参議院議員 伊波洋一オフィシャルサイト

イハ洋一 Official Web site

国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2019年11月21日)

2019.10.4~12.9第200回臨時会

伊波洋一君

ハイサイ、沖縄の風の伊波洋一です。日米貿易協定案について伺います。

協定案について、安倍首相は、両国の国民に利益をもたらすウイン・ウインの合意だと発言しています。しかし、日本に約七十二億ドル、七千八百億円分の米国産農産物の関税を撤廃、削減させ市場を開放させた米国のトランプ大統領は、米農家にとって偉大な勝利だとディールの成果を誇っています。

茂木大臣は、十一月七日の衆院外務委員会で、自動車について二五%の追加関税を完全に回避することができたと成果を披露されています。しかし、そもそも現行二・五%の自動車関税に、安全保障を理由に更に二五%を追加で上乗せするというトランプ政権の脅し自体、全くむちゃな話で、日米に信頼関係などあったものではありません。また、それを回避できたと喜ぶことも、対米従属外交、隷属外交そのものではないでしょうか。

お伺いいたします。日米貿易協定で日本は何を勝ち取ったのでしょうか。政府の評価を金額で御回答ください。

外務大臣(茂木敏充君)

まず、大きな話から申し上げますと、世界のGDPの三割を占める日米の貿易協定によりまして、既に発効しているTPP11、日EU・EPAを加えれば、世界経済全体の六割をカバーする自由な経済圏が日本を中心として誕生すると。まさに自由貿易の旗手たる日本のプレゼンス、これが高まっていること、これだけでも大きな成果であると考えております。

その上で、具体的に申し上げても、今回の協定は日米双方にとってウイン・ウインで、バランスの取れた協定となっていると考えております。決して二三二条の回避だけの話を私は申し上げているつもりはございません。

本協定では、日本の農林水産品については、全て過去の経済連携協定の範囲内に収まっております。そして、こういった貿易交渉において常に焦点となってきた、また農家の皆さんも一番心配をされていた米については完全に除外、これはTPPと違うんですね、調製品も含めて完全に除外。水産品、林産品についても完全除外となっております。

一方、米国にとりましても、既にTPP11、これが昨年の十二月の三十日に発効し、今年の二月の一日に日EU・EPAが発効すると、こういった中で、他国に劣後する、こういう状況を回避することができるようになったわけであります。また、工業品については、日本企業の輸出関心が高く貿易量も多い品目を中心に早期の関税撤廃、削減が実現をしているわけであります。

さらに、その二三二条にかかわらず、思い起こしていただきますと、日米交渉、これは半導体でも鉄鋼でもそうでありましたが、様々な数量規制、こういったことが問題になってまいりましたが、自動車への数量規制、輸出自主規制等の措置を排除をしたと。さらには、原産地規則、今、日本の自動車メーカー、グローバルにサプライチェーンを展開しておりますが、この原産地規則を全く入れていないということにおきまして、日本の自動車メーカーがこのサプライチェーンを見直す必要もない、こういった点においても大きいのではないかなと思っております。

ですから、日本の自動車産業も、そして農家の皆さんも今回の協定については評価をしていただいていると、またアメリカの農家の皆さんも評価をしていただいていると、それぞれの関係する皆さんが評価をしているということがまさに私はウイン・ウインな結果なんだと思います。

伊波洋一君

次に、日本政府は今年度、在日米軍駐留経費の一部、千九百七十四億円を思いやり予算として支出しています。思いやり予算のほかに日本が負担する在日米軍駐留経費の全体像について、防衛省、金額をお答えください。

政府参考人(防衛省 中村吉利君)

お答え申し上げます。令和元年度におけます在日米軍関係経費につきましては、全体で約五千八百二十三億円となっております。

内訳について申し上げますと、在日米軍駐留経費負担、こちらが約千九百七十四億円となっております。そのほか、周辺対策、施設の借料等といたしまして約千九百十四億円、SACOの関係経費といたしまして約二百五十六億円、米軍再編関係経費といたしまして約千六百七十九億円、以上となっているところでございます。

伊波洋一君

このように、六千億近くの税金が在日米軍駐留経費として使われておるわけですけれども、十一月十五日のフォーリン・ポリシー・マガジンによれば、トランプ大統領は、二一年三月末の日米特別協定更新の期限を前に、日本が負担をしている思いやり予算約二十億ドルを八十億ドルに、四倍に増やすことを日本に求めているとのことです。七月に日本を訪問したジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官とマット・ポッティンジャーNSCアジア上級部長が要求を伝えたと報道されています。

