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国政報告 / 議事録

外交防衛委員会(2019年6月13日)

2019.1.28~6.26 第198回常会

伊波洋一君

沖縄の風の伊波洋一です。三人の参考人の皆さん、本日はありがとうございます。まず、岩崎参考人にお伺いしたいと思います。

さきのインタビューで、大国と大国の小競り合い程度は考えられるが、本格的な米中の衝突はかなり起こり難いと考えられると答えています。私も同意いたします。しかし、先ほど佐藤参考人は、トランプ政権の安全保障政策は、同盟国や友好国が地域紛争を戦うよう組み込まれていますと指摘されました。岩崎参考人が言及された小競り合いは、まさにこの地域紛争ではないか。つまり、米中の衝突の戦場を、今の場合は沖縄県を始めとする南西諸島で受け止めようとするのが今回の大綱なのではないか。南西諸島の島々に住む人々にとっては不安に思っております。

陸上自衛隊のプロモーションビデオを見ますと、小競り合いとはいっても、全国から自衛隊が南西諸島に投入される、まさに戦争です。このように日本国での戦争を前提とするのではなく、国土における戦争を避ける防衛戦略はなかったのでしょうか。

参考人(ANAホールディングス株式会社常勤顧問 元統合幕僚長 岩崎茂君)

先ほどの、大国間の本格的な武力紛争は起こりにくい、でも、小さな紛争、小競り合いは起こり得る可能性があるというふうに申し上げましたけれども、別にこれはどこかの地域を捉えて発言した内容ではありません。

我々は、これまで何回も防衛計画の大綱、それから中期防を見直してきましたけれども、基本的には、我が国の領域においてそのようなことが起こらないようなために我々の自衛隊を整備してきているというふうに思っています。

まさしく、それは今回の大綱でも、その大綱の上位にあるものは国家安全保障戦略ですけれども、戦略、そして大綱、中期防を見ても、そういったことを起こさないためにどうするかというふうな方策がこの中に表れているというふうに思っています。それは、外交手段もそうでしょうし、それから、グレーゾーンのときに、いかに自衛隊が直接でなくて、例えば海上保安庁だとかいろんなところが対処をするかというふうなことがこの中に盛り込まれているというふうに考えています。

伊波洋一君

私、三年ほど前に参議院出まして外交防衛委員会に所属しておるんですけど、これまで何度も同様の議論をさせてもらっています。自衛隊の海上自衛隊幹部学校の戦略研究会のコラムや、あるいはまたその論文集などにありますように、もう二〇一二年頃から、要するに今のまさに南西諸島で起こっていることをきちんと理論化をして、南西諸島における価値のない島々に自衛隊基地を置くことによって、対中国の抑止とか、そういう無駄な出費がさせることができるんだというふうなことが指摘されて、もう幾つものコラムが書かれているんですね。今回の自衛隊も同様に、南西諸島を主として、テーマとして要綱が作られています。

そういう流れの中で、今、先ほどの、いわゆる米中の戦争は、大国同士の戦争はないけれども、その代わり同盟国周辺では戦争を起こし得るという状況で、長期的な戦略といいますか、それを解消しようという戦略が今行われているのではないかというふうに思うんですね。

それに、日本は日米同盟を強化するといっても、これ、日米同盟を強化すればするほど日本が戦争に組み込まれていくということになるのが今の状況なのではないでしょうか。そういう意味では、本当に今は、まさに日米同盟というのは、かつて日本が攻撃されたらアメリカが相手をやっつけてくれるということだったけれども、もはや中国が相手だとやっつけてくれないということを前提にしながら今の戦略が成り立っている。こういうまさに米国の盾になることが日米同盟、日本の役割として位置付けられてしまっているのではないかというふうに思えてならないんですね。

つまり、そのこと自体は、日本の自衛隊にとってそういうことへの不安がいろいろ論文にも出ております、幾つか。そのことについて、やはり方向の転換といいますか、をやはり求められているというような思いは、これまでこの役職をされながら思ったことはないんでしょうか。つまり、今の安全保障戦略というのは、本当にこれからどんどん大きくなっていく中国に対して日本が本当に取るべき安全保障政策としては、これがもうベストなんでしょうか。そのことをちょっと私は大きく疑問に思っているものですから、現場で指揮を執られた方としてどのようにお思いになっているのか、是非お聞かせ願いたいと思います。

参考人(ANAホールディングス株式会社常勤顧問 元統合幕僚長 岩崎茂君)

日米同盟を、又は日米安保条約をどのように評価するかということだというふうに思いますけれども、我々は、当然、国は独立国です。アメリカも独立国です。当然、最終的には私たちがどのような行動をするのかというのは、それは国が決めるべきだ。民主主義の国というのは、当然のことながら議会が決め、総理がこれを判断されるわけですね。

