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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2016年12月8日)

2016.9.26~12.17 第192回臨時会

伊波洋一君

沖縄の風の伊波洋一です。

本日は、七十五年前に沖縄戦につながる日米戦争が始まった日でもあります。七十一年前の沖縄戦では、米軍は、沖縄県民を収容所に隔離している間にその土地を取り上げて、普天間飛行場など次々と基地を建設をいたしました。その後、サンフランシスコ条約で切り離され、米軍統治になった五〇年代以降も、海兵隊基地建設のために米兵が住民に銃剣を突き付け、住民の土地を強制接収し、ブルドーザーで住居や田畑を潰して新たな基地を建設してきました。いまだに残る基地がそれであります。

このようなことは明らかに、私有財産の没収を禁じたハーグ陸戦法規や、講和条約締結後の占領軍の撤退を定めたポツダム宣言違反です。一九七一年十一月十一日、沖縄返還協定特別委員会で当時の佐藤栄作総理は、沖縄での米軍による土地取上げを問われて、「直接の戦闘行為以外のこと、これは陸戦法規に違反する」と発言をしています。

沖縄の米軍基地は、その成り立ちからハーグ陸戦法規やポツダム宣言などの国際法に明確に違反すると考えますが、岸田外務大臣の見解を伺います。

国務大臣(岸田文雄君)

 沖縄における米軍施設・区域の形成過程については様々な議論があるということは承知をしております。そして、普天間飛行場については、戦時中以降、米軍が民有地を含む土地を接収して建設したものであると認識をしております。

そして、御指摘のハーグ陸戦法規慣例に関する規定の四十六条には、私有財産はこれを没収することを得ずという規定がございます。委員御指摘のとおりであります。一方、五十二条を見ますと、徴発及び課役の規定がございまして、そこで、占領軍が需要のために徴発することができる、こういった規定も存在いたします。

当時のこの米軍の行為について、こうした接収が国際法に照らしてどのように判断されるべきかについて、現時点において確定的に判断することは難しいわけですが、いずれにしましても、沖縄の米軍施設・区域については、昭和四十七年の沖縄の本土復帰以後、米国が日米地位協定の下で我が国から適法に提供を受け、使用しているものであると認識をしております。

伊波洋一君

ハーグ陸戦規定違反という問題をなかなか認めていただけませんけれども、また、日米地位協定による提供というのは、これは日本政府の提供でありまして、これらの土地が米軍に取られた事実、そしてまたその後も返されなかった事実はずっと続いているわけです。沖縄においては、沖縄戦そのもの、太平洋戦争そのものが続いているという思いが私たちの中にはあります。

そこで、話、続きますけれども、十二月二十二日にSACO合意に基づく米軍北部訓練場の一部返還が実行されます。一九九五年の米海兵隊員三人による少女暴行事件で爆発した県民の反基地の怒りを鎮めるために基地負担軽減を目的に行われたのが二十年前の九六年十二月二日のSACO合意であり、余りにも遅過ぎる返還であります。

一部返還の一方で、返還地区にあるヘリパッドの代替としてオスプレイパッドの建設が強行されています。自衛隊ヘリによる建設機材の搬入輸送や、五百名を超える県外機動隊を動員しての抗議で座り込む県民の力ずくの排除、高圧的な規制も行われています。新たに建設されるオスプレイパッドは高江集落を取り囲むように配置され、オスプレイの騒音による住民の健康被害が懸念されています。既にオスプレイの利用が開始されているN4地区近隣では、児童がオスプレイ騒音による睡眠障害になり、学校にも行けなくなり、隣村に引っ越さざるを得ない状況にまで追い込まれています。

九月十五日に、北部訓練場にモザイク状に隣接する地域がやんばる国立公園に指定されました。この一体は亜熱帯の湿潤な森林で、四千種の動植物が生息し、二〇一八年夏頃にも世界自然遺産登録を目指しています。県民は、やんばる国立公園と同等かそれ以上に豊かな自然を残す北部訓練場で、貴重な希少種が生息する自然を破壊してオスプレイパッドを建設することに怒っているのです。

北部訓練場一部返還について、政府と沖縄県民には大きな認識の落差があります。日本政府は、SACO合意でオスプレイパッドの建設を条件に返還合意した以上、当然と考えているように思われます。しかし、米国の基準でも国内法の体系でも、ヘリパッドを造ってよい場所と造ってはならない場所があります。残念ながら、米国政府もまだこの北部訓練場が希少種の宝庫であることを明確には認識していません。