この報道は事実でしょうか。極めて厚かましい話だと考えますが、今後の貿易交渉のてこに使ってくるとも考えられますが、どのように対応しますか。

政府参考人(外務省 鈴木量博君)

お答え申し上げます。

委員御指摘のような事実はございません。いずれにせよ、現在、在日米軍駐留経費は、日米両政府の合意に基づきまして適切に分担されていると考えております。

現在の在日米軍駐留経費負担特別協定につきましては二〇二一年三月末日まで有効であり、現時点で新たな特別協定に関する交渉は日米間では行われておりません。

伊波洋一君

米韓では五倍へと要求されて、これを韓国が拒否をしたということが報じられております。同様な時期に日本に立ち寄った関係者が日本に四倍を求めたというのはあり得べきことかなと、このように思います。是非、そういうことについては、しっかりと国会にも伝えていただきたいと思います。

さて、日米貿易協定では、米国産牛肉について、TPPと同様に現在三八・五%関税を段階的に九%まで引き下げます。TPPでは、輸入量が一定量を超えた場合、関税に引き上げる関税緊急措置、いわゆるセーフガード発動基準数量が、米国産牛肉の輸入増加量を見越して当初は五十九万トン、将来的には七十三万八千トンに設定されております。このTPPのセーフガードとは別に、今回新たに米国産牛肉について、別枠で二十四・二万トンから二十九・三万トンのセーフガード発動基準量が合意されました。

米国産牛肉の輸入量増加について二重計上になり、実質的にTPPの輸入量へと加算されてしまい、オーストラリアなどTPP締約国の日本への輸出に歯止めが掛からない状態になることが懸念されます。セーフガードの数量を適正化するために、日本政府がTPP締約国と個別に交渉して妥結する必要があるということです。

この点について、この交渉、協議の見通しについて伺います。

政府参考人(内閣官房 澁谷和久君)

まず、日米協定におきます牛肉のセーフガードでございますが、現時点で、競合するオーストラリア等はTPPで関税が下がっていて、アメリカには三八・五%であるにもかかわらず米国産牛肉への需要が非常に高いという状況の中で、米国産牛肉の輸入が増えることを懸念する、そういう関係者の意見を十分踏まえまして、米国に対して二十四・二万トンという非常に実績を下回るところからスタートするという基準を設定したところでございます。

一方で、TPP11の方、これとの調整が必要だということでございますが、そのTPP11、今どんな状況かといいますと、まだ発効後間もないということがございまして、発効後の運営等についてまだ具体的に話合いをしているという状況でございます。

また、いまだ国内手続を完了して締約国になっていない国が四か国あるということでございまして、そういう中で、本件について、いずれかの時点でTPP関係国ときちんと協議をしたいと考えておるところでございますが、TPP11、まだ発効から間もないということに加えまして、日米貿易協定の発効後の実際の輸入状況、特に主として米、豪の牛肉の輸入状況はどうなっているかという、そうした輸入状況を見極める必要がございます。その上で、適切なタイミングで関係国と相談を行うこととしていきたい、その旨は豪州始め関係国に伝えているところでございます。

伊波洋一君

いわゆるそのTPP11のセーフガード発動基準数量、これは政府としては国民への約束だと思いますが、これを超えることはないということはお約束できるんでしょうか。

政府参考人(内閣官房 澁谷和久君)

アメリカの輸入量は、二十五・五万トンというのが直近の数字でございまして、それより少ない数字から発射台でやっているところでございまして、アメリカの輸入量を日米のセーフガードの範囲内に収めることで、豪州からの輸入が現状どおりであれば、セーフガードの枠内に収まるのではないかというのが私どもの見通しでございます。

伊波洋一君

いや、見通しの話じゃなくて、その年度年度においてセーフガードの発動基準数値が維持されているわけですね。それが増えることがあってはならないと、アメリカの分が足されてもですね、そういうことはお約束できるんでしょうか。

政府参考人(内閣官房 澁谷和久君)

