確保できないと理解していいわけですよね。お答えください。

防衛大臣(岩屋毅君)

今般、地盤の検討に必要なボーリング調査等の結果を踏まえまして、沖縄防衛局において大浦湾側の護岸や埋立て等の設計、施工等に関する検討を行いました結果、地盤改良工事は必要でございますものの、一般的で施工実績が豊富な工法によって地盤改良工事を行うことは可能であり、そのことによって護岸や埋立て等の工事を所要の安定性を確保して行うことが可能であることを確認をしておりますので、設計の変更を行った上で、沖縄県さんに承認申請をお願いをしたいというふうに考えております。

伊波洋一君

設計変更しない前、これまでもらっている埋立承認ですけれども、仲井眞知事の承認をした現行の埋立計画では、公有水面埋立法の求める災害防止への配慮の基準を満たさないということが明らかになりました。その上で、地盤改良ができない水深七十メートル以下をAvf―c2層としたのが検討結果報告書です。

実は、昨年十月十六日付けの報告書というのもあります。それでは、実際は、やらない前のものが〇・幾らかということで、本当に大きなマイナスの結果が出ているんですね。しかし、その中でもAvf―c2層はなくてもできるという前提でしたが、しかし、基準が変わりまして、しかしそれができなくなったがためにAvf―c2層が必要になってきている、こういうふうになっているのではないでしょうか。

Avf―c2層がなくAvf―c層のままなら、サンド・コンパクション・パイルなどで七十メートルまでの地盤改良をしてもC1護岸の安定性を確保できないのではないですか。確認しましたか。

政府参考人(防衛省 辰己昌良君)

まず、この報告書において、報告書の六ページで、このAvf―cとAvf―c2が違うということを説明しております。
それは、六ページの中で、細粒分含有率、それから硬度、そういったものが、固さですね、固さが違う、あるいは土粒子の密度が違うということで、このAvf―c層とAvf―c2層が違うということで、特性が違うということで区分をしておりますので、そういう各土層の強度などの条件を用いてこの護岸の安定性を確認しているものでございまして、今言われていますようなこのAvf―c2層でないという仮定の条件についてお答えすることは差し控えたいと思います。

伊波洋一君

いや、Avf―c2層の存在は、主に力学的特性や物理的特性に準じて判断をしているのではないですか。目視的な判断ではないんじゃないんですか。それをお答えください。

政府参考人(防衛省 辰己昌良君)

今先生おっしゃったように、物理試験、力学試験、こういった結果から、Avf―c層とAvf―c2層は違うと。で、なぜ違うかということは、先ほど申したようにこの報告書の六ページに書いているところでございます。

伊波洋一君

衆議院での議論の中では、この目視的な黒い灰色の色調というのは、B27地点では七十七メートルで分かれているんですね。そういう意味では、いろんな意味で何もほとんど検証されないまま全体が動いているということはまず指摘しておきたいと思います。

防衛省は、例えばC1護岸の地盤改良後の円弧すべりの安定照査について、報告書六十ページの計算結果以上に生のデータを持っていますか。七十メートルまでは地盤改良されたAvf―c層、七十メートルから七十四メートルまでは未改良のAvf―c層、七十四メートルから以下はAvf―c2層のデータをインプットしているというデータや計算過程を確認をしていますか。

政府参考人(防衛省 辰己昌良君)

今般の地盤改良に係る検討につきましては、専門的知見を有する技術コンサルタントに委託し、検討を行っております。その結果として、この地盤に係る設計・施工の検討結果報告書を受領しています。

そして、このAvf―c層とAvf―c2層に係る計算過程におきましては、この報告書の三十四ページに、港湾の施設の技術上の基準・同解説に基づきまして、修正フェレニウス法による円弧すべりの計算式をここに記載をしておりますが、この計算式に基づきまして、それぞれのこの三十四ページの中に要素が書いてございます。

そういう要素について、例えば十三ページには、計算に必要な物理試験、力学試験等の結果から設定した各種土質条件等が記載をされておりますが、こういったものを使って今回のこの安定性が確保されているという計算結果に至ったということは確認をしています。

伊波洋一君

そういう報告は受けているとは聞いておりますけれども、しかし、このデータの生データや過程についてはもらっているわけではないということもまた聞いております。ですから、報告書には、Avf―c2層の存在やC1護岸を含めた安定性照査結果など、埋立てが可能であるという結論しか書いていません。防衛省が独自にデータを取り寄せ、計算して検証すべきです。

委員長、防衛省に対して、C1護岸の安定性照査について、データや計算過程などをコンサルから取り寄せて委員会に提出するようお取り計らいをお願いしたいと思います。

委員長(渡邉美樹君)

後刻理事会において協議いたします。

伊波洋一君

七十メートルまでしか地盤改良できない現実を前に、元々存在しなかったAvf―c2層が都合よく新たに発見されたとしか思えません。Avf―c2層の科学的根拠がしっかりと検証されるべきです。

大浦湾側の埋立ては、配付した資料、3Dマップ、最後の三枚目からの資料ですけれども、3Dマップや防衛省の資料でもB27地点を含むC1護岸直下の海底は急斜面になっていることが読み取れます。防衛省資料で計算すると、斜度五%から一〇%程度あるようですが、体感的にはかなりの急勾配で、例えば衆議院議員会館の間の山王坂、あれが斜度三・三%です。この急勾配の側面にC1護岸が乗っかっています。

