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国政報告 / 質問主意書・答弁書

国際人道法違反が続く宮古島への自衛隊配備に関する再質問主意書

平成二十八年十二月九日提出 質問第五一号

国際人道法違反が続く宮古島への自衛隊配備に関する再質問主意書

提出者:伊波洋一

参議院議長 伊 達 忠 一 殿

国際人道法違反が続く宮古島への自衛隊配備に関する再質問主意書

第百九十二回国会質問第九号(以下「前回質問」という。)への答弁書(内閣参質一九二第九号。以下「前回答弁書」という。)を踏まえ、以下更に質問する。

一 避難実施要領のパターンを作成していない市町村が存在する都道府県において、当該市町村に対して避難実施要領のパターンの作成支援を、市町村国民保護計画の作成支援に準じて実施していない都道府県名の一覧を示されたい。

二 避難実施要領のパターンを作成していない市町村の割合を各都道府県別に示されたい。

三 前回答弁書二についてでは、「避難実施要領のパターンが未作成となっている理由としては、一般的には、防災に係る計画等の策定を優先的に実施していること等が挙げられる」とあるが、既にほとんどの市町村において国民保護計画が作成されてから約十年の期間が経過しているにもかかわらず、ほとんどの市町村が避難実施要領のパターンを未作成という異常事態に陥っている。前回答弁書二についてでは、「政府としては、武力攻撃事態等における避難実施要領のより迅速な策定のために、今後とも引き続き、未作成市町村に対し、避難実施要領のパターンの作成を働きかけてまいりたい。」とあるが、国際人道法の国内実施を確実にするためにも、全市町村が同パターンを作成し終える目標年を示されたい。

四 前回答弁書三についてでは、「政府としては、平成二十八年十月十七日時点で、お尋ねのあった事項についての情報を把握していないため、お答えすることは困難である」とあるが、あまりに無責任な態度と言わざるを得ない。以下に宮古島市国民保護計画三十三頁を改めて引用するのでこれを確認したうえ、同引用中の①から④の情報を宮古島市が把握済みであるかどうかを同市から聴き取り、政府として把握し、同市による同情報の把握状況を示されたい。
宮古島市国民保護計画三十三頁「市は、県及び指定地方公共機関との連携協力に努めるとともに、以下に掲げる情報を把握するものとする。【全住民の避難を想定した場合に把握しておくべき情報】①島の全住民を避難させた場合に必要となる輸送手段②想定される避難先までの輸送経路③島外からの輸送手段を受け入れる場合の受入体制④島内にある港湾、空港等までの輸送体制など」

五 宮古島市国民保護計画六十八頁(避難実施要領の策定)には、「市長は、避難の指示の通知を受けた場合は、直ちに、あらかじめ策定した避難実施要領のパターンを参考にしつつ、避難の指示の内容に応じた避難実施要領の案を作成するとともに、当該案について、各執行機関、消防機関、県、県警察、宮古島海上保安署、自衛隊等の関係機関の意見を聴いた上で、迅速に避難実施要領を策定する。その際、避難実施要領の通知・伝達が避難の指示の通知後速やかに行えるようその迅速な作成に留意する。避難の指示の内容が修正された場合又は事態の状況が変化した場合には、直ちに、避難実施要領の内容を修正する。」とあるが、避難実施要領のパターンが未作成のままの宮古島市に避難実施要領の迅速な策定や、状況変化に応じた避難実施要領の内容修正は可能と考えているのか、政府の見解を示されたい。

六 市町村が複数の避難実施要領のパターンをあらかじめ作成することについては、国民保護法第三十二条第一項に規定する国民の保護に関する基本指針を根拠とするのではなく、同法第十条に規定する「国の実施する国民の保護のための措置」を根拠として国が実施させなければならないものと考える。よって、避難指示の通知後市町村が迅速に避難実施要領を策定し、同要領の通知・伝達を行えるよう、あらかじめ同要領のパターンを複数作成させておくことは、国民保護法第十条の規定により国が実施しなければならない法的義務であると考えるが、政府の見解を示されたい。

七 前回質問六で述べたように、宮古島市長は、中期防衛力整備計画(平成二十六年度~平成三十年度)に伴う宮古島陸自配備計画に関して、関係法令との適合性確認が承認の基準になる旨発言しているが、中期防衛力整備計画(平成二十六年度~平成三十年度)に伴う宮古島への陸自配備を承認するか否か判断する際、宮古島市は国民保護法の規定に照らして判断する必要があると政府も認識しているか、明らかにされたい。

