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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2019年11月26日)

2019.10.4~12.9第200回臨時会

伊波洋一君

ハイサイ、沖縄の風の伊波洋一です。前委員会で、私は、沖縄から中国への牛肉等の輸出のための環境整備について取り上げました。

昨日のNHKニュースは、十一月二十五日午後、茂木大臣と中国の王毅外相は東京都内で会談し、日中両政府が日本産牛肉の輸出に必要な安全性に関する協定に署名したことを共同記者発表で明らかにしました。早ければ来年にも輸出が再開される見通しですとNHKは伝えました。

二〇〇一年に国内でBSEが発生して以来、日本産牛肉は二十年近く中国に輸出できなかったわけですが、今日の中国はかつての中国とは大きく違い、巨大なマーケットに成長しています。テレビニュースは、カナダからの和牛がお店で百グラム四千円で提供されている映像を流しておりました。

通告はしておりませんけれども、昨日のことですので、日本産牛肉の中国への輸出再開実現に向けた見通しについて、茂木大臣の今後の展望をお聞かせ願えないでしょうか。

外務大臣(茂木敏充君)

昨日、協定に合意をしたわけでありまして、一つの環境整備になってくると。今、御案内のとおり、日本産の牛肉、海外への輸出、非常に増加をいたしております。そういった中で、中国市場という大きな市場に対して、日本産の安全でそしておいしい牛肉や農産品、こういったものが更に輸出できるように努めてまいりたいと考えております。

伊波洋一君

是非、中国という巨大なマーケット、これを攻めることも大変大事だと思いますので、質問させていただきました。

沖縄の言葉でウージと呼ばれるサトウキビは、沖縄県全体の農家数の約七割、耕地面積の約五割、農業産出額の約二割を占める基幹作物です。北海道のてん菜、奄美、沖縄のサトウキビなど甘味資源作物に対しても、この間の貿易協定は影響を与えることが懸念されています。日米貿易協定では、粗糖、精製糖も、加糖調製品についても除外、米国枠も設けないということで、影響がないということです。

一方、TPP11では、粗糖、精製糖について、一部五百トンぐらいの試験輸入枠を設けたり、糖度が高いものの一部調整金の削減をする、加糖調製品については関税割当て枠を新設しています。この結果、TPP11については四十八億円、日EUについては三十三億円の影響があるということです。これに対する国内対策はどのようなものでしょうか。

政府参考人(農林水産省 平形雄策君)

お答えいたします。TPP11や日EU・EPA協定においては、糖価調整制度が現行どおり維持されたため、輸入糖と国産糖の価格調整を通じて国産糖の安定的な供給が確保されることから、国産糖から輸入糖への置き換わりは生じないものと考えております。

一方、委員御指摘のとおり、両協定では、加糖調製品に関税割当てを新たに設定したことなどによりまして、国内産糖の価格が下落することで一定の影響が試算されております。また、競合する砂糖の輸入量が減少して、輸入糖からの調整金の収入を、これ減少をもたらしまして、生産者に対する支援に影響が生じることも懸念されるところでございました。

このため、一つは、砂糖と競合する加糖調製品についても調整金の対象とすること、また、この調整金を原資として砂糖の国内支援に充当することを通じて国内産の砂糖の競争力を強化し、サトウキビなどの生産者や産地の製糖工場が将来にわたって安心して生産に取り組むことができるよう、改正糖価調整法、これを措置したところでございまして、この制度を着実に実施していきたいというふうに考えております。

伊波洋一君

サトウキビ農業と製糖業は一体のものですが、沖縄の特に離島では畜産業とともに製糖業が地域経済、社会を支えています。

製糖業は、大きく分けて分蜜糖工場と含蜜糖工場に分類されます。分蜜糖とは、ミネラルなどを含む糖蜜を遠心分離機などで結晶と分離して作る蔗糖だけを精製した砂糖で、ざらめ糖、三温糖、上白糖、グラニュー糖などが精製糖の仲間となります。これに対し含蜜糖は、搾った汁をそのまま煮詰めて、蜜分を残して仕上げた砂糖で、沖縄の黒糖などがこれに当たります。

沖縄にとって、サトウキビ生産の支援があっても、肝腎の製糖工場がなくなればサトウキビ農業が成り立たなくなってしまいます。そうなってしまえば、離島からの人口流出に歯止めが掛からなくなります。離島の維持のためにも、製糖工場の施設更新に対する支援が必要です。