私たち沖縄の風は、去る十月五日に、在日米国大使館に北部訓練場の無条件返還を求めて申入れをしました。その際にスナイプ安全保障課長が、あなたたちはオスプレイパッド建設に反対しているが、では北部訓練場過半の返還についてどう思うのかと反論をしました。私はこう答えました。返還は当然です。二十年前に合意されており、遅過ぎるくらいです。しかし、過半返還と新たなヘリパッド建設は別問題です。建設していい場所といけない場所がある。豊かな生態系を有する予定地区の自然を破壊して新ヘリパッドを建設するのは、自然環境を保全するという米国の基本政策及び米軍環境基準、JEGSに照らしても許されないことだと発言をいたしました。スナイプ課長は、立場は違うがあなたの主張は理解したと言ってくれました。

米軍は、一九九二年に域外環境基本指針文書を、九五年に日本環境管理基準、JEGSを策定し、在日米軍基地施設内で自然環境を守る義務を負いました。しかし、今の日本政府は、米軍が守るべきJEGSがあるにもかかわらず、米軍の訓練上の要求を重視して、県民や世界自然保護連合など自然保護を求める国内外の環境団体の声を無視し続けています。そういう政府の姿勢こそ改めるべきであります。

十月二十日の外交防衛委員会で資料をお示しをいたしました。このように希少種が本当にいっぱいいる地区がまさに今ヘリパッドが建設されている地区です。そして、その理由としては、全てが米軍の要求によるものです。このようなことが今行われております。

二〇〇〇年九月十一日の日米の環境原則に関する共同発表では、「日米の関連法令のうちより厳しい基準を選択するとの基本的考えの下で作成される日本環境管理基準(JEGS)に従って行われる。その結果、在日米軍の環境基準は、一般的に、日本の関連法令上の基準を満たし又は上回るものとなる。」と明記しています。

JEGS第十三章は、絶滅危惧種、天然記念物の保護が規定されています。

私は、国立国会図書館外交防衛調査室に依頼して、米国における軍事施設内の自然資源の保護について調査をしていただきました。米国では、年間三億ドルの予算を計上して軍事施設内での自然資源保護プログラムを実施しており、魚類野生生物局が基地内訓練が有害な影響を与えていると指摘したカリフォルニア州の陸軍の基地で、キツツキ保護のために射撃場の閉鎖、移設が行われた事例もあります。

北部訓練場オスプレイパッド建設について、防衛省は米軍の要求である七か所だったのを二〇〇七年アセスで六つに減らして環境破壊を抑えたと言っています。しかし、今ヘリパッド建設が行われている場所は希少種の生息地であり、建設してはならない地域なのです。

種の保存法に指定された絶滅危惧種であり、文化財保護法によって保護されるべき国指定の特別天然記念物であるノグチゲラについて、環境省や文化庁は、個体としての保護が法律上求められているだけで、個体を直接殺すわけではないので生息域の破壊は止められない、問題にできないと言っています。

皆さん、今日の資料に、朝日新聞のこの五日の記事を添付してありますが、この中でも、貴重な動植物の宝庫なのになぜ生息地を守れないという指摘がありますが、文化庁等の担当者は、個体の殺傷がない限り文化財保護法には抵触できない、こういう形になっています。環境省にしても、ノグチゲラはヘリパッド作業区域の外に逃げるから個体殺傷ではない、こういうことで、このようなことが今許されているわけです。

しかし、JEGSには、アメリカ軍の基準であるJEGSには保護種とその生息地の保護が規定されています。米軍の要求というだけで絶滅危惧種や天然記念物の生息域の豊かな自然を破壊する日本政府の姿勢は、米国連邦政府の環境保全や希少種保護という基本政策とも矛盾するものです。本当に私は情けないと思っています。

このような貴重な自然があるということがアセスで明らかですけれども、今情報公開で求めたら、これは全部塗り潰されています。このような、資料を出さないという、本当に私たちの政府の、ただ隠せばいいという話では問題は解決しないんです。米軍自身が、ここは保護しなさいということが基準としてきちんと使われています。しかし、我が国内ではまさに政府がそれを実行していない、それだけにすぎません。

