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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会、農林水産委員会、経済産業委員会連合審査会(2019年11月28日)

2019.10.4~12.9第200回臨時会

伊波洋一君

ハイサイ、沖縄の風の伊波洋一です。日米貿易協定についてお聞きします。今回の日米貿易協定は、本来の交渉はギブ・アンド・テークでなければなりませんが、結果として、農産品はTPP並みあるいはそれ以上に譲り、自動車は先延ばしされてしまいました。

協定の米側の義務を定めた附属書である附属書Ⅱには、「自動車及び自動車部品の関税については、関税の撤廃に関して更に交渉する。」と明記されております。この訳は外務省の説明書の文言ですが、どう好意的に解釈しても、将来の交渉で関税が撤廃されることまでを確約したとは理解できません。ましてや、いつ関税撤廃が実現するかといった期限が書かれていないことも明らかです。

外務大臣、これをもって自動車の関税撤廃を勝ち取ったとするのはさすがに印象操作ではありませんか。これはどのような意味でしょうか。

外務大臣(茂木敏充君)

まず、事実関係について申し上げますと、委員の方から、今回の日米貿易協定について、農産品でTPP以上に譲っていると、全くそんな事実はありません。米、調製品も含めて、全く譲許しておりません。水産品も林産品も全く譲許をしていない。そして、TPPワイドの三十三品目、これも全く譲許をしておりません。どこかはみ出している部分があるというのなら、具体的に御指摘ください。事実関係に基づいて議論をさせていただきたい、そんなふうに思っております。

その上で、自動車、自動車部品の関税につきましては、日米貿易協定の協定の本文及び附属書Ⅱによりまして、その扱い、明確に規定をいたしております。

まず、協定本文第五条の一におきまして、各締約国、まあここでは日本とアメリカになるわけでありますが、これは、附属書のⅠ又は附属書のⅡの規定に従って市場アクセスを改善すると両締約国の義務を規定した上で、それぞれの締約国の附属書において市場アクセスの具体的な改善の仕方を記載すると、こういう形式になっております。そして、自動車の方は当然、米側の附属書に出てくるわけでありますが、米側の附属書で、自動車、自動車部品につきましては、関税の撤廃に関して更に交渉する、このように書いてあるわけでありまして、これが、米国が本文の第五条一の規定に基づいて市場アクセスの改善を行う具体的なやり方となるわけであります。

このように、自動車、自動車部品につきましては、日米貿易協定によりまして関税撤廃がなされることを前提にして、その市場アクセスの改善策としてその具体的な撤廃の時期等について今後交渉が行われることになるわけであります。

御案内のとおり、TPP12の交渉のときも、自動車については二十五年、トラックについては三十年、こういう極めて長いステージングでありました。今後の交渉によりまして、撤廃時期につきましても、短縮も含めてできる限りの交渉をしてまいりたいと考えております。

伊波洋一君

今後交渉するということが、それが実現するということや、あるいは期限を確定することにつながることは必ずしも確信できないことであります。つまり、つながらないことが明白であります。では、具体的に、何を根拠にこの附属書の文言で自動車関税撤廃を勝ち取ったと言えるのでしょうか。

政府参考人(外務省 山上信吾君)

お答えいたします。ただいま茂木大臣からるる御説明いたしましたとおり、協定本文の書きぶり、それから協定本文と不可分の一体を成すこの附属書の書きぶりをもって、日本として確保したいことは確保したと考えております。

伊波洋一君

文字どおり解釈すれば、日本車の関税撤廃については、今後の交渉次第としか書かれていません。

日本側の義務を定めた附属書である附属書Ⅰには、アメリカ合衆国は、将来の交渉のためにおいて、農産物に関する特恵的な待遇を追求すると明記されています。これについても、この間の委員会審議でも度々問題にされてきました。農業関係者は、この協定以上に、例えば米などの農産物に対し市場開放圧力が掛けられるのではないかと非常に心配しています。

政府の皆さんは否定していますが、これは、日本側が農産物に関する特恵的な待遇を追求するという米国の立場を受け入れたこと、これに理解を示したことを示すのではありませんか。