施設更新が必要なのは、一九五〇年代後半に建設されて、今や還暦、六十歳を迎える製糖工場が多いことです。分蜜糖工場の多くが昭和二十七年から昭和三十八年にかけて建設されており、建設時期、いよいよもう建て替え時期になっております。

さらに、製糖工場における働き方改革への対応が必要とされております。そのためには、やはり省力的な製糖工場が求められています。製糖工場の働き方改革の時間外上限規制の適用は五年間の猶予をいただいており、老朽化している工場の改築等を通して、また働き方改革に資するためにも、農水省では産地パワーアップ事業、内閣府では沖縄振興事業として取り組んでいると思います。

そこで質問です。現在、農水省、内閣府でそれぞれ支援していただいていると思いますけれども、制度の概要を御説明ください。

政府参考人(農林水産省 平形雄策君)

お答えいたします。委員御指摘のとおり、政府が一体となって取り組んでいる働き方改革の中で、沖縄県及び鹿児島県における砂糖製造業に対しましてはもう五年間の適用猶予がなされておりますが、この間に長時間労働の是正等が図られるよう、人材の確保、省力化等に対する支援を実施しているところでございます。

この中で、農林水産省といたしましては、産地パワーアップ事業において分蜜糖工場における省力化施設の整備を支援しており、国の補助率十分の六となっております。残りの十分の四は、事業実施主体のほか、市町村、県が負担していただく例がございますが、その割合は各事案ごとに話合いで決めていただいていると承知しております。

さらに、産地パワーアップ事業による分蜜糖工場への支援に当たりましては、全ての工場が対象となるように中小企業の要件の特例を設けましたり、整備計画を最大五年間まで認めるなど、運用上の配慮を行っているところでございます。

政府参考人(内閣府 宮地毅君)

お答えいたします。含蜜糖の製糖施設の整備につきましては、内閣府におきまして、市町村が行う工場の建屋や建屋内の設備の整備等については、国、内閣府と沖縄県とを合わせまして整備費の十分の九を支援しております。また、市町村が行う工場周辺の外構やストックヤードの整備等につきましては、国が整備費の十分の八を、それぞれソフト一括交付金を通じて支援をしているところでございます。

伊波洋一君

私は沖縄の風会派の高良鉄美議員とともに、今年九月と十月、宮古島や伊良部島、多良間島、久米島、石垣島の各製糖工場を訪ねて、働く方々やあるいは経営者、管理者の方々とも話し合ってまいりました。施設も見させていただきましたが、含蜜糖工場は見事に、新たに新設されている多良間工場なども見させていただきました。

やはり沖縄の島々を行きますと、ほとんどはサトウキビ畑です。どこへ行くにも、市街地をちょっと中に入ってもう集落を越えれば全部サトウキビ畑です。そういう形で、今、沖縄の島々は農業を中心に暮らしています。そういう意味では、いろいろと貿易協定の影響もありはしますけれども、やはりそういう島々で暮らしが成り立つためには、製糖工場をしっかり私たちは更新していかなければならないと思っております。

今、含蜜糖を内閣府、あるいは分蜜糖を農水省という形でやっておりますけれども、やはり足りないところは互いに助け合って、是非沖縄県を支援していただきたい。特に各市町村ですね、小さい島々です。その島々がまた大きな魅力を持って多くの観光客も受け入れているという中で、こういう産業が大変大事だと思っております。是非、離島における基幹産業としての製糖業の維持発展に向けて政府としてしっかり支援していただくようお願いして、両省には質問を終わりたいと思っております。

それでは、日米貿易協定に絞って伺います。日米貿易協定について、令和の不平等条約、あるいは牛を取られて車は取れずなどと批判されています。

日本政府は、日米貿易協定の成果として、米国による自動車、自動車関連部品への二五%追加関税措置を回避できたと言っています。そもそもトランプ大統領の、輸入車に安全保障を理由に追加関税を掛けるという脅し自体が国際貿易上のルール違反であり、米国がそれを断念したところで、不当なことをやめさせた、マイナスがゼロになっただけです。しかし、日本政府は、日米両国がこれらの協定が誠実に履行されている間は両協定及び本共同声明の精神に反する行動は取らないという共同声明の文言を根拠にして、追加関税措置回避の成果としてアピールしています。