検討結果報告書のC1護岸の安定性照査では斜面であることが考慮されていますか。地盤の斜度は何度で計算されていますか。

政府参考人(防衛省 辰己昌良君)

今般の検討におきまして、このC1護岸のところでございますが、この円弧すべり、これについての安定性は、報告書、先ほど、配付されている資料の一番最初のところでございますけれども、この六十ページの中で、ボーリング調査等の結果を踏まえまして、実際の土の層の分布等をモデル化した上で、この港湾の施設の技術上の基準・同解説に基づいて、修正フェレニウス法によって計算をしておりまして、斜度については計算はしておりません。

伊波洋一君

斜度について計算しないでこういう崖地においてこういう護岸を造って、それで本当に円弧すべりの安定性を確保できるとか安全性を確保できると言えるんですか。

政府参考人(防衛省 辰己昌良君)

先ほど申したように、今般の検討では、C1護岸の円弧すべりに対する安定性照査について、報告書六十ページにありますように、ボーリング調査等の結果を踏まえまして、実際の土の層の分布等をモデル化した上で検討を行っております。

このモデル化について具体的に申し上げれば、各地層ごとにその接点の座標値等を設定することによってモデルを作成し、そして計算をしているということでございまして、計算につきましても、先ほど申したように、修正フェレニウス法によって計算をしておりますので、この不適切との指摘は当たらないと考えています。

伊波洋一君

計算式に合わせて計算をしたことは間違っていないかもしれません。しかし、今予定している大浦湾のあの形状はどこにもない形状なんです。普通の関西空港や羽田D滑走路のように海の上の水平な地層の上ではないんです。幾つも、もう皆さんも知っているように、曲がりくねったところ、さらに軟弱地盤が九十メートルまであるというところの、まさにそこは本当に調べてみなきゃ分からないんですよ。

しかし、皆さんはその調査をしないと言っている。つまり、本当の意味での強度を調べないと言いながら、これを強行しようとしております。それは極めて大きな問題なんです。ですから、埋立て可能という結論を導くために、地面が急斜面であることを見て見ぬふりをしているのではないでしょうか。

防衛省は、C1護岸直下の海底の斜度は何度と計測していますか。

政府参考人(防衛省 辰己昌良君)

先ほど申したように、斜度について計算しているわけではなくて、この報告書六十ページにあるように、各種のボーリング調査等の結果を踏まえて、実際の土の層の分布等をまずモデル化した上で、これについてそれぞれの要素を、先ほど申したように修正フェレニウス法によって計算を行い、安定性の確保がされているということを確認しているところでございます。

伊波洋一君

先ほどから、これまでの答弁もそうなんです、ずっと報告書に書かれていることをオウム返しで言っているだけ。

しかし、現実には、今申し上げたように、極めて困難な現場がある。こういうところに護岸を造ろうとしているわけです。それを調べないでいいはずはないんです。最下層には地盤改良できない地層が大きくあります。なおかつ、急斜面にへばりつくように護岸が造られていく。
しかも、埋立地の角で二方向からこのC1護岸には力が加わります。これが本当に地すべりを起こさないと言えるのかどうか、これは確かめなきゃいけません。C1護岸に限らず、大浦湾側は、大型の強襲揚陸艦が使用可能な深い軍港を確保するために海底の崖にへばりつくような形で埋立地が線を引かれたんですね。しかし、その崖は軟弱地盤の上に立っているということが今回は分かっているわけです。

他の護岸の安定照査でも、海底が急斜面であることは考慮されていないのですか。

政府参考人(防衛省 辰己昌良君)

先ほど来申しているように、今回の検討に当たりましては、この港湾の施設の技術上の基準・同解説に基づいて、その手順どおり、式も修正フェレニウス法を使い、かつその要素についても、調査した結果を踏まえてそれを当てはめて適用し、変動係数等も考慮して補正等も行い、適切にやっていると考えております。

伊波洋一君

C1護岸は一体何メートル沈下するか、その沈下予測をしていますか。逆に、どのように対処するのかもお聞きしたいと思います。

政府参考人(防衛省 鈴木敦夫君)

今回の検討では、検討対象の地層が厚く、埋立て厚さの厚い地点であるS3地点を対象に沈下量を計算いたしました。この結果、S3地点における沈下量は施設の供用開始から二十年間で約四十センチメートルというふうに予測されたところでございます。

沈下に関しましては、C1護岸の地点を含め、今後、事業者である沖縄防衛局において具体的な設計等の検討を行うこととしており、より合理的な設計、施工方法を検討してまいりますが、一般的に申し上げれば、沈下量をあらかじめ考慮した造成の高さや護岸等の高さの設定、それから施設供用後の沈下量を抑える工法、圧密促進工事と申しますが、こうした工法の採用、それから維持管理段階でのかさ上げなどの対策を講じることによりまして対応可能であって、本件についてもこれらの対策を行うことで安全性に問題なく飛行場を供用させることができるというふうに考えてございます。

いずれにいたしましても、今後、事業者である沖縄防衛局において具体的な設計等の検討を行うこととしており、より合理的な設計方法、施工方法を検討してまいりたいというふうに考えてございます。

委員長(渡邉美樹君)

質疑をおまとめください。

伊波洋一君

最後に、はい、防衛大臣に申し上げたいと思います。

今議論をして分かりますように、調べるべきことたくさんあるのに調べていないんです。だから、調べていないことはきちんと調べて、本当の安全を確保してからこの工事は着手をしていただきたい。まさに今の問題はほとんどのことが隠れているということを指摘させていただきました。これ、よろしくお願いいたします。