外務大臣(茂木敏充君)

まず、自動車、自動車部品についてでありますが、先ほど申し上げたような本文、そして附属書の二段で規定をされておりまして、そしてこれ交渉するのは日米双方において交渉すると。しかも、ウイズ・リスペクト・ツー・ジ・エリミネーションという言葉が入っているんです、関税撤廃という言葉が。一方で、附属書Ⅰ第二、B節の第一款の五の「アメリカ合衆国は、将来の交渉において、農産品に関する特恵的な待遇を追求する。」と、ウイル・ビー・シーキングという言葉が使われておりますが、旨の規定については、将来の交渉において米国にそのような意図があるということを記載しておりまして、ここでは、日本について何らかの具体的な行動を取ることを義務付けた規定でありません。交渉することを義務付けた規定でもございません。

伊波洋一君

最終的に撤廃云々と書いてあっても、同時に、追加的な二五%関税という文言も暗に示されて、そういう交渉の場であったということも事実であります。

政府は、附属書の自動車関税について、主観的な願望を読み込んで、日本に都合よく解釈し、附属書Ⅰの米国農産物の特恵的待遇については、文字どおり米国の意図を述べただけだと説明しています。このように、日本政府による両附属書の説明、解釈の仕方は、姿勢は全く矛盾しており、余りに恣意的であると言わざるを得ません。

この附属書Ⅱの日本車の関税、附属書Ⅰの米国産農産物の特恵待遇、これらは、協定上、同じ附属書ですから同じ効力を持っています。そうだとすれば、第二弾の交渉で日本が拒んでも、米国産農産物の特恵待遇が実現しないなら、日本車の関税も撤廃されない可能性もある、あるいは、日本車の関税が撤廃されるとすれば、米国産農産物の特恵的待遇も実現するということにもなるのではないでしょうか。どうでしょうか。

外務大臣(茂木敏充君)

それぞれ別の規定であります。それで、時間の関係もあるので余り長く繰り返しませんが、自動車、自動車部品については、関税撤廃、これを前提に両国が交渉するということであります。一方、農産品の方、お触れになった部分は、アメリカが意図を持っていると、そして日本については何らの行動を取る義務等も課されていない、記載をされていないんです。どこか記載をされている部分があったら、日本についても書いてあるじゃないかというようなのがありましたら、教えていただきましたらまた答弁をさせていただきたいと思います。

そして、その上で、今後どの分野を交渉するかと、これはこの協定が発効後の協議によって決められることになっております。そして、どの分野を協議をするということで米国が、日米が合意した場合においても、国益に反するような合意をするつもりはございません。

伊波洋一君

自動車関税について、当事者の意向は書き込まれず客観的な表現になっている一方、農産物の特恵待遇については米国の意向が明確に表現されています。どちらの条文が強い意味を持っているかは、このことからも明らかではないでしょうか。

両方とも同じ附属書に明記されているのに、どうして、日本が求める自動車関税撤廃は実現し、米国が求める、米国の求める農産物の特恵待遇は、特恵的待遇は実現しないと言い切れるのですか。

外務大臣(茂木敏充君)

何度も申し上げますが、自動車、自動車部品については両国がどうするということが書いてあるんです。ですから、その規定に従って関税撤廃への交渉が行われると、その時期が何年になるかと、こういったことも含め交渉が行われるわけでありますが、御指摘の農産品の方は、アメリカがこういった意図を持っているということは書いてありますが、そこで日本は何をしなさいとか、若しくは何をすることに合意するということは全く書いていないわけでありますから、そこは全く違った文脈である、そのように考えております。

いずれにしても、今後どの分野を交渉するか、これは協定が発効後に行われます協議、コンサルテーションの中で行われると。それによって交渉の分野というのが、日米が合意した分野のみと、交渉されるということになってくると考えております。

伊波洋一君

時間になりましたが、一方、二五%の追加関税というような、もう交渉にもなっていないようなことがこの妥結を評価する大きなファクターとして議論されていることについては、やはりそういう交渉ではいけないんじゃないかということを申し上げて、終わりたいと思います。