では、この日米両国は、これらの協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らないとの九月二十五日の日米共同声明にいう本協定及び本共同声明の精神とは具体的にはどのようなものなのでしょうか。

外務大臣(茂木敏充君)

まず、この日米貿易協定につきまして、単に二三二条の発動が見送られると、これによってウイン・ウインになったという説明はいたしておりません。例えば工業品につきましても、日本にとって輸出関心が高い、また貿易量が多い、こういった品目について、即時撤廃を含め関税の早期撤廃を勝ち取ることもできたわけでありますし、一方、日本にとって重要な米、これにつきましては完全除外をする、また、農産品につきましては全てTPPと過去の経済連携協定の範囲内に収めると、様々な要素を総合して日米双方にとってウイン・ウインな結果になっていると、このような説明を繰り返し丁寧に申し上げているつもりであります。

その上で、本年九月二十五日の日米共同声明において記載のあります御指摘の両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない、これどういう意味かということでありますけど、今回の日米貿易協定は、日米両国の二国間貿易を強力かつ安定的で互恵的な形で拡大すると、こういったことを基本的な目的としておりまして、こういった共同声明にも明記をされております協定の目的に反する行動を取らない、こういう意味であります。

伊波洋一君

日米貿易協定の本文第四条では、安全保障上の措置を例外とする条文が設けられています。特に、(b)項には、協定のいかなる規定も安全保障上の措置をとることを妨げないと明記されています。協定の精神なるものと本文協定、効力の上ではいずれが優先するのでしょうか。

政府参考人(外務省 山上信吾君)

お答えいたします。ただいま御指摘がございましたこの例外規定でございますが、四条の安全保障例外、これは我が国がこれまで締結してまいりましたWTO協定、それから経済連携協定にも盛り込まれてきました一般的な規定でございます。したがいまして、この安全保障例外を盛り込んだことによりまして日本がアメリカの通商拡大法二百三十二条に基づく貿易制限的措置を容認したというようなことではないということは申し上げたいと思います。

その上で、お尋ねの優先関係でございますが、そもそもこの日米貿易協定と日米共同声明というのは性質の異なる文書でございます。したがいまして、いずれかが優先するというような関係にあるものではございません。

伊波洋一君

いろいろ説明を聞いておりますと、貿易協定の方はより厳密に書いているので協定の方が効力があると、共同声明は政治声明であるというような説明もあったりします。そういう意味で、どちらも有効だということでいいんでしょうか。

外務大臣(茂木敏充君)

今、山上局長の方からも答弁させていただきましたように、性質の異なる文書であります。ですから、そのどちらが優先ということはございませんが、書いてある内容といいますか、方向性、趣旨につきましては、協定で結んだものも共同声明も同じであります。

伊波洋一君

百歩譲って、協定の精神なるものと協定本文が多少異なるとしても、協定の精神が協定本文に明記された内容と矛盾したり、ましてや協定本文の明文規定より優越した効力を有するわけではないということだと思うんですけれども、協定本文では安全保障上の措置を除外しています。

仮に、トランプ政権が今後安全保障を理由として自動車や自動車部品への二五%追加関税措置をとったとしても、協定四条には合致したものであり、協定の精神に反しないのではありませんか。

政府参考人(外務省 山上信吾君)

お答えいたします。先ほど御説明申し上げましたように、この日米貿易協定四条の安全保障例外の規定の意味でございますが、一般的な規定でございまして、日本としてこの二百三十二条に基づくような貿易制限的措置を容認したものではないということは御説明したとおりでございます。

しからば、日本としてはどういう立場を伝えてきたかということですが、この二百三十二条による追加関税というものは、一つには、日本との貿易関係はアメリカの経済的繁栄のみならず安全保障にも貢献しているんだということで、日本からの自動車、自動車部品の輸入、アメリカにとっての輸入でございますが、これはアメリカの安全保障上の障害になったことはないと、これからもないと。それから、仮に自動車等に対して貿易制限的措置が導入される場合には、アメリカの自動車産業を含むアメリカ経済、世界経済、自由貿易体制にもマイナスの影響をもたらすと、こういった二つの大きな立場について、今回の日米交渉の機会、さらには各種の意見書、公聴会といったものを通じまして、明確にアメリカ側に伝えてきた次第でございまして、こうした我が国の立場に変わりはございません。