ですので、全くの例えば不安がないのかと言われると、それは隊員によって若干のいろんなその差は出てくるかもしれませんけれども、我々は、考えることは何かというと、国が決めたとおり、議会が決めたとおりに私たちが行動するということが全てだというふうに思います。私は、日米同盟を考えて今まで四十年間やってまいりましたけれども、そういった意味では比較的不安というのを感じたことは少なかったというふうに思います。

伊波洋一君

そこで、佐藤先生にお伺いしますけれども、問題点として最後に指摘をしている、いわゆる同盟国や友好国が地域紛争、いわゆるプロキシーウオーを戦うよう組み込まれているということを日本としてどう受け止めるかというのが今問題だと先ほど指摘されました。
先生としては、佐藤参考人としては、やはりこのような状況を方向性として正しいと思っているのか、あるいは、それからやっぱりそれるべきだと思っているのか、御意見があればお伺いしたいと思います。

参考人(拓殖大学国際学部教授・海外事情研究所副所長 佐藤丙午君)

ありがとうございます。

プロキシーウオーについてなんですけれども、大量報復戦略の下におけるプロキシーウオーの意義というものと柔軟反応戦略の下におけるプロキシーウオーの意義というのは大きく異なります。オバマ政権の下、つまり前大綱の下では、そこで行われるプロキシーウオーというのが、米中若しくは米国を含めた大国同士の核戦争に直結しないようにいかに切り離すか、逆に言うとそこに日本の安全保障の脆弱性があったので、日本側としては日米の関係を強化したという側面があると思います。

しかしながら、トランプ政権の下では、柔軟反応戦略に近い戦略が採用されておりますので、そこにおけるプロキシーウオーというのはエスカレーションコントロールをする意味においてのプロキシーウオーというものになっていると思います。

そうなったときには、プロキシーウオーを日本が、若しくはその同盟国がいかに戦うか、また、それを、その戦い方の中において日米の戦略的な一体性を高めることによって、そのエスカレーションコントロールをできるように、いかに可能にするようにしておくかということが極めて重要になってきますので、逆に日米の一体化というのが特にトランプ政権の下においては、特にトランプ政権の戦略の下においては必須になってまいります。

見た目上は、プロキシーウオーが戦われるということにおいて、南西諸島の皆様を始め日本の国民自体の不安を高めるものでありますけれども、それが結果的には核戦争を防止し、なおかつ地域紛争のエスカレーションを防ぐ効果につながりますので、そこは見た目上の効果と戦略上の意義というもののアンバランスが生じているんだというふうに思います。

ただ、戦略上の考慮というのが全てにおいて優先されるべきであるとは思いませんので、そこは政治の側でその戦略上の問題とあと現実の見た目というものの調和を図っていくのが重要であろうというふうに考えています。

伊波洋一君

先ほどのお話の中では、その次に、いわゆる核兵器問題などを含めて国際条約の在り方、どういうふうに向き合うか。残念ながら、我が国は今、アメリカの言うとおりに核戦略でも国連でもそのような対応をしていますよね。

つまり、でも、今お話しになっている核戦略のエスカレーションというのを、現実の問題として多くの国々ではもう核戦略は使われないものだという意見もいろいろあります。しかし、私たち日本は、その核戦略のエスカレーションを避けるために我が国内を戦場にせざるを得ないというような戦略なんですけれども、果たしてそれ以外の選択肢はないんでしょうか。佐藤先生にお伺いします。

参考人(拓殖大学国際学部教授・海外事情研究所副所長 佐藤丙午君)

冷戦期の西ドイツにおけるエスカレーションに対する恐怖への対応を考えますと、これは核戦略の一体化というふうに当時の西ドイツは向かっております。いわゆる核のシェアリングを行うことによって、核のボタンを、現実的にはそういう問題ではないんですけれども、核のボタンを西ドイツが持つことによって紛争の拡大を防止するという意味における安心感を手にしました。

では、じゃ、今エスカレーションを防止するということにおいて日本が核のボタンを持つということが現実的なんでしょうか。恐らく現実的ではないと思います。しかしながら、核戦略は厳然としてそこに存在します。そこといかに日本の安全保障戦略をリンクさせていくかというのが今の、今回の大綱の一番大きなポイントだと思いますし、核戦略から離れることは理想ではあろうかと思いますけれども、それは現実ではないというのが私の見解でございます。

伊波洋一君

最後に、柳澤参考人に伺います。日本の成長が止まって三十年。世界のGDPシェアでも、二〇〇〇年には一四%を占めた日本が二〇一八年には約三分の一の六%です。一方、中国は二〇〇〇年の四%から四倍の一六%になり、日本の貿易相手国のシェアとしても、米国が二〇〇〇年に二五%だったものが二〇一八年には一五%、中国は一三%から今日二四%になっています。

