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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2019年12月3日)

2019.10.4~12.9第200回臨時会

伊波洋一君

ハイサイ、沖縄の風の伊波洋一です。日米デジタル貿易協定では、第十八条でプラットフォーマー企業を民事責任から守る条項が規定されています。ユーザーがネット上にアップロードした情報がフェイクやヘイト、名誉毀損などの内容であっても、これを媒介したプロバイダーやプラットフォーマーの責任を免除するというものです。GAFA、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどの巨大プラットフォーマーに有利な内容であり、TPPには定められていないルールです。
〔委員長退席、理事宇都隆史君着席〕
この間のミャンマーでのロヒンギャ虐殺は、フェイスブックによる呼びかけをきっかけに行われました。また、日本国内でも、ヘイトスピーチ、ヘイトデモの呼びかけなどがSNSを通じてなされることもあります。プラットフォーマーに対する何らかの責任追及の可能性は残されるべきです。

民事責任の免責を法律より優先する条約で拙速に規定することは、被害救済と再発防止を困難にするのではないでしょうか。政府はどう考えますか。

政府参考人(内閣官房 澁谷和久君)

日米デジタル貿易協定第十八条、度々御質問いただいておりますが、コンピューターを利用した双方向サービスの提供者等の民事上の責任を一定の限度で制限するものでございます。この点に関しまして、米国の制度、それから我が国の制度が見かけ上違うということもありまして、かなり米国の担当者、お互いの日米の専門家同士で相当長い時間、ここは議論をさせていただいたところでございます。

その結果、それぞれの制度が狙っているところはそごがないということの確認が取れたところでございまして、この点に関して交換公文を結びまして、我が国のプロバイダー責任制限法の内容がこの協定十八条に違反しないという、この両国政府の認識を確認したところでございます。また、これは現行法令を超えて何か新しい判断を行ったものではございません。

したがいまして、御指摘のように、プラットフォーム上の権利侵害情報によって何らかの被害を受けた場合、被害者はこれまでどおり現行法制に従って適切に責任追及を行うことができるというふうに承知しておりまして、この点について日米デジタル貿易協定第十八条が何らかの変更を加えられるものではないと認識しているところでございます

伊波洋一君

プラットフォーマーに一定の責任を求める日本のプロバイダー責任制限法とプラットフォーマーを免責する米国の通信品位法第二百三十条では全く異なります。協定の条文を行政取決めである交換公文で上書きするような手法は、法の優劣関係からも適切とは言えないと思います。

GAFAへの課税問題にも見られるように、米国企業が日本国内法の規制を免れることのないよう、対応をお願いします。
〔理事宇都隆史君退席、委員長着席〕
九月二十五日の日米両首脳の共同声明では、協定の発効後、四か月以内に協議を終え、その後にサービス貿易や投資に係る障壁、その他について交渉を開始する意図であるとされました。本協定の交渉が五か月という短期で決着された上に、さらに発効後四か月という極めて短期間経過後に第二ステージの協議が行われることが合意されています。

一概に比較はできませんが、TPP11では七年間も再協議しない規定になっており、日欧EPAでも、当事者が合意しない限り五年間は再協議しない規定になっています。国内対策を取りつつも、関税措置を緩和して市場を開放するわけですから、仮に再交渉を行う場合でも、ある程度の時間を置いて、国民生活や経済に対する影響を見極めた上で更なる改善を図っていくべきです。極めて短い、発効四か月後に新たな第二弾交渉を設定したのはなぜでしょうか。

政府参考人(内閣官房 澁谷和久君)

お答え申し上げます。今年の九月二十五日の日米共同声明、御指摘のパラグラフ三でございますが、まず日米間で今後どの分野を交渉するのか、その対象をまず予備的な協議、コンサルテーションをするということとしておりまして、この点に関して四か月以内に協議を終える意図であることを表明したものでございます。

したがって、四か月以内に協議を必ず終えるということが義務となっているわけではありませんで、四か月という期間に特段の法的な意味があるわけではない。米国と交渉する中で国益に反するような合意を行うつもりはないということを申し上げたいと思います。

