参議院議員 伊波洋一オフィシャルサイト

イハ洋一 Official Web site

国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2017年12月7日)

2017.11.1~12.9 第195回特別会

配付資料ダウンロード

伊波洋一君

沖縄の風の伊波洋一です。議題の給与法改正案は人事院勧告に沿ったものであり、沖縄の風も異存ありません。

自衛隊の敵基地攻撃能力論の背景には、自衛隊は盾、米軍は矛で、米軍が敵を攻撃するという従来の日米安保の役割分担はもはや対中国では成り立っていないのではないか、オフショアコントロール戦略に見られるように、米軍が攻撃する対象には中国本土は想定されていないという認識があります。アメリカにおいても、中国本土を攻撃せず、米軍が攻撃され続けることが指摘されています。

安倍政権は、南西シフトの名目で石垣島、宮古島、奄美大島への自衛隊ミサイル部隊の配備を進めていますが、五月二十五日の外交防衛委員会で稲田前防衛大臣は、南西シフトはエアシーバトル構想、オフショアコントロール論に対応していると答弁されています。エアシーバトル構想やオフショアコントロール戦略では、初期段階での中国のミサイル攻撃に対して、在日米軍はグアム以東に退避し、自衛隊が南西諸島から九州にかけての第一列島線を守ります。いずれも、沖縄、日本の国土が戦場になり、圧倒的な中国の攻撃により自衛隊が消耗し、国民も犠牲になることが想定されています。

七十二年前の沖縄戦においても、日本軍の配備のなかった島や地域は、米軍の攻撃を免れ、住民の被害も少なくて済みました。島という狭い地域が戦場になれば守り切れない、部隊配備は島嶼防衛には役立たないというのは、沖縄戦や南洋、南太平洋の島嶼における戦史の教訓です。

十二月五日の委員会で指摘した小野寺大臣の質疑と自民党の提言、平成二十六年二月の中澤剛一等陸佐の「米国のアジア太平洋戦略と我が国防衛」論文、今年九月の米国スティムソン・センターにおける岩田元陸幕長の発言、「海幹校戦略研究」の各種論文及びコラム、これらはネットで確認できます。このほかにも、トランプ政権の国家通商会議議長ピーター・ナバロ氏による「米中もし戦わば」など、多くの証拠があります。

米国は、オフショアコントロール戦略に基づいて、アジア太平洋における軍事戦略を策定しています。お手元に資料配付した「米中もし戦わば」では、第一列島線の主要なアメリカ軍基地には中国第二砲兵部隊が既に照準を合わせている、基地は固定され、どこへも移動しない。繰り返し攻撃される。中国軍は米軍基地の座標を打ち込んでミサイルを一斉に発射すればアメリカ軍の施設を一気に破壊することができる。当然、第一列島線上のアメリカ軍の作戦継続能力は著しく弱体化する。

このような基地の脆弱性に対し、アメリカ軍は次の三つの戦略を提起しています。一つは、既存基地を遮蔽物で強化する。今、グアム島で行われております。二番目に、受入れ国での基地の分散。日本で行われています。三番目に、空母重視を改め、機雷や潜水艦への軍備再編戦略です。中国のミサイル攻撃の第一撃を確実に吸収できるようにするとしています。

分散で基地や艦船を日本列島全体に再配置することで、例えばおよそ一千キロにわたる琉球諸島には、アメリカや同盟諸国の空軍や海軍が使用できる港湾や飛行場が数多く存在すると。琉球諸島の南西の島々にまで軍を分散して配置することができれば、中国にとってターゲットを絞り込むことは困難になると指摘しています。このようなことは、南西諸島や日本列島をまさに戦場にすることにほかなりません。

さらに、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡は、中国海軍が東シナ海から西太平洋に出るお決まりのルートであると。中国側が激しく抗議する中、日本は宮古島に既に設置済みの高性能レーダーに加えて八八式対艦ミサイルを配備した。このミサイルは、中国艦船が宮古海峡のどこを通過してもたやすく射程内に収めることができると指摘しています。自衛隊が行った二〇一三年の地対艦ミサイル配備訓練のことでしょう。

オフショアコントロールで、日本や韓国、グアムのアメリカ軍基地はミサイルの集中攻撃の格好の標的として取り残されてしまうということも指摘されています。オフショアコントロールによる経済封鎖は、中国だけでなく同盟国にも深刻なすさまじい経済的打撃を与えるので、果たして同盟諸国が自国の経済を犠牲にしてまで台湾の独立を維持しようとするだろうかと指摘しています。そうです。このオフショアコントロール戦略は、日本国土を戦場にしますが、アメリカの台湾防衛のための戦略です。

ピーター・ナバロ氏は、かなりの人命や資産が失われ、世界経済が崩壊寸前に追い込まれれば、アメリカも足並みのそろわない同盟諸国も、戦争の原因になったものが何であれ、例えば台湾あるいは尖閣諸島などがその原因であったにしても、それを中国にくれてやってでも戦争を終わらせようとするだろうということは想像に難くないと述べています。つまり、本来の目的は達成されないんですね。

安倍政権の進める南西シフトや離島奪還訓練などの取組が、アメリカの代わりにこのオフショアコントロールなどの戦略を自衛隊が戦う仕組みです、というふうに私は考えています。何のためなのか、どこの国益なのかを見詰め直す必要があります。

今沖縄では、住民が反対する中で、辺野古新基地建設や、あるいはまた各地で、奄美大島や宮古島、石垣島への地対艦ミサイル基地建設のための新基地建設が行われています。このような米軍戦略が今行われている一環です。アメリカの利益のために我が国国土が戦場になるということは許されません。是非、ここら辺のことはしっかりと考え直していかなければならないだろうと、このように思っております。

