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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2019年11月14日)

2019.10.4~12.9第200回臨時会

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伊波洋一君

ハイサイ、沖縄の風の伊波洋一です。防衛省給与法案については、他の給与法案同様に異論はありません。

先日からお聞きしている宮古島への自衛隊、陸自ミサイル部隊の配備は、いわゆる南西シフトの一環です。二〇一〇年十二月から二〇一三年十二月まで防衛力の実効性向上のための構造改革推進委員会が設置され、この中の機動展開ワーキンググループが出した中間報告が二〇一二年三月二十九日の機動展開構想概案です。文書の存在は、赤嶺政賢議員が一八年十一月二十九日に衆院安保委員会で明らかにしたものです。この概案には、南西シフトに基づくOR、作戦研究が示されています。防衛省による説明では、三月二十九日付けではなく三月十九日付けの概案は存在するということです。

委員長、機動展開構想概案及び防衛力の実効性向上のための構造改革推進委員会の各分科会、ワーキングなどの議事次第、概要、配付資料等は現在防衛省において非開示部分の精査中とのことですが、審議に不可欠なものであり、早急に当委員会に御提出いただくよう、お取り計らいお願いします。

委員長(北村経夫君)

後刻理事会で協議いたします。

伊波洋一君

お手元に資料を配付してございますが、概案には、別紙第四として石垣島の防衛について作戦研究が記載されています。そこには、「残存率が三〇%になるまで戦闘を実施」とあります。

お聞きします。残存率三〇%、言い換えれば損耗率七〇%まで戦闘を継続するというのは、自衛隊のORの基準として、一般的にほかの作戦研究などにおいても使用されるものですか。それとも、南西諸島での戦闘において特別に設定された数字でしょうか。

政府参考人(防衛省 鈴木敦夫君)

今委員から御指摘ございましたように、平成二十四年三月二十九日の日付を示す機動展開構想概案については、これまでのところ防衛省において確認されていないため、内容の確認ができないものを前提としたお尋ねにお答えすることは困難です。また、防衛省において確認している、で、今、先ほど委員からお話ございました同年三月十九日付けの機動展開構想概案の内容については、現在、当該文書に含まれる内容の開示、不開示の検討及び関係部署との調整など所要の作業を実施しておるため、この場でお答えすることは差し控えます。

その上で申し上げれば、防衛省におきまして科学的な手法による防衛力の分析、評価を行うに当たりまして、その目的により様々な前提や仮定を置いており、必ずしも一般的な基準があるわけではございません。また、分析、評価の細部については、我が方の能力ですとか関心事項を明らかにすることとなるため、対外的に明らかにしないこととしております。そのことについて御理解いただければと思います。

なお、一般論として申し上げれば、分析、評価を行うに当たり、部隊の人員や装備の状況について残存率という用語を用いることがありますが、それ以上の詳細につきましてはお答えを差し控えさせていただきます。

伊波洋一君

軍事の常識では、それ以上の損耗が発生すると自後組織的な戦闘が困難になる損耗率と定義される限界損耗率はおよそ二〇%から三〇%と言われております。損耗率七〇%というのは、およそ近代以降の軍事組織が経験してきた合理的な基準を大きく上回るものです。仮定の数字とはいえ、自衛隊員の命を軽視し過ぎるのではないでしょうか。

質問です。大臣は、石垣島や宮古島に配置される自衛隊に、自衛官に、七割が損耗するまで戦えと命令するのでしょうか。

防衛大臣(河野太郎君)

先ほど答弁がありましたように、これは分析、評価を行うに当たって様々な仮定、前提を置いて行っているわけでございまして、そういうことだと御理解をいただきたいと思います。

伊波洋一君

ただ、現実には、離島奪還訓練、現在も、今日も行われているわけでございますけれども、そのようなことが行われております。

石垣島には現在約五万人が居住しています。短期間に五万人が島から安全に避難するなど非現実的です。このような戦闘が島で行われれば、島民の四人に一人が犠牲になったあの沖縄戦と同様な悲劇は避けられません。

南西シフトの作戦研究の前提が残存率三〇%まで戦えという精神論であることに今更ながらあきれますが、このことは、縦深性がなく狭隘な離島においては、抑止が破綻した場合には、いかに事前に自衛隊を配備していても、自衛隊員の命、ましてや島民の命を守ることはできないということを意味しています。軍事力で離島の安全は守れないということは、沖縄戦でも示された歴史的な事実です。離島においては、軍事的な抑止力に依存するのではなく、外交によって抑止を機能させるべきです。

南西シフトは、中国を仮想敵として想定しています。日中は、外交努力によって東シナ海を平和、協力、友好の海とすると確認する一方で、安倍政権は南西諸島に地対艦・地対空ミサイル部隊を配備するという、非常にちぐはぐな政策が行われています。

中国のGDPは日本の約二・六倍で、日本には中国と軍拡競争をするような経済的な余力はありません。日中間では、配付の四つの基本文書のように、武力又は武力による威嚇に訴えず、全ての紛争は平和的手段により解決すべきと繰り返し確認しています。