伊波洋一君

今まさにウクライナ・ゲートを理由に米国議会による弾劾手続が進む中で、トランプ大統領は来年の大統領選挙に向け、一期目の成果を洗い出している段階です。

第一段階のこの日米貿易協定に対する世論の評価がいま一つであった場合には、更に目玉となるような第二弾の交渉を行っていく、そういうカードとしてこの第二弾における更なる交渉が設定されているのではないでしょうか。そのため、アメリカの選挙民から受けの良い農業分野での更なる市場開放だとか、あるいは保険や金融関係の業界の受けの良い日本の国民皆保険制度に風穴を空ける要求だとか、あるいは巨大食品産業に都合の良い、日本の食の安全や衛生基準を非関税障壁と称して問題にすることなどが危惧されます。

報道では、両国政府は一月一日に協定を発効させる予定とされており、四か月以内の三月三日は、大統領選挙の予備選が集中する有名なスーパーチューズデーです。大統領選のアピールポイントとして更なる市場開放を求めてくるのではないかと大変危惧されます。

大臣、四か月以内の第二弾交渉では、日本政府はどのような分野について交渉するつもりでしょうか。日本政府が自動車などの関税撤廃を求めれば、米国は農産物における特恵的待遇を求めるということになるのではありませんか。

外務大臣(茂木敏充君)

アメリカの大統領選挙、アイオワから始まりまして、そしてニューハンプシャー、そして御案内のスーパーチューズデーを迎えるわけでありますが、スーパーチューズデーにおきまして投票が行われる州とアメリカの農業州が必ずしも重なっているものではない、このように一般的には理解をされていると私は考えておりますが、その上で、九月二十五日の日米共同声明パラグラフ三では、日米で今後どの分野を交渉するのか、その対象をまず協議することとしております。今後の交渉の内容はこの協議の中で決まっていくことになりまして、この協議において日米双方が合意したものについてのみ交渉することとなるわけであります。

今後も、日米双方にとってウイン・ウインとなる分野をしっかりと見極めた上で分野を合意し、交渉を進めていきたいと思っております。さらに、どの分野を交渉するにせよ、我が国の国益に反するような合意を行うつもりはございません。

伊波洋一君

十一月二十日には連邦議会下院歳入委員会の通商小委員会で公聴会が開かれ、第二弾の交渉では、米や一部乳製品、通貨安誘導を封じる規定などを扱うよう求める意見が出されました。

大臣、日本政府として、米や一部乳製品などの農業分野、通貨安誘導を封じる規定など、第二弾交渉の項目として応諾しない、合意しないと約束できますか。

外務大臣(茂木敏充君)

先ほど申し上げたように、今後の交渉につきましては、この日米貿易協定、日米デジタル貿易協定、発効した後の協議、コンサルテーションズ、この中で決まっていくことになるわけでありますが、そこの中で、関税について交渉するということは協定に明記をされております自動車、自動車部品の分野を想定しておりまして、農産品を含め、その他の分野についての関税の交渉というのは想定をいたしておりません。

伊波洋一君

是非、今の答弁はしっかり約束にしていただきたいと思います。

日本政府は否定していますが、米国内でも日本国内でも、本協定は、おおむね八五%以上の実質上全ての貿易自由化のみを例外とするとして許容するガットとWTOのルールに反するとの批判があります。そのため、トランプ政権は、この協定を最終的に包括的協定の第一段階にすぎないと説明しています。

茂木大臣、この協定は最終的な包括協定の第一段階にすぎないと考えますか。今後、実質上全ての貿易を自由化すべく、更に包括的な日米FTAに向けて交渉していくことはないと明確に約束できますか。

外務大臣(茂木敏充君)