認識している場合、国民保護法の実効性を担保するための避難実施要領のパターンの作成に向けて、政府はどのように宮古島市を指導していくのか、その手順を示されたい。

八 前回答弁書九についてでは、「宮古島への自衛隊の部隊の配置は、我が国への攻撃を抑止する効果を高めるものであり、「中期防衛力整備計画(平成二十六年度~平成三十年度)」(平成二十五年十二月十七日閣議決定)に基づき、南西地域の防衛態勢強化の一環として、宮古島へ自衛隊の部隊を配置できるよう取り組んでいく考えである。」とあるが、我が国への攻撃を抑止する効果を高める防衛力を宮古島に配備する予定があるのか示されたい。

九 二回の宮古島説明会で防衛省から示された、宮古島に配備する予定の主たる防衛力は「地対空誘導弾」と「地対艦誘導弾」だが、両誘導弾は島に近づく敵軍に対処するための防衛力であり、決して他国を攻撃できるようなものではないとの説明を宮古島市民は防衛省から繰り返し受けている。この説明からすると、両誘導弾は宮古島防衛のための「対処力」であり、攻撃を思いとどまらせる抑止力にはなりえない。一般的に抑止力とは、核抑止力に代表される「攻撃をはるかに上回る反撃力」や、完璧な迎撃体制など「攻撃不能な防御力」のことである。例えば、中国人民解放軍は千規模の弾道ミサイルや相応の核弾頭を所有している。この攻撃を上回る反撃力は宮古島に配備する予定の両誘導弾にはなく、抑止効果は期待できない。また、宮古島に配備する予定の両誘導弾では、中国や北朝鮮からの弾道ミサイルを完璧に迎撃することは不可能であり、やはり抑止効果は期待できない。前記八に対して配備する予定があるとした場合、その防衛力について、両誘導弾以上の抑止効果を有するものなのかを含め、具体的に示されたい。両誘導弾以上の抑止効果を有する防衛力を宮古島に配備する計画があるのであれば、具体的に示されたい。

十 平成二十八年十二月九日現在、宮古島に存在している国際法上の軍事目標を示されたい。

十一 中期防衛力整備計画(平成二十六年度~平成三十年度)に基づく防衛力の整備を完了した際に宮古島に存在することとなる国際法上の軍事目標を示されたい。

十二 前記十一の軍事目標のうち中期防衛力整備計画(平成二十六年度~平成三十年度)に伴い配備される防衛力は、尖閣諸島や宮古海峡の防衛目的としても機能するか、政府の見解を示されたい。

十三 尖閣諸島等においてグレーゾーン事態が発生した場合には、宮古島や石垣島への観光客を対象とした「渡航自粛」、「渡航中止勧告」、「退避勧告」などを発令する措置が、観光客(国民)を保護するうえで必要と考えているか、政府の見解を示されたい。

右質問する。

参議院議員伊波洋一君提出国際人道法違反が続く宮古島への自衛隊配備に関する再質問に対する答弁書

平成二十八年十二月二十日受領 答弁書第五一号

内閣参質一九二第五一号平成二十八年十二月二十日

内閣総理大臣 安倍晋三

参議院議長 伊 達 忠 一 殿

伊波洋一君提出国際人道法違反が続く宮古島への自衛隊配備に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議員伊波洋一君提出国際人道法違反が続く宮古島への自衛隊配備に関する再質問に対する答弁書

一について

お尋ねの「当該市町村に対して避難実施要領のパターンの作成支援を、市町村国民保護計画の作成支援に準じて実施」の意味が必ずしも明らかではないが、避難実施要領のパターンを作成していない市町村(特別区を含む。以下同じ。)が存在する三十九都道府県の国民保護計画では、当該都道府県内の市町村が避難実施要領のパターンを作成する際の都道府県の助言等について記載があるものと承知している。

二について

平成二十八年四月一日時点において、避難実施要領のパターンを作成していないと政府が把握している市町村の割合(小数点第一位を四捨五入した数字)は、各都道府県ごとにそれぞれ次のとおりである。