したがいまして、日本の自動車、自動車部品に対しまして二百三十二条に基づく追加関税が課されるというようなことは、日米両国の二国間貿易を強力かつ安定的で互恵的な形で拡大していくと、先ほど大臣からも申し上げましたこの共同声明にも規定してある目的でございますが、こういった目的に反するものでございます。

ということで、アメリカが追加関税を課すことがこの協定の、本共同声明の精神に反しないと、あるいはこの協定の安全保障例外の規定によって容認されるというようなことは全くないと考えております。

伊波洋一君

協定として文字にしたものをお互いにサインをしているわけです。その精神などという曖昧なもので追加関税措置を止められるわけが果たしてあるのでしょうか。自動車に対する追加関税措置は、トランプ政権の手持ちカードとして温存されているというふうに思っても不思議ではないと思います。

自動車に対する追加関税措置というカードをちらつかせて、米などの農業分野やあるいは医療、保険、食の安全性、あるいは公共サービスなど、トランプ政権が更なる日本市場の開放を求めてくる可能性はあるのではないでしょうか。

政府参考人(内閣官房 澁谷和久君)

今後の交渉につきましては、繰り返し御説明していますとおり、まずはアメリカとの事前協議、コンサルテーションを行った上で、日米で合意したもののみが交渉の対象となるということでございます。

農産品については、私どもとしてこれ以上の交渉をすることは想定しておりませんし、また、農水委員会において、江藤農水大臣、職責を賭して国益に反するような合意はしないということを明言されておりますので、そのとおりだというふうに考えております。

伊波洋一君

若干、時間が少しありますので、二点ほど追加で質問させてください。

一番大きな疑問が、二つあるんですね。一つは、今回の協定に基づくいわゆる効果の問題ですね。これは、一つは、農産物の関税の問題は明確に決定をしている。それで、一方、自動車部品に対する日本側からの輸出に関する関税については必ずしも明確になっていない。しかし、最終的には撤廃だと書いているから、将来的に、いずれはゼロであると。そのゼロがいつであるか分からないけれども、それを計算上の利益としているということの考え方ですね。少し分かりにくいんですけれども、そういうものが本当に現実的であるのか。
 
つまり、実際は、現実に日本が受ける輸入による産業の問題というのは明確に数字化されている。でも、いつ実現できるか分からないような関税撤廃というものについてもゼロになるということを前提に計算をしている。

しかし、今、自動車部品は、自動車の状況というのは、まさにエンジンの自動車から電気自動車に移る時代で、この十年といえば、どういう時代、どういう自動車が輸出されるようになってくるのか、部品が輸出される、なるか分からないような、こういう動く時代です。そういう時代において、そういういつ実現するか分からない部品の輸出の関税の撤廃というものを計算している状況がおかしいんですけれども、これについて、基本的にそれが正しいというならば正しいという理由を説明していただけませんか。

外務大臣(茂木敏充君)

経済効果分析、基本的にはGTAPモデル、これスタティックモデルというわけでありますけれど、均衡点に達した時点での効果というのを分析するわけであります。その毎日の効果とか毎年の効果分析していたらこういう経済効果というのは分析できませんから、均衡点に達した時点でありますから、政府の試算、これについては正しいものだと考えております。

伊波洋一君

やはり分からないのは、この均衡点に達するということ自体も合意はされているとは必ずしも見えていないところにこの協定の問題点があるのではないかと思います。いつまでに協議をする、いつまでに合意をするということがないわけです。

一方、アメリカ側は、いろんな意味では、この問題については四か月後には再度協議をするということを明確に日本に求めて、それを認めてもらっている。ほかのTPPなども含めて、普通のこういう協定は、七年とか何年というかなり長い年月が、そういう状況続いた上で、その様子を見て再協議ですけれども、この二本、今回の場合、四か月で再協議という、そういうことについて、やはりこんなに短いスタンスで再協議する話になることについて、ちょっと、どういう立場なのか、御説明をいただいて、終わりたいと思います。

外務大臣(茂木敏充君)

今後の協議につきましては、四か月、これを意図すると、インテンド・ツーと書いてあります。一つの目標として、四か月で協議をしてどの分野を交渉するかということを決めていきますが、いずれにしても、日米双方にとってこれからもウイン・ウインとなるような交渉分野を選んでいきたいと考えております。

伊波洋一君

終わります。