今回の国会に提出をいたしております日米貿易協定、これはWTOに整合的な協定である、この協定として成り立つ協定であると考えております。

そして、今後につきましては、全ての分野を交渉の対象にするとはどこでも約束をいたしておりません。協定の発効後に行います協議、この中でどの分野を交渉するのかと、こういったことを定めていきたい。そして、日米両国で合意した分野について交渉が行われることになるわけでありまして、様々な具体例出されましたが、今後の協議の中で決まってまいりますが、日本としては、当然、日米双方にとってウイン・ウインとなる、そういった分野をしっかりと見極めて、その分野について交渉を行いたいと思っております。そして、どのような分野が交渉になるにしても、我が国の国益に反するような合意をするつもりはございません。

伊波洋一君

現在審議している協定案は、牛は取られて車は取れずと言われているとおり、米国産の牛肉や豚肉などの農産物についてはTPPと同水準までの関税を撤廃して日本への参入を認め、自動車については更に協議するというものです。

日本の農業を自動車関税の交渉材料にして差し出すこと自体も問題ですが、安倍政権が譲るところを譲った結果、第二弾において、トランプ政権には、自動車の追加関税措置や農産物の特恵的待遇の要求のほか、サービス貿易や投資の市場開放、為替条項など多くのカードが残る一方、日本政府、日本側には手持ちのカードがありません。自動車関税の撤廃を求めれば、何らかを譲らなければディールが成立しない状況です。米国が、ガット、WTO違反を理由に第二交渉を強く迫ってくることも予想され、第二弾以降も同じように負けっ放し、譲りっ放しになりかねません。

果たして本当に、大臣がおっしゃるように日本の主張をきちんと主張し切れる、そういう土壌というのはあるんでしょうか。

外務大臣(茂木敏充君)

まず、今回の日米貿易協定につきましても、日本が一方的に譲る、若しくはアメリカが一方的に取ると、こういう内容ではなくて、双方にとってウイン・ウインな内容になっている。必要であれば、細かくどんなところがウイン・ウインになっているのか御説明申し上げますが、そのようになっていると考えております。

その上で、先生のお話伺いますと、第二弾の交渉、これは今後分野を決めていくことになりますが、いずれにしても、ゼロサムゲームでどっちが取るという世界ではなくて、ウイン・ウインになるような分野を見出して交渉したい。そして、どの分野を交渉するにしても、我が国の国益に反するような内容について合意をするつもりはない、このように申し上げております。

今回、例えば農業分野でいいますと、アメリカにとっては、TPP11が既に発効する、そして日EU・EPAも二月の一日に発効する、こういった中で他国に劣後している、こういう状況が生まれていたわけであります。それを一日も早く解消したい、これが米側の要求でありました。一方で、日本の立場、これは過去の経済連携で譲許してきた内容が最大限である、この立場を崩さない。そこの中で最終的に合意したのが今回の日米貿易協定だと考えておりまして、御案内のとおり、全てが過去の経済連携協定の範囲内に収まっております。

さらには、米は調製品も含めて全く譲許いたしておりません。林産品、水産品についても譲許をいたしておりません。そして、TPPワイドで各国に認めましたワイド枠三十三品目についても全く譲許をしていない、こういった状態になっていると思っておりまして、日本にとってもしっかり守るべきは守った、こういう合意内容であると、そのように考えております。

伊波洋一君

私は、やはり日米貿易は、米国が農産物を売ろうとする限り、日本の自給率を低く下げてしまう、日本の農産業を潰してしまう、そういう大きな原因になっていると思います。

機械あるいは自動車を輸出せんがために、私たちの国自体の存在を本当に危うくするような、食料の安全性や、そういう自給率を低めるような仕組み、単に予算を通して、業者、農業生産者に対して支えをするだけでは、農業の、中山間地の発展や、それから現実の農業が発展しません。

私たちがやはり行うべきは、しっかりとした自給率をどう確立するか、そして本当の意味での農業を豊かにしていって、観光客もたくさん来ます、それを私たちの誇りとするような、そういう産業を育成をしなきゃいけないだろうと思います。自動車と農業を……

委員長(北村経夫君)

時間が来ておりますので、おまとめください。

伊波洋一君

はい。取引するような政策はやはり変えていく、そのことが求められているのではないでしょうか。以上です。