昨年の訪中では、安倍総理は、習近平主席と隣国同士として互いに脅威にならないことを再確認し、来春の国賓訪日を求めたばかりです。日中間での武力紛争が現実に想定されるような状況ではないにもかかわらず、島民を分断して地対艦・地対空ミサイル部隊の配備を強行し、同時に多額の税金を費やしていることは深刻な問題です。

かつて、我が国は一九二二年二月六日に締結したワシントン海軍軍縮条約において島嶼で新たな軍事化をしないことを提案し、奄美大島、琉球諸島、台湾、太平洋の南洋諸島で新たな軍事化をしないことを約束し、一九三六年末、同条約から脱退するまで守りました。しかし、その後、太平洋の島々に軍事施設を建設し、住民と兵士を犠牲にする玉砕戦で全滅する作戦を続けたことも歴史的事実です。

第二次世界大戦後の一九四九年のジュネーブ諸条約の第一追加議定書は軍事目標主義を掲げ、武力攻撃は軍事目標のみに限定するとし、同時に第五十八条、攻撃の影響への予防措置として人口の集中している地域又はその付近に軍事目標を設けることを避けることとしています。我が国も、二〇〇四年六月十四日に国会承認、翌二月二十八日から発効しました。

今の政府方針では、離島奪回の戦場となる離島の島民は見殺し、標的にされる、自衛隊員の生命も消耗品扱いです。かつての沖縄戦や南洋諸島の玉砕戦争を反省し、国土を戦場とせず、国民と兵士の命を守ることを実現するため、外交努力を最大限活用する方向に政策変更すべきことを訴えます。

現在の日中の関係について、昨年、安倍総理が訪中するなど、多くの改善をつくり上げました。現在、政府は外交による日中関係の改善に取り組んでいると思いますが、日中の現状について両大臣の所見を、日中関係の改善の現状について両大臣の所見を伺います。

外務大臣(茂木敏充君)

日中両国は、アジア、そして世界の平和と繁栄に欠くことのできない大きな責任を共有しております。地球規模の課題への対応に両国が共に貢献し、その責任を果たしていくことは、国際社会の期待に応えるものであります。

その上で、御指摘の、昨年十月の安倍総理の訪中は、日中平和友好条約の締結四十周年という節目の年に日本の総理大臣として七年ぶりの公式訪問となったわけであります。その中で、習近平主席や李克強総理との間でじっくりと時間を掛けて、大変率直で有意義な会談を行うことができました。

具体的には、両首脳間で、委員の資料にもお示しいただきましたように、国際スタンダードの上に、競争から協調へ、そして隣国同士として互いに脅威とならない、自由で公正な貿易を発展させていくという三つの原則を確認できたわけであります。そして、この原則の下に、共に世界の平和と繁栄に建設的な役割を果たしていくことで一致をいたしました。

この安倍総理の訪中を含め、昨年は首脳、そして外相間の相互往来が実現する等、双方の努力によりまして日中関係は完全に正常な軌道に戻ったわけであります。来年の春の習近平国家主席の国賓訪日を見据えて、ハイレベルの往来を積み重ね、懸案を適切に処理しながら交流、協力を一層発展させ、日中関係を新たな段階に押し上げ、日中新時代、切り開いていきたいと思っております。

防衛大臣(河野太郎君)

昨年、日中ハイレベル経済対話、日本側の団長として中国北京を訪問をいたしました。この代表団が帰国した直後に中国の公船による領海侵犯が行われたわけでございます。

客観的な事実を申し上げますと、中国は、この三十年間に、公表されているだけでも国防予算を四十八倍に増加をいたしました。この十年間に中国の国防予算は、公表されているだけでも二・五倍に増えております。一九九一年当時、一機もなかった第四世代、第五世代戦闘機、今、中国は九百八十八機用意をしており、空母を開発、進水をさせている、そういう運用をしているというところでございます。

尖閣諸島周辺の接続水域に中国の公船が侵入する、これは恒常的に行われており、領海侵犯も月に何度も行われている。そして、自衛隊の、航空自衛隊の、中国の戦闘機が領空に近づいているから、この領空に侵入することを防ぐためのスクランブルは昨年一年間に六百回を超えております。

そういう状況が東シナ海である中、南シナ海では、中国が様々な島、サンゴ礁、島嶼を埋め立てて、そこに様々なミサイル、あるいは戦闘機、爆撃機が離発着できるような飛行場を建設をしている。INF条約に縛られない中国は、アメリカとロシアがINFの開発、配備をしない間にも、この条約が禁止している様々な兵器の開発を行ってきている。また、人工衛星その他に対する新しい兵器の開発を行うと同時に、AIを活用した兵器の開発というものを行っているわけでございます。

自衛隊といたしましては、国民の皆様の平和な暮らし、領土、領海、領空を断固として守り抜く、そのための即応性の維持、装備の運用をしっかりやってまいります。

伊波洋一君

やはり私は、何よりも尖閣問題は尖閣問題の範囲の中でやはりしっかり交渉を進め、そして解決を進めてもらいたいと思います。それはやはり外交の力であろうと思います。軍事力による解決を私たちが求めてはならないし、そういうことがあっては私たち沖縄に住む住民の命は保証できないと思います。

以上、しかし、しっかり両大臣には平和を実現することを求めて、訴えを終わります。