TPPのセーフガード発動基準数量を増加させるということは考えておりません。

伊波洋一君

是非そのことは約束してもらいたいと思います。

沖縄県の農業産出額は、二〇一七年、二百二十八億円が肉用牛で、サトウキビが百六十八億円となっております。日米貿易協定の結果、安価な輸入牛肉や豚肉が国内市場に流通することは県内の畜産農家にとっても大きな打撃となります。

日米貿易協定における牛肉、豚肉の合意内容に関する政府の評価、また国内対策について伺います。どうなっていますでしょうか。

政府参考人(農林水産省 渡邊毅君)

お答えをいたします。

今回の日米貿易協定におきましては、牛肉につきましては、先ほど澁谷統括官の方からも御答弁ありましたけれども、二〇二〇年度の米国へのセーフガード発動基準数量を二〇一八年度の輸入量である二十五・五万トンより低い二十四・二万トンに抑制をしているところでございます。また、豚肉につきましては、差額関税制度と分岐点価格を維持いたしまして、従量税部分のセーフガードを米国とTPP11発効国からの輸入量を含むTPP全体の発動基準数量としているということで、TPPの範囲内にすることができたものと考えているところでございます。

一方、対策につきましては、これまで総合的なTPP等関連対策大綱に基づきまして、生産性向上を図るための施設整備や機械導入を支援いたします畜産クラスター事業などの体質強化対策を講じているほか、経営安定対策といたしまして、飼料費の上昇などにより収益性が悪化した場合に、一定の条件の下で生産費と販売価格の差額を補填いたします肉用牛肥育経営安定交付金、いわゆる牛マルキンと、肉豚経営安定交付金、豚マルキンというのがございまして、この制度を従来から予算制度で運用しておりましたものを法制化した上で、補填率を八割から九割に引き上げるというような措置を講じているところでございます。

今回の日米貿易協定を受けまして、今後、総合的なTPP等関連対策大綱を見直しまして、政府一体となって畜産業の生産基盤の強化につながるような対策というものも実施することによりまして、輸出にも対応できる強い畜産というものを講じてまいりたいと考えております。

伊波洋一君

沖縄県内では、このような競争環境の激化も見据えて、国内市場だけでなく、地理的な優位性を生かして海外、特にアジア市場に参入すべく、食肉の輸出に向けた取組を強化してまいりました。そのために、沖縄県内において、食肉施設のHACCPの認証を含め、輸出先国の食品安全基準に見合った認定取得など多くのハードルを越えなければなりません。

そこで、質問します。沖縄県農畜産物の更なる輸出促進に向けて、是非政府として支援をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

政府参考人(農林水産省 渡邊毅君)

お答えをいたします。

沖縄県につきましては、特に豚肉の今生産が非常に盛んだということでございまして、豚肉の輸出量は全国では直近五年間で約一・五倍に伸びておりまして、直近の二〇一八年も七・九億円と過去最高水準を記録しているわけでございます。そのうち、沖縄からの輸出量についても近年増加傾向ということで、二〇一八年は過去最高の一・三億円を記録されているということでございます。

これの更なる輸出拡大を図るために、シンガポール向けの豚肉輸出を希望されています沖縄県食肉センターに対しまして、本年十月から、農林水産省主催で、厚生労働省、地方厚生局、都道府県等、事業者の五者で、衛生管理、人材育成等についての協議を開始したところでございます。

なお、沖縄県内の食肉処理施設のHACCP導入状況でございますけれども、県内に七か所処理施設がございますけれども、沖縄県食肉センターにおいては既に取得をされていると。そのほかの名護市食肉センター、宮古食肉センター、八重山食肉センターなどについても現在導入に向けて取り組んでいると聞いているところでございます。

このように、沖縄県を始めとした日本からの食肉輸出拡大に向けまして、引き続き輸出先国から求められておりますHACCPなどの衛生条件を満たす施設の整備につきまして支援をするとともに、先ほど申し上げました五者協議を進めることで食肉輸出施設の認定の加速化に取り組んでまいりたいと考えております。

伊波洋一君

今政府は、農畜産物輸出拡大施設整備事業などを通して、HACCP等の輸出対応施設や、あるいはまた貯蔵施設など含めて様々な施策を取り組んでいます。沖縄においては、やはり本土復帰が遅かったこともあって、なかなか整備が十分ではございません。そういう中で、やはり一番近いアジアということで、そういうところへの輸出というものを大変希望を持って取り組んでいるところです。