そこで質問です。

米国魚類野生生物局や海洋大気庁が絶滅危惧種の保護に協力しているように、日本でも基地内の自然保護について環境省や文化庁が直接調査をしたり勧告する仕組みが必要です。環境などに関する国内法やJEGSが在日米軍基地にきちんと適用されるよう米軍に求めるべきではないか、答弁を求めたいと思います。

政府参考人(亀澤玲治君)

お答えいたします。

米軍基地内における自然環境の保全、とりわけやんばる地域の野生生物の保護につきましては、これまでも米軍と協力しながら、マングースの防除等に取り組むとともに、必要な情報共有や調整を行ってきているところであります。

環境省といたしましては、今後とも、日米合同委員会の下にある環境分科委員会という今の枠組みを積極的に活用しつつ、米軍や関係省庁とも協力してしっかりと対応してまいりたいと思います。

伊波洋一君

是非それを実現をしていただきたい。きちんとした知見が得られているのに、そのことが伝わっていない。だからこそ、このような、希少種が本当にいっぱいいるということが明らかになっているところで、そこに穴が空けられて、そこでオスプレイが運用していくようになるんです。この間、三月から六月まで営巣期間は個体を毀損することがあり得るから工事は止まっていました。でも、そこを提供すればオスプレイはもう自由勝手に飛ぶでしょう。そういうことであってはいけないと私は思います。

明らかにこれはアメリカ連邦政府の基本的な考え方にも反しているんです。米国連邦議会が規定した米軍に守らせるべき基準をなぜ日本が守らせないのかということが一番重要な問題です。そのことを是非、JEGSを所管する環境省、頑張っていただきたいと思います。

次に進みます。

オスプレイ環境レビューでは、米海兵隊は、固定翼及び回転翼機の滑走路及びヘリパッド周辺の事故可能性ゾーンを特定し、飛行場の運用に整合する開発を促進するための土地利用勧告を行っていると明記して、全ての固定翼の使用滑走路に必要とされる大きなクリアゾーンがこの普天間飛行場においては滑走路の両端から基地外に広がっていると指摘をしています。この「基地外まで伸びるクリアゾーンは、基地外にある居住区域や商業区域といった適合的でない地域も含んでいる」ということを認めています。

私が宜野湾市長であった二〇〇四年に、沖縄国際大学で普天間飛行場所属の海兵隊ヘリCH53が墜落する事故がありました。奇跡的に県民の人的被害は避けることができましたが、やはりこのような悲惨な事故現場を目の当たりにしながら、この事故を最後の警告だと捉えて、私たちは市としてこの普天間飛行場の撤去に向けて取り組んできた経過があります。

普天間飛行場は、現在、法的には飛行場ではありません。日本の航空法が適用されておらず、政府は航空法上の安全対策などを全く行っていません。米軍飛行場の滑走路にはクリアゾーンを確保しなきゃならないという米国連邦航空法も満たしていません。安全性が欠如した普天間で、またいつ航空機の墜落事故が起こらないとも限りません。これまでも二十年間放置されてきました。これからもまた十年以上掛かるでしょう。結果的に、それを固定化など許されないはずですけれども、今アメリカの中ではその固定化を米軍関係者で言う方々もいます。

オスプレイ環境レビューでは、「近年、普天間飛行場では、年間の運用回数が増加しており、航空機騒音にさらされている地域は、同等かあるいは広がっている傾向にある。」とも報告されています。

SACOから二十年、沖国大事故から十二年経て、オスプレイもまた二十四機配備されてますます危険は高まっています。安全性を欠く普天間をいつまでも放置している政府の責任は重いと言わざるを得ません。普天間の危険性除去には航空機の利用を差し止める以外ありません。

そこで質問です。

日米で合意した二〇〇〇年九月の環境原則に関する共同発表では、「日米両政府の共通の目的は、施設及び区域に隣接する地域住民」「の健康及び安全を確保すること」と明記しています。そして、「日米の関連法令のうちより厳しい基準を選択する」と言っているのに、普天間飛行場では危険なクリアゾーンが十数年も放置されているのはおかしいのではないですか。御答弁ください。

政府参考人(深山延暁君)

お答え申し上げます。

普天間基地について最も大切なことは、住宅地や学校に囲まれて市街地の真ん中にあるというこの飛行場の固定化を絶対に避けなければいけないということであろうと考えております。これが原点で、政府と地元の皆様との共通認識であると考えております。