それの中で、今回の大綱のように、従来の日米同盟の強化一辺倒の今の流れは、やはり従来の感覚の中で流れていると思いますね。そういう意味で、アジアとしても五〇%を占めている日本が、やはりこの安全保障政策においても、先ほど御指摘ありました、いろいろ今の大綱の問題点あるのではないかと。

やはり私たちの国が向かうべき流れ、つまり、日米同盟というものを、やはりもっと中国とか含めて、やはり敵対する関係でないようなものに行くべきではないかと私は思うんですけれども、とりわけ、昨年十月二十五日に安倍首相が訪中をして、これまで七年分のものを全部改善をして戻っている今日の現状において、やはり戦争へ向かう道じゃなくて、もう少し友好の道へという方向性を持つべきだと思いますが、そこで、是非、御提言なり御意見なりをお伺いしたいと思います。

参考人(国際地政学研究所理事長 元内閣官房副長官補 柳澤協二君)

私は、基本認識として、日本というのは軍事大国ではあり得ない、むしろミドルパワーであるわけですから、軍事力で国家間の対立を解決するという方針は基本的には取れない国であると思っています。

そして、もう一つは、今の日本の置かれた現状の中で何が心配かといえば、るる今もお話、やり取りにありましたように、アメリカと中国のパワーシフトの中で、その米中の対立関係がどのように、戦争になるのかならないのかというときに、その中で日本がどういう役割を果たすか。

もう日本はどうやったってアメリカと中国の間に挟まれた地政学的な条件があるわけですから、そこで軍事大国にはなり得ない我が国がどうやってやっていくかというときは、やはり私は、もうこれは今本当に、何というんでしょうか、ビジョン、アイデアだけでありますけれども、アメリカとももちろん折り合いを付けなければいけませんし、片やで中国とも日本なりの立場で折り合いを付けていかなければいけないんだろうと思うんですね。

そういうのを具体的な外交課題の中でどう一つ一つ、少なくとも日本が対立を深めるような、特に米中の対立を更にアクセラレートするようなやり方を取るべきではない、むしろ、そこは日本流のやり方で間を取っていくような方向がおのずと日本の取り得る道として見えるのではないかという感じはしております。

伊波洋一君

最後に、今、大綱を見ましても、二十七兆を二十五兆円分使うとか、いろいろ大変厳しい状況の中で時代がどんどん変化している。しかし、もう二十年以上、辺野古問題というのはずっと解決できずにいるんですね、今ね。今でも毎日のように沖縄の人たちが抗議したり、またいろいろと。

こういう、私から見ますと、まさに辺野古問題というのは、安全保障の関係からいえばそんなに大きな問題じゃないんじゃないかと。グアムに海兵隊も移っていくし、いろんな可能性あると思うんだけれどもと思うんですが、率直に、御三名の参考人、この辺野古問題へのアドバイスあるいは御意見をいただければ有り難いと思っております。一言ずつでもいいんですけれども、重要であるとか重要でないとか。

委員長(渡邉美樹君)

時間が来ております。簡単にお願いいたします。

参考人(ANAホールディングス株式会社常勤顧問 元統合幕僚長 岩崎茂君)

辺野古の問題については、当初の頃、私も担当者として議論にいろいろ参加させていただいて、今のような結論を得てこれを進めているところでありますけれども、防衛省・自衛隊又は政府として、やはりその趣旨をしっかりと沖縄の方々、県民にしっかり説明をして理解をいただくことが一番ではないかなというふうに思っています。以上です。

委員長(渡邉美樹君)

佐藤参考人、簡潔にお願いいたします。

参考人(拓殖大学国際学部教授・海外事情研究所副所長 佐藤丙午君)

辺野古問題は非常に重要な問題だと思っております。あの問題を見ていると、いろいろな苦痛の決断の中で決めたこと、それを実行されるまでの間にいろいろ変化が起こること、その問題をどういうふうに取り込んでいくかということが重要だと思っております。問題が速やかに解決されることを祈っております。

参考人(国際地政学研究所理事長 元内閣官房副長官補 柳澤協二君)

先日、二月の県民投票の結果を見ましても、沖縄の民意というのが、普天間はなくしてくれ、そして辺野古に基地は造らないでくれというのがもう大方の民意であるということの前提に立って、果たしてそういう民意を国防のためにどこまで取り入れるのか。
そもそも国防の目的って何だといえば、民意が尊重される国だから守りたいわけですから、私は今、そこでちょっと悩んでいます。本当に国防のために民意を、民意の枠というものは超えていいのか超えてはいけないのか、そこのところが基本的に問われている問題かなということで、今、私は個人的にはいろいろ考えております。

伊波洋一君

どうも、本日はありがとうございました。