食肉輸出の解禁に当たっては、輸出先国との動物検疫に関する協議が必要です。特に中国の消費市場は大きなポテンシャルを持っています。現在、輸出解禁に向けて中国等との協議はどのような進捗状況でしょうか。

政府参考人(農林水産省 神井弘之君)

お答え申し上げます。

日本産牛肉の中国向け輸出の実現のためには、まず、本年四月に日中双方で実質合意に至っている日中動物衛生検疫協定の締結が必要でございます。その後、中国側による口蹄疫、BSEに関する解禁令の公告、中国側による我が国の食品安全システムの評価、輸出のための検疫条件に関する日中双方の合意、輸出施設の認定及び登録が必要となります。

早期に日本産牛肉の中国向け輸出を実現できるよう、関係省庁とも連携を取りながら、協議の加速化に努めてまいります。

伊波洋一君

農林水産物の食品輸出の二〇一九年の目標は一兆円ですが、二〇一八年の輸出先上位の十か国中八か国がアジアです。特に中国は、香港を含めれば三千四百五十三億円です。

既に報じられているように、BSEでストップしている中国への日本産牛肉輸出が来年にも再開されるのではないかと報じられておりますが、このように中国への輸出がやはり日本の畜産業界にとって大変な大きなマーケットを開くものだと思います。

特に、中国への輸出品目を見ますと、農林水産物等を見ますと、第二品目は丸太です、第三品目は植木です。つまり、中山間地、日本の農業の生産物が基本的には売られているんですね。同じ農水産物でも、ビールとかいわゆる加工品であるものとはちょっと違って、やはり私たちがこの日本の中山間地の産業育成をやる上でも、近隣のこの中国のような物すごい人口を持つ国々へのマーケットを大変大事にする必要があります。

沖縄も、かつて来、ずっと中国との交流をしておりますが、来年の習近平主席国賓来日に向けて日中関係も改善の基調で推移しています。日本産、特に一番近い沖縄からの農畜産物の中国への輸出を前進するよう、是非政府を挙げて取り組んでいただきたいと思いますが、農水省の所見を伺います。

政府参考人(農林水産省 池山成俊君)

お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、昨年の中国への輸出額は千三百億円ということで、我が国の輸出額の中で大きな割合、一五%ほどを占めております。また、人口が多く経済発展が著しいことから、今後更に農林水産物、食品の輸出が拡大することが見込まれる有望な市場であるというふうに考えております。

しかしながら、中国は、東京電力福島第一原発事故後、放射性物質に関する日本産食品に対する輸入規制がまだ講じられておりまして、新潟県産米を除く十都県の全ての食品が輸入停止となるなど、多くの規制がまだ残ってございます。

このため、科学的根拠に基づく輸入規制の撤廃、緩和を働きかけるとともに、輸出拡大のためのプロモーション支援を行うなど、中国への輸出拡大に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えております。

伊波洋一君

確かに、制限されている県もありますけれども、ほかの県からは輸出が可能です。香港が二千百十五億円という、沖縄最大輸出国なんですね。そういう意味では、合わせれば、先ほど申し上げたように、今三千四百五十三億。人口を考えますと大変大きな市場だと思います。

そういう中で、やはり国として、近隣の中国に対する我が国の伝統的ないわゆる野菜や様々な農産物を出していく。それから、林業における丸太などをやはりしっかり出せる相手だということを考えるならば、やはり中国との貿易関係は大変大事だと思っております。

そういう意味で、沖縄の可能性を実現することが私たちにとっては日本経済にもプラスになるということで頑張っておるわけですけれども、農林水産物や食品の中国への輸出の促進に向けて、是非、来春の習近平主席の訪日に向けての具体的な成果を上げてもらうようお願いするとともに、御所見を茂木大臣、一言お願いしたいと思います。

外務大臣(茂木敏充君)

非常に中国は魅力ある市場であると思っております。そういった中で、今、首脳レベルを含めて、頻繁な往来によりまして、日中関係、完全に正常な軌道に戻っているわけでありまして、沖縄含めて日本からの中国への輸出が促進されるよう全力で取り組んでいきたいと思います。

伊波洋一君

沖縄は対中国関係の接点でもございます。尖閣もありますが、是非、外交の力で平和的に解決していただいて、完全な軌道に戻っているという御認識の茂木大臣の下で、日中関係、本当にしっかりしたものにさせていただくことをお願いして、終わりたいと思います。ありがとうございます。