私はやはり、今の中国の大国化の中で、アメリカ軍がこの沖縄の、日本のような前進配備されたところに居続けるということはかなり困難になっている、こういう状況をしっかりと受け止める必要があると思います。日米同盟の強化というのは、日本国土を戦場にする米軍の戦略を受け入れることです。核武装を含む自主防衛は、韓国の核武装など東アジアの軍拡競争を招くでしょうし、我が国の財政では負担も大きく、持続できません。やはり、何よりも国民の財産を守るものになりません。それに対して、やはり私たちは新たな、新しい戦略、安全保障の戦略を考えていく必要があるのではないかと考えます。中国と米国の二大国のはざまにあって、中規模の国家、ミドルパワーとしての日本の現状を直視する必要があると思います。そのためには、やはり中国との信頼関係をいかに醸成するかということがとても大切な時代になっていくと思います。

私たちは、今中国と日本の間には、「すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えない」とする日中平和友好条約を含む四つの基本文書が既に存在しているということをしっかりと受け止めなきゃいけないと思います。現在の安倍政権は、その文書の存在、その四つのお互いの合意を軽視している、そういう中で今外交を進めているのではないかと大変気になっています。

私は、やはり来年いよいよ日中平和友好条約四十周年を迎えるこの二〇一八年に、日中両国で再び「すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えない」ということを確認することを再度確認していただき、日中両国の間に友好醸成の機会にしていただきたいと思います。

そこで質問をいたします。来年は日中平和友好条約四十周年です。先日、十一月十一日、十三日に安倍首相は習近平主席、そして李克強国務院総理と相次いで会談をいたしました。具体的にはどのような成果があったのでしょうか。まずお答えください。

政府参考人(外務省 鯰博行君)

お答え申し上げます。先月、安倍総理は、APEC首脳会議及びASEAN関連首脳会議の機会を捉えまして、委員御指摘のとおり、習近平国家主席及び李克強国務院総理とそれぞれ日中首脳会談を行ってございます。

安倍総理と習主席、李総理との間では戦略的互恵関係の下、来年の日中平和友好条約締結四十周年を見据えながら、経済関係の強化、国民交流の促進などを通じ、あらゆる分野での協力を力強く進めていくとの点で一致いたしました。また、北朝鮮の非核化は日中両国の共通目標であり、日中間でも更に連携を強化していくことで改めて一致いたしました。

伊波洋一君

河野大臣は、年内訪中の意欲も報じられる中、昨日は日中両政府が尖閣諸島などでの偶発的衝突を回避する海空連絡メカニズム設置案について大筋合意したと報じられました。二〇一四年の十一月に協議を合意していたことです。このような動きが広がることを期待をしております。

そこでお伺いいたしますが、日中平和友好条約締結四十周年の機会、チャンスを生かしてどのように日中関係の改善を今後図っていくのか、是非その思いを伝えていただきたいと思います。

外務大臣(河野太郎君)

委員御指摘いただきましたように、来年は日中平和友好条約締結四十周年という節目の年でございまして、節目の年が二年続いているわけでございます。戦略的互恵関係という考え方の下、大局的な観点から日中の友好協力関係を安定的に発展させていくいい機会だと思っております。

政府としては、今回の一連の首脳会談を通じて、両首脳の間で有益な対話が行われたことを受けまして、引き続き懸案を適切に処理し、日中関係の肯定的側面を拡充強化しながら全面的な関係改善を中国側とともに進めてまいりたいと思います。

具体的には、まず日中韓サミットで様々成果を上げたいというふうに思っておりまして、その準備を進めてまいります。日中韓サミットを開催した後に安倍総理が訪中し、その後は習主席にも日本に来ていただきたいというふうに考えております。また、私も、この日中韓サミットを始め一連の動きを成功させるために折を見て中国を訪問し、日中間の首脳往来の実現に向けて弾みを付けてまいりたいと思っております。

伊波洋一君

是非、安倍首相の訪中やあるいは習主席の訪日が実現するよう、そしてまた、尖閣問題を含む日中の課題解決が展望できる年にしていただけるよう、日中関係、関係好転の流れを取り戻していただく年にしていただきたいと思います。

我が国は、今最強硬の自主防衛論から、あるいは安倍政権の今進めております日米同盟一辺倒の取組、あるいはミドルパワーの安全保障論、先ほど申し上げましたが、非武装論まで四つの外交防衛選択肢があると思います。私は、やはり沖縄、日本を戦場にせず、自衛隊員や国民の命を守るためには、第三のミドルパワーの安全保障こそがこれからの日本の外交防衛政策になるべきと考えます。日本、米国、中国の現状を直視し、日中平和友好条約締結四十周年のチャンスを生かして、米国に追従するのではなく、近隣諸国との自主外交を取り組むミドルパワーの安全保障の実現に向けた政策転換を政府に図ることを強く求めていきたいと思います。

今日、資料として提供いたしましたこの「米中もし戦わば」というのは、読んでみれば分かりますけれども、細かく全部、その引用文献もろもろ全部書かれております。まさに、今私たちの周辺で何が起こっているのか。いわゆる日本が取り残されないように、日本は米国に追従すればよかった、ただ、その安全保障についても自ら考えることはしないできた。しかし、その中で日本だけが国土を戦場にする選択をしています。フィリピンのドゥテルテ大統領もこれ拒否いたしました。

私たちは、今アメリカの言うだけの、そういう戦略の中で、日本の安全保障というものは日本の戦場化に結び付くんだということを是非委員の皆さんにも自覚していただき、本来、安全保障というのは何なのか、私たちの、国民の生命やあるいは財産を守る、国土を守ることこそが第一の目的ではないのか、ということを是非実現するための外交、防衛であってほしいということを両大臣に要望して、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。