  • 北海道 七十六パーセント
  • 青森県 七十五パーセント
  • 岩手県 七十九パーセント
  • 宮城県 八十三パーセント
  • 秋田県 六十八パーセント
  • 山形県 三十一パーセント
  • 福島県 七十五パーセント
  • 茨城県 九パーセント
  • 栃木県 零パーセント
  • 群馬県 七十七パーセント
  • 埼玉県 七十六パーセント
  • 千葉県 六十一パーセント
  • 東京都 六十八パーセント
  • 神奈川県 五十二パーセント
  • 新潟県 六十三パーセント
  • 富山県 四十七パーセント
  • 石川県 五パーセント
  • 福井県 零パーセント
  • 山梨県 五十九パーセント
  • 長野県 六十六パーセント
  • 岐阜県 零パーセント
  • 静岡県 六十九パーセント
  • 愛知県 六十七パーセント
  • 三重県 零パーセント
  • 滋賀県 六十三パーセント
  • 京都府 八十五パーセント
  • 大阪府 七十パーセント
  • 兵庫県 七十三パーセント
  • 奈良県 零パーセント
  • 和歌山県 八十パーセント
  • 鳥取県 七十四パーセント
  • 島根県 六十八パーセント
  • 岡山県 零パーセント
  • 広島県 六十一パーセント
  • 山口県 五十三パーセント
  • 徳島県 二十一パーセント
  • 香川県 七十一パーセント
  • 愛媛県 零パーセント
  • 高知県 八十五パーセント
  • 福岡県 六十七パーセント
  • 佐賀県 二十パーセント
  • 長崎県 四十三パーセント
  • 熊本県 七十一パーセント
  • 大分県 四十四パーセント
  • 宮崎県 零パーセント
  • 鹿児島県 七十七パーセント
  • 沖縄県 九十三パーセント

三について

政府としては、現時点で、全市町村が避難実施要領のパターンを作成し終える目標年を定めることは考えていないが、武力攻撃事態等における避難実施要領のより迅速な策定のために、今後とも引き続き、未作成市町村に対し、避難実施要領のパターンの作成を働きかけてまいりたい。

四について

沖縄県宮古島市によれば、お尋ねのあった事項については、いずれも把握していないとのことである。

五について

いかなる事態においていかなる避難実施要領を策定し、又は修正をするかについては、その時点の個別具体的な状況を総合的に勘案して判断すべきものであり、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、政府としては、三についてでお答えしたとおり、武力攻撃事態等における避難実施要領のより迅速な策定のために、今後とも引き続き、未作成市町村に対し、避難実施要領のパターンの作成を働きかけてまいりたい。

六について

御指摘の武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号。以下「国民保護法」という。)第十条は、国が武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号。以下「事態対処法」という。)第九条第一項に規定する対処基本方針の策定後に、当該対処基本方針及び国民保護法第三十二条第一項に規定する国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)に基づき、国民の保護のための措置を実施しなければならないことを規定したものであるところ、先の答弁書(平成二十八年十月二十一日内閣参質一九二第九号。以下「前回答弁書」という。)四から八までについてでお答えしたとおり、避難実施要領のパターンについては、基本指針において、市町村が複数の避難実施要領のパターンをあらかじめ作成しておくよう努めるとしているものである。

七について

前回答弁書四から八までについてでお答えしたとおり、沖縄県宮古島市への自衛隊の部隊の配置に当たっての同市の考え方について、政府としてお答えする立場にない。

八及び九について

お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、防衛省では、七百人から八百人程度の隊員で構成される警備部隊、地対艦誘導弾部隊、地対空誘導弾部隊等を宮古島に配置することを念頭に置いており、前回答弁書九についてでお答えしたとおり、これらの部隊配置は、我が国への攻撃を抑止する効果を高めるものであると考えている。

十から十二までについて

お尋ねの「国際法上の軍事目標」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、仮に千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)(平成十六年条約第十二号)第五十二条2における「軍事目標は、物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に資する物であってその全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況において明確な軍事的利益をもたらすものに限る」との規定を前提としたお尋ねであれば、何が同条2に規定される「軍事目標」に当たるのかについては、実際に武力紛争が生じた場合において、その時点における状況下で判断する必要があるものであるため、お尋ねの平成二十八年十二月九日時点において「軍事目標」に該当するものはなく、また、お尋ねの「中期防衛力整備計画(平成二十六年度~平成三十年度)に基づく防衛力の整備を完了した際」において「軍事目標」に該当するものをお答えすることは困難である。

十三について

御指摘の「尖閣諸島等においてグレーゾーン事態が発生した場合」の趣旨が必ずしも明らかではなく、お尋ねについて一概に申し上げることは困難である。

なお、ある事態が、事態対処法第一条に規定する武力攻撃事態等又は事態対処法第二十二条第一項に規定する緊急対処事態に該当すれば、国民保護法等の関係法令に基づき、必要な措置を迅速かつ的確にとることとしている。