その上で、普天間飛行場の危険性除去と米軍の抑止力の維持を考え合わせれば、辺野古への移設が唯一の解決策であるというのが政府の一貫した立場です。辺野古への移設により普天間飛行場は全面返還されることから、一日も早い返還に向けてこれを進めてまいりたいと考えております。

他方、防衛省としては、普天間飛行場が辺野古に移設されるまでの間においても、普天間飛行場の負担軽減のためにできることは全て行うという方針の下で取り組んでまいったところでございます。

具体的には、普天間飛行場が有する三つの機能のうち、空中給油機の運用機能については、二十六年八月、空中給油機、これはKC130でございますが、十五機全部の岩国飛行場への移駐を実現しました。また、緊急時における航空機受入れ機能も福岡県の築城基地、宮崎県新田原基地に移すことを決定しています。さらに、辺野古移設までの間、普天間に残るオスプレイについても、沖縄県外における訓練等を着実に進めるなどしております。

防衛省といたしましては、引き続き、普天間飛行場の危険性除去を一刻も早く実現させるとともに、沖縄の皆様に負担軽減を実感していただけるよう取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

伊波洋一君

皆さんの資料にもう一枚、アマコスト元駐日大使の去年六月二十三日のインタビューがあります。

その中で、アマコスト元大使は何と言っているかといいますと、「この二十年、普天間という二流の基地の問題が日米の大きな懸案となっていることに当惑を禁じ得ません。もし事故が起きたら日米同盟に壊滅的な影響を及ぼす。辺野古移設は今のスケジュールでも二〇二〇年代までかかるわけで、コストと便益を考えると見合わない。さらに沖縄における反対運動は広範で、選挙区から選ばれた国会議員と知事、名護市長の全員が反対している。これほど高い政治的コストに比べて、海兵隊基地の戦略的な価値はどれほどあるのでしょうか」と、こういう指摘があります。このように、アメリカ国内においてもこの辺野古移転については疑問視する声があります。

そういう中で、やはりこれを放置し続けるということについて、おかしいと思います。グアムへ沖縄の海兵隊、移転しますけど、グアムでは海兵隊が多過ぎるということが問題になって住民が反対した結果、移転する兵員は減らされました。

米国や日本政府は、なぜ沖縄にだけ負担を押し付けるのか。例えば、唯一の解決策と言いますが、この委員会に今月提供されたグアム移転協定の資料を見ましても、MAGTFという要するに空地任務部隊が、沖縄だけじゃなくてこれからグアムやハワイ、そしてオーストラリアまで分散されるということがきちんと書いてあるじゃないですか。それを、あえて辺野古しかないという言い方でずっとこのようなことを押し付け続ける。そして挙げ句の果てに、県民の反対はずっと続くわけですから、先ほどアマコスト元大使が言っているように、いつ事故が起きるかもしれないような状況を放置し続ける。この責任は極めて大きいと思うんです。

裁判の中でも飛行差止めが求められていますけれども、最高裁判例によって、これは政府の行為である、政府が解決をすべきであると、こういう危険性はですね。あえて裁判でこの差止めはできないんだということが言われています。

そういう中で、私たち国会や政府の責任こそが今問われているんです。ですから、法律で規定されている様々な課題をやはり練り合わせて、しっかり取り組む必要があると思います。

そこで質問です。

県民の民意も何度となく明確に示されているのに、あえてじゅうりんして新基地建設を強行するという日本政府は、主権の担い手である沖縄の県民の人権をどう思っているんでしょうか。辺野古の新基地建設を断念し、普天間飛行場の即時撤去が必要ではないのか、防衛大臣の所見を求めます。

国務大臣(稲田朋美君)

最も大切なことは、原点は、一日も早く、今委員も御指摘になった普天間飛行場の危険性の除去を実現することであって、これは国も、また沖縄県も全く同じ思いだというふうに思います。

我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、辺野古への移設は、米軍の抑止力を維持しながら、同時に、原点である普天間の危険性の一刻も早い除去を図るための唯一の解決策であるということを先ほども述べたところでございます。

辺野古への移設により普天間は全面返還されることとなります。普天間の一日も早い全面返還を実現するために、政府一体となって、住民の生活、環境への影響に配慮しながら、辺野古への移設をしっかりと進めていきたいと考えております。

伊波